立憲民主党 亀井議員の「種苗法の概要」の問題点

まず初めに申し上げます。これは亀井議員、並びに立憲民主党への批判です。決して反対派全体への批判ではありません。多くの反対派の方も、方法は違えど日本の農業を護りたい気持ちは同じです。ただ単に『種はだれのものか』という根源的な問題に相違があるだけです。

先日、立憲民主党所属の亀井議員が種苗法の概要につき、動画を発表されました。固定種、F1種の理解など最初から疑問に思う点ばかりでしたが、私には決して見逃せない点が2つありました。

※追記 現在、亀井議員のyoutube動画は編集後のものです。

    編集前の動画はtwitcastingで見ることができます(13分辺りから)

A 農業競争力強化支援法8条4項の引用の誤り

まず動画後半で引用された農業競争力強化支援法8条4項ですが、議員は

「独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を推進すること」

と述べておられますが、実際の法文は「促進すること」です。推進と促進では法の性質が大きく変わってしまいます。

B 「育成者権の及ばない範囲の特例の創設」に関する法解釈の誤り

次に動画では各用語の説明が終わり、改正のポイントを説明された際に「育成者権の及ばない範囲の特例の創設」につき誤った解釈をされておられました。下記リンクは亀井議員が説明の際に使用された農水省の法案概要です。

https://www.maff.go.jp/j/law/bill/201/attach/pdf/index-38.pdf

概要1(1)育成者権が及ばない範囲の特例の創設

①登録品種の種苗等が譲渡された後でも、当該種苗等を育成者の意図しない国へ輸出する行為や意図しない地域で栽培する行為について、育成者権を及ぼせるよう特例を設ける。 (第21条の2~第21条の4)

これにつき議員はこう説明されておられます。書き起こします。

「育成者権ですね、その 特許が、ええ、他の人、ええ、例えば他の会社に移転された後も、その、開発されたときに海外流出はだめですよ、という風に決められていた場合には、その条件というのは育成者が変わっても、ええ、及びますよ、という、まあそういう改正です」

わかりにくいですが

「育成者権が譲渡されたとき、最初の育成者権者が海外流出を禁じていれば、その効果は譲渡後にも及ぶ」

という解釈をされたようです。

しかしこれは法案の解釈として大きな誤りです。この特例創設は「育成者が出願時に登録品種を持ち出してもいい国を指定、また栽培してもよい地域を指定でき、それ以外の国への持ち出し、それ以外の地域での栽培が禁止される」ということなのです。つまりここで言う譲渡されるものは育成者権ではなくて、種苗そのものなのです。そしてこれが今回改正の最大の海外流出防止策です。

そんなことで海外流出を食い止められるのか、と思われる方が多数でしょうが、現行法には抜け道、抜け道とは言い難い大きな欠点があるのです。下記リンクは現行法下での種苗持ち出しに関しての農水省のパンフレットです。

http://www.hinshu2.maff.go.jp/pvr/pamphlet/kaigai.pdf

ここに書かれたフローチャートに従えば、登録品種が持ち出せることがお分かりになられると思います。今回改正ではこの穴を塞ぐのです。つまり「合法的な流出」を食い止めることが可能になるのです。

※追記(手口を広めてどうする、と批判もあるかと思いますが、改正はずっと前からアナウンスされていました。ブローカーがそれを知らないはずはありません。必要な登録品種はもう殆ど流出済みでしょう。)

以上2点につき、議員、立憲民主党のTwitterアカウントにて、誤りを再三指摘し、また農水省知的財産課に議員へのサイドのレクチャーもお願いしました。しかし議員や、立憲民主党からのリプライはなく、議員は5月28日にyoutubeの動画を非公開とされました。

そして本日5月29日、再度、Twitterアカウントにて公開をアナウンスされました。その動画を視聴したところ、私が指摘した「A 農業競争力強化支援法8条4項の引用の誤り」はそのままでしたが、「B 育成者権の及ばない範囲の特例の創設に関する法解釈の誤り」については編集によりカットされていました。

なぜそのように同じく指摘をした点を残す、カットと分けたのでしょうか。

A の誤りだって大きなものです。法文の引用の誤りなどしたら法学部の学生であれば0点です。ましてや亀井議員は立法府である国会の議員です。立法に携わる人間として決してあってはならない大きな間違いです。でもそこは残したままでした。

考えてみれば、立憲民主党所属の国会議員には弁護士ら法曹出身者もたくさんおられます。亀井議員自身も法曹出身ではありませんが、日本有数のシンクタンクの出身で大変優秀だと思われます。そのような人たちが法の解釈を間違えたりするのでしょうか。さらに立憲民主党の多くの方は民主党政権時代に政権を担っていました。私の言う「合法的な流出経路」を知らなかったというのはあり得るのか。

ここで、ずっとそんなことはあり得ない、と思っていた疑問が大きくなります。

亀井議員ら立憲民主党は意図的に虚偽な法解釈、法の文言の捏造を行ったのではないか。

A を削除せず、B のみ編集でカットしたのは、立憲民主党は有権者に今回改正での「合法的流出の防止効果」をどうしても知られたくなかったのではないでしょうか。

なぜそのようなことをするのか。この動画で議員が説明されていることはまず、基本的な用語の説明からして間違いだらけです。さらに引用した法の文言を捏造した可能性があります。そして誤った法解釈を行い、指摘されると動画を編集し削除する。それは立憲民主党が批判する「恣意的な法の濫用」そのものではないでしょうか。

そこまでして法案に反対する理由として考えられることは恐らく一つです。

立憲民主党は今回の種苗法改正法案で「合法的な流出」を止められては困る

からなのかもしれません。

本日12時36分にその旨、亀井議員のTwitterアカウントにて上記指摘を行いましたが、文字数の関係で詳細を語れなかったので再び記事を書きました。

この記事を書いている15時30分時点で亀井氏からの反応はありません。立憲民主党の先生方は匿名、無名農家のアカウントなど気にもなされていないのかも知れませんが。

亀井議員、立憲民主党にはこの件に関して詳細な説明をお願いしたいと思います。それこそが説明責任ではないでしょうか。


その後の経過報告

29日19:22  亀井議員からリプライが、ありました。

『先日はご指摘頂き有難うございました。育成者権の及ばない範囲の創設については党内で特に異論はないので、今回は法改正で懸念される部分のみ掲載することとしました。それ以上の深い意味はありません。』

それに対して私は

『ならばそのことをアナウンスすべきでは?錯誤であれ、虚偽であれ有権者に与える影響は同じです。』

『同様の指摘をした共産党、田村議員は誠実、かつ見事な対応をされました。』

と返信。(ちなみに議員は『育成者権の及ばない範囲の創設』と書かれていますが、正しくは『育成者権の及ばない範囲の特例の創設』です。果たして議員は法案を正しく理解されているのか疑問です)