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『シン・エヴァ』まで、新劇場版全シリーズを観て気が付く伏線やネタの数々

前回の記事では「新劇場版で誤解されがちなこと」を紹介しましたが、今回はシリーズを通して見えてくる「構造」や「伏線」を紹介します。

碇シンジは、全ての作品で家出している

『序:』では第5の使徒との戦闘後、『破:』では第9の使徒(3号機)戦の後に碇ゲンドウと対峙してから。そして『Q :』ではヴンダーからMark.9に連れ去られるかたちで、さらに『シン:』ではケンスケの家から。

新劇場版シリーズを通して、シンジは毎回必ず家出しています。

碇シンジの家出は、『シン・』で初めて終わった

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旧世紀版ではシンジは第四話『雨、逃げ出した後』のラストにおいて、「ただいま」の言葉とともに自分から家出を終えました。

しかし、新劇場版においてはそうした和解の流れはなく、ネルフ諜報部に連れ戻されたままなし崩しでミサトの元に戻り、(リリスを前にした「もう一度乗ってみます」というやりとりはあるが)そのままなあなあで『破:』へと至り、再び家出します。

その後『Q:』ではUS作戦によって宇宙からヴンダーに連れ戻されますが、やはり家出を繰り返します。

そんな碇シンジの14年間に及ぶ家出が初めて終わったのが、『シン・』における第3村での生活と成長、アヤナミレイ(仮称)の喪失を経ての、自発的なヴンダーへの帰還です。

リツコの「そうやって格好つけてるけど、本当はシンジ君が戻って来てくれたと喜んでるんでしょう」という発言は、新劇場版シリーズの全体構造を言い当てるメタ台詞でもあります。

葛城ミサトは、シンジの保護者としての責任を果たした

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『序:』の第5の使徒戦後、ミサトはシンジに対して「あなたの作戦責任者は私でしょ。あなたは私の命令に従う義務があるの」と厳しく説教し、二人は対立したままシンジは長きにわたる家出をします。

しかし『シン・』において、葛城ミサトは「碇シンジは今も私、葛城ミサトの管理下にあり、これからの彼の行動の責任は私が負うということです」と断言。シンジの義務に対しての責任を、ミサトが果たした瞬間です。

この言葉を聞いた瞬間の碇シンジの表情、驚きながらも輝く目は、本当に素晴らしい演出だと思います。

メインキャラクターは全員が全裸になっている

『序:』ではシンジと綾波レイと渚カヲル、『破:』ではアスカとミサトが、『Q:』ではアヤナミレイ(仮称)が、『シン・』ではアスカとカヲルと真希波・マリ・イラストリアス、そして碇ゲンドウと綾波ユイが全裸となっています。

庵野秀明総監督は、自身が責任編集を務めた同人誌『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア   友の会』において、クリエイターが自らのコアを曝け出す作品表現について「パンツを脱ぐ」という表現を使っています。このことからも、キャラクターが全裸になることは、彼の創作において明確なメッセージを持つと考えられます。

シンジは『序:』『破:』『Q:』『シン・』全作で誰かの裸を見ている

シンジは『序:』で綾波レイの、『破:』では綾波レイと式波・アスカ・ラングレーの、『Q:』ではアヤナミレイ(仮称)の、『シン・』では渚カヲル、綾波レイ、碇ゲンドウと綾波ユイの裸を目撃しています。また、『序:』ではミサトとレイに、『破:』ではレイに、『Q:』ではヴィレクルーに裸を見られています。

誰かの裸を見て、誰かに裸を見られる。それは象徴的なコミュニケーションであると同時に、双方のリアクションによって人物同士の関係やその物語における状況を一瞬で表現する、限られた映画の尺においては有効な演出の一つでもあります。

『破:』では洗い物をしているシンジがアスカの裸を目撃して赤面しますが、『シン・』ではケンスケの家で洗い物をしながら半裸のアスカと平然と会話しています。二人の関係や、世界の状況がこの違いだけで克明に描かれている、この演出の効果を示す代表的なシーンと言えるでしょう。

停止信号プラグは『序:』の時点から登場している

『シン・』でアスカが第13号機を止めるために使った停止信号プラグですが、実は『序:』の時点から0号機を凍結させた装置として描かれています。

エヴァ第13号機がA.T.フィールドを持たない理由

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『Q:』で初登場したエヴァ第13号機はA.T.フィールドを持たない機体のため、「RSホッパー」という浮遊するビットでA.T.フィールドを発生させています。

