AIによって失われる仕事

noteを始めることにしました。以前はブログや日経TechOn(今の日経XTECH)に記事を書いていましたが、最近は内向きになりがち。心機一転、再び情報発信を始めようと思い立ちました。想定する読者は、大学で専門の研究に入る前の学部学生のみなさん。自分の学生時代を振り返っても、第一線の技術者や研究者にとって当たり前のことでも、案外、学生は知らないもの。そういったことを、少しずつでも伝えられたらと思っています。書き散らした雑文ですが、興味のある方はお付き合いください。

さて、noteの第一回は「AIによって失われる仕事」について。よくAIによって**の仕事が失われる、と言われますよね。その時に、失われる仕事としては、エンジニアはさほど語られないと思います。逆に今後有望な教育としてSTEM:Science(科学)、Technology(テクノロジー)、Engineering(エンジニアリング)、Math(数学)と言われたりします。でも長くIT・半導体の世界に居ると、実はエンジニアこそ技術の進化によって仕事が失われかねない、とも感じます。

例えば今の深層学習について言えば、学習にGPUが必要だけれども、非常に高価だし電力消費も莫大。「Democratize AI accelerator design(AIアクセラレータの設計を民主化する)」と言われるように、学会でも高価なGPUではなく、それぞれの応用に合ったAIチップ(LSI)を誰でも手軽に設計できるようにする技術(例えばFPGAの高位合成技術)が注目されています。

AIチップに限らず、多くのIT技術の進化は自動化を志向します。「誰でも使える民主化」と言えば聞こえは良いですが、専門家の知識・技術が必要なくても、AIなどの処理を安く低電力で誰でも行えるように、研究開発を繰り広げる。これは技術者にとっては、断崖絶壁に向かって全力でチキンレースしてるようなもの。技術者が、自分の専門性がなくても済むように技術を開発し、その結果、下手したら自分の仕事さえ失いかねない。

技術者は専門性があるだけに、もしその専門スキルが自動化されてしまったら、他の仕事に転用することは難しい。ですから技術者こそが、これから大変な時代になっているとも思います。

そんな内容で、中日新聞の特集「文系なんか要らない?」の取材を受け、「AI化、理系こそ危機」というタイトルでコメントをさせて頂きました。記者さんとのコミュニケーションミスで一部、変な記述もありますが(修正が間に合わなかった)、もし良かったら読んでみて下さい。

https://www.chunichi.co.jp/article/feature/hiroba/list/CK2020011302000168.html

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