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組織ミッションと評価制度

はじめに

いま僕が所属している組織では、ホームページ含めたweb運用をメイン業務としています。
運用という曖昧な表現を用いたのは、広告のキーワード選定からライティングコーディングなど自分で手を動かすこともするし、メンバーアサインしてプロジェクト統括する俯瞰的な業務まで行っているからです。

これらの業務においてクライアントへの貢献度をジャッジするうえでは何かしらの判断基準が必要です。そこでよく用いられるのが「前年比」。
僕たちは「クライアントへのリード提供数を最大化する」ことがミッションなのですが、それを「前年比」という指標で評価しています。
この前年比という基準の扱い方は注意しなければならないなと感じたのでまとまってないけど書きます。

前年比の扱いに気をつけなければならない理由

そもそも前年比というのは「現在の事業の健康状態を計る(分析する)1つの指標に過ぎない」というのが僕の意見です。
イメージとしては、お医者様がカルテを作る際の項目の1つです。患者の状態を把握するには、血圧・血脈・体温など様々な項目を計測しますよね。そのうえでどのお薬を投入するのか、緊急オペが必要なのか、という次のアクションが決まります。
同様に、事業の健康状態を計るには前年比や他の指標を用いてカルテを作成し、次のアクションを決めていきます。

この1指標に過ぎない前年比が取り扱い注意になる状況は次の2点です。
1つ目は、組織の関係性や評価制度により自己防衛に使われること。
2つ目は、指標という役割がいつの間にかなくなり目的になりがちなこと。

まず1つ目からです。
僕たちの業務は基本はインハウスであり、クライアント企業は同グループの事業です。つまり良くも悪くもクライアント解約の心配がほぼありません。競合他社にクライアントを奪われるのではという危機意識は生まれにくい環境なのです。

解約される心配がないと何が起こるか。
クライアント満足より自己評価を優先し始めます。自己評価というのは自己肯定と言い換えてもOKです。解約される心配がないからクライアント貢献度より自分の価値を主張し始めます。
クライアントは満足してなくても私はこれだけの仕事は十分にしているのよ、というように前年比が使われるのです。

もちろん前年比プラスしていたらクライアントも喜びます。
が、求められる仕事ってリード最大化だけではないのです。バックヤードシステム構築だったりリブランディングだったり、リード獲得とはあまり関係ないことも依頼されます。
そんな仕事に必死で向き合ったもののうまくプロジェクトが進行しない場合「いや、でもリード前年数はプラスしてるから」という主張が生まれます。

前年比が自己評価(自己肯定)に利用される要因は「組織のミッションと求められる仕事にギャップがある」からです。
組織のミッション → リード最大化
求められる仕事 → リードとは関係ないことも...。
リード最大化というミッションを掲げている以上、僕たちの組織ではリード数の前年比をプラスにすることが正義という文化が生まれているのです。
なので解約の心配がないクライアントに慮ってリードと関係ない仕事にコミットするよりも、リード前年数を達成していてクライアントには貢献しているわ!!!という主張に傾いたほうが都合が良いのです。
つまり前年比の使われ方は、クライアント事業の健康状態を適正に把握しクライアントの理想や方向性にコミットするためのより良いアクションに繋げる、というより、クライアントなんかどうでも良いから(極論)前年比プラスしておけば私は正しい、というようになります。

元を正していくと「リード最大化」というミッション設定自体を見直す必要があるように思います。
これが組織の関係性を要因として生まれる前年比のいびつな使われ方です。

組織内評価も前年比のおかしな使われ方を加速させます。
先ほどお伝えしたように、僕たちの組織ではリード数の前年比をプラスにすることが正義なのです。
その思想は当然、コミッションの評価制度にも反映されます。
前年比〇〇%はコミッション〇〇円という制度になっているので、給料アップのためには素直に前年比追いかけていたほうが得なわけです。

続いて2つ目の指標という役割が目的になりがちなこと。

これは上でお伝えしたことと同義なのですが、社員の目的が前年比をプラスすることになります。
あくまで前年比というのは現在の健康状態を評価する一つの指標です。
目的はクライアント事業の理想や方向性(計画)にコミットしていくことです。前年比をプラスすることが目的ではありません。
この前年比大好き思想は特に生え抜き・古株のメンバー、というか僕に強く根付いてしまっています。(反省)
「リード最大化が正義」という文化を疑うことはないわけです。
よく言われる手段が目的になるパターンです。
私たちがいま使っている数字や指標は目的なのか手段なのか意識しておく必要がありますね。慣れって怖い。

打開策提案

さて、この状況を打開することを考えます。
そもそも打開できない問題じゃないの?という疑問も湧きますが、2つ提案してみたい。

1つは自分たちの組織のミッションをクライアントにも徹底させる
リード最大化がミッションで前年比で評価する、という前提は変えずに
「リード獲得することが得意です!他は得意じゃありません!」という意識をクライアントにも共有することです。
インハウスだと特に起こりやすいのかもしれませんが、組織内の役職や悪しき慣れ合いが原因で、コミットすべきでない業務も「お願~いちょっとやっといて」となりやすい。それがなおさらクライアントの事業部長からの依頼だとグループ内企業の目上の方ですからサラリーマンとしては「はい喜んで」となります。
本筋とは離れた業務に汗を出していると、こちらとしては「こんなに言うこと聞いて頑張っているのに前年比がマイナスしたら評価されないのはおかしい!そもそも前年比アップの業務じゃないんだから当たり前じゃん!」というメンバーが出てきます。
なので、この慣れ合いによる業務依頼・受注は悪しき因習でしかありません。
競合他社との比較に晒される覚悟を持って、社内グループなのに融通が利かないなと思われる覚悟を持って「私たちはリード提供が仕事です!」と高らかに宣言することです。

2つ目はコミッション評価に前年比を利用しない。
拝金主義ではないですがお金って大事です。というよりお金に価値を置いている人は少なくないと思います。
コミッション評価に前年比を用いていると、前年比プラスを作って給料アップ!は当然に考えることです。
クライアントの長期計画や理想なんて知ったこっちゃありません。他人のビジョンより目の前の金です。
クライアント貢献を考えるなら、コミッション評価に前年比を用いるのではなく固定給にするべきでしょう。

組織構造・評価制度は改めて見直してみると気づきがありますね。
どこまでいっても完全な組織構造はないのかもしれませんが、また考えたことがあれば投稿します。では。

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