第13号機がA.T.フィールドを持たない理由は不明でしたが、『シン・』で碇ゲンドウが「神に障壁はない。全て受け入れるだけだ」と説明しました。「第13号機=神の機体」であるとアスカが発言していることから、これが理由だと思われます。

アスカが携帯ゲーム(ワンダースワン)で遊んでいる理由

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『破:』と『シン・』で繰り返し描かれる、アスカが携帯ゲーム機で遊んでいる様子。このゲーム機は実在するバンダイのゲーム機「ワンダースワン」をモデルとして描かれていますが、シンジのウォークマン「S-DAT」同様に実在の機種にアレンジが加えられた架空のプロダクトです。

『シン・』では初めてプレイ画面が登場。任天堂の「バーチャルボーイ」のような赤と黒の画面で、パズルゲーム「GUNPEY(グンペイ)」を遊んでいることが発覚。スコアはカンストしており、いかにアスカの頭脳が優秀か、そしてこのゲームを遊び尽くしているかが表現されています。

『シン・』終盤で、幼少期からアスカがゲーム画面のような2号機の戦闘シミュレーションを繰り返していたことが描かれ、これが携帯ゲーム機を手放さない理由=エヴァの呪縛の象徴だと推測されます。

アスカとケンスケの繋がり

『シン・』で突然カップリングされたように見える二人ですが、そうではありません。『破:』ではケンスケが初対面の直後にビデオカメラで録画したアスカを確認し、彼女を絶賛する様子が描かれています。

また『シン・』の第3村シークエンスでは、アスカがベッドに横たわって人形に「私は一人」と喋らせていることから、おそらくあの時点で二人は交際関係にはないと思われます。

エントリープラグから誰かを助ける/助けない

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『序:』ではゲンドウ、そしてシンジがそれぞれ綾波レイをエントリープラグをこじ開けて救出します。『破:』ではシンジがアスカを救出することを諦め、暴走した初号機がエントリープラグを噛み砕きます。『Q:』ではアスカがシンジを救出します。

そして、『シン・』ではおそらくケンスケがエヴァの呪縛から解かれたアスカを救出しています。

そこで初めて、アスカとケンスケの二人は恋愛関係になったかもしれません。

あなたが守った街

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『序:』でミサトはシンジに対し、第3新東京市を指して「あなたが守った街よ」と言います。これは『シン・』の第3村パートにおけるアヤナミレイ(仮称)の「碇くんもここ(第3村)を守っているの?」という発言、そしてシンジの「守ってなんかないよ。僕が全部壊したんだ」という返答につながります。

アヤナミレイ(仮称)の喪失

『シン・』において、冬月がゲンドウにアヤナミレイ(仮称)のLCL化を報告しながら「自分と同じ喪失を経験させるのも息子のためか?」と問います。

これはオリジナルである綾波ユイの消失を指しているようにも、綾波シリーズでユイを再現する過程で同様の喪失を味わったようにも解釈できます。

二人の加持リョウジとセフィロトの樹

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『破:』で加持リョウジは「海洋生態系保存研究機構」という組織で、セフィロトの樹のような構造の設備で赤い海を青い海に戻すための研究に携わっていることが示唆されます。

『シン・』で加持とミサトの息子である”加持リョウジ”は、L結界密度の薄いエリアで相補性L結界浄化無効阻止装置をセフィロトの樹のように配置し、赤い大地の復元研究に携わっています。

あの電車

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エヴァを象徴する、精神世界のあの電車。

『シン・』において、ゲンドウに捨てられた幼少期のシンジが乗った電車であり、宇部新川駅に辿り着く電車だったことが明らかになります。

そして『シン・』の空撮ラストシーンでは、宇部新川駅からレイ、カヲル、アスカを乗せて走り出した様子が描かれます。

それは母、父、そして初恋の相手への感謝(ありがとう)と別れ(さようなら)であり、大人の世界へと走り出したシンジとマリへの祝福(おめでとう)かもしれません。

以上です。

他にも忘れているものがある気がするので、また記事にするかもしれません。

(画像はすべて、©︎カラー)




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