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アパレル各社のEC取り組み状況を整理してみました

ZOZOTOWNによる「ZOZOSUIT」やプライベートブランド「ZOZO」は、業界に大きな衝撃を与えました。ファッションECの一プラットフォームであった企業がめきめきと力をつけ、今や商品企画・製造にまで手を伸ばしSPA化しようとしている状況において、アパレル各社は危機感をより強めているものと思われます。

激しい競争環境の中で、各社とも数年前からECを重要チャネルと位置づけ、売上拡大に向けた各種施策を打っています。しかしながら、その成否は分かれています。

下記図は、アパレル各社の売上を横軸に、EC化率を縦軸にプロットしたグラフです。

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※なお、日本を代表するアパレル企業といえば「ユニクロ」ですが、2016年度の国内売上が8,000億を超えており、他のアパレルとは一線を画すため、今回除外しています。

赤く囲った企業は、ECに早期から注力し一定の成功を収めている企業です。各社の施策やトピックを見ていきましょう。

アダストリア

売上高:2,036億円
EC売上:291億円
EC化率:14.3%
(2017年2月期)

今回取り上げた企業の中で、最も高いEC売上を誇るのがアダストリアです。2017年9月末に発表された2018年2月期の第2四半期報告では、上半期のEC売上は152億円と発表されており、単純計算で通期300億を突破する勢いです。

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ECに本格的に注力しだしたのは2012年以降だと思われます。2012年11月のECサイトリニューアルで基本的な機能の拡充を行い、さらには2014年11月にはポイント共通化を実施し、本格的なオムニチャネル施策の推進やCRMを開始しています。

結果として会員数も右肩上がりに伸びており、2018年2月期 第2四半期には約620万人に達しています。

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アダストリアWEB営業部長へのインタビュー(2017年6月)によれば、商品のブランド力に加えて、各ブランドを手掛ける営業部門がECを考慮した運用(在庫配分等)を行っていることが、成長のベースにあるとのこと。また、行動履歴に基づいた1to1メールなど、データを活かした販促施策や会員の質を高めるCRM施策などにも注力しています。
出所:アダストリアのECが伸びている理由と今後の戦略|ネットショップフォーラム

ここまで築き上げてきたブランドや顧客基盤をフルに活かす姿勢が見て取れます。更なる拡大が期待できそうです。

ベイクルーズ

売上高:1,076億円
EC売上:280億円(予測)
EC化率:26.0%
(2017年8月期、売上高は連結)

アダストリアに次ぐEC売上の規模を誇るのが、ベイクルーズです。売上高に占めるEC売上の割合は年々拡大しており、EC化率は取り上げた企業の中では最大の26%、なんと売上の四分の一を占めるまでに成長しています。

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特に近年は自社ECの成長が著しく、EC売上に占める自社EC比率は50%まで拡大しています。

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ECを統括する取締役へのインタビュー(2017年8月)によれば、ベイクルーズは業界の中でも早くからオムニチャネル施策に取り組んできたとのこと。そのオムニチャネル戦略の一つに「脱モール依存」を掲げており、近年その結果が出てきたことがわかります。
出所:「ネット専業」と戦う。5年で自社EC売上が10倍に!ベイクルーズのオムニチャネル戦略|SELECK

他にも、オムニチャネル戦略の一環として、ECのPDCAの高速化を目的としたEC運営部門のブランド横断型への変更や、会員情報・在庫などを店舗とWEBで統合する「プラットフォーム化」を挙げています。

前述のアダストリア同様に、ECに注力できる組織作りとデータの活用が、ベイクルーズの成長のエンジンとなっているようです。

TSI

売上高:1,591億円
EC売上:254億円
EC化率:16.0%
(2017年2月期)

ベイクルーズと同規模のEC売上を誇るのが、“nano・universe”や“NATURAL BEAUTY BASIC”などのブランドを扱う、TSIホールディングス(以下TSI)です。

EC化率だけを見れば、アダストリアよりも高い16%を占めていますが、店舗の売上が減少傾向にあることもEC化率を押し上げる要因となっているようです。

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TSI全体では上記の通りですが、ブランド毎にEC化率をみると、ナノ・ユニバースはEC化率40%、アルページュはEC化率30%弱と特定のブランドにおけるEC化が非常に進んでいます。

特にEC化率の高いナノ・ユニバースのWEB戦略部部長のインタビュー記事(2016年11月)によれば、ナノ・ユニバースでは2013年からオムニチャネル施策に取り組んでおり、在庫やポイントの統合やCRM施策を他社に先駆けて実施していたとのこと。2018年2月期は「パーソナライズ」にさらに注力し、来訪者の行動履歴に合わせてプッシュ通知を行う等の施策を行う予定で、EC売上のさらなる拡大が期待できます。
出所:【ナノ・ユニバース 経営企画本部Web戦略部 越智将平部長】スマホアプリ核にオムニ施策推進|日経ウェブ

また、通販新聞によると、2020年には2017年2月期のほぼ倍となる500億円を売上目標としています。かなり高い目標ですが、ECにおける成功事例・ノウハウを横展開できれば、実現性も高まるでしょう。
出所:TSIグループのEC戦略は?|通販新聞

UNITED ARROWS

売上高:1,455億円
EC売上:202億円
EC化率:13.9%
(2017年3月期、売上は連結)

セレクトショップとして多数のブランドを取り扱うユナイテッドアローズも、EC売上高が200億を超え、EC化率が高い企業の一つです。

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EC売上のうち、60%はZOZOTOWNからの売上、20%が自社サイト、残り20%は複数の他社ECサイトからの売上という構成になっています。

2013年のインタビュー時点で既に、店舗連動施策の強化、店舗での会員化、店舗とECの在庫連動、EC拡大に注力できる組織体制など、上記の3社同様に多くのオムニチャネル施策に取り組んでいます。

直近の2017年3月期でも、ハウスカード(店舗)会員とEC会員のポイント共通化やECでの売れ行きを参考にした在庫積み増しなどの施策に取り組み、着実に結果を残している印象です。
出所:EC化率10%超!ユナイテッドアローズのネットと店舗を連動させたO2O戦略の秘訣|MarkeZine

日本経済社の記事でも紹介されている通り、ユナイテッドアローズはECを今後の成長のけん引役と捉えており、今後はさらなるECへの投資と成長が予想されます。
出所:ユナイテッドアローズ、ECに懸ける3度目の復活|日本経済新聞

ECにおける成功の要因は?

これまで、ECで成功しているアパレル4社の売上とEC化率、そしてインタビュー記事などから注力施策を確認しました。

各社の共通点は大きく、2点ありました。
1.店舗とECが連動する「オムニチャネル」の実現を早期に掲げ、会員情報や在庫情報を連動させていること
2.EC部門を横断型にしたり、ブランド部門がECを考慮し在庫を配分する等、オムニチャネルを推進しやすい組織にすること

各社とも、元々店舗で大きな顧客基盤を抱える企業でした。そのため、ECを利用しやすい仕組みを作っておくことで、ユーザーの購買ルートの変化(店舗→EC)の流れの中でも顧客を離さずに、ECの売上を伸ばすことができたのではないでしょうか。

また、店舗から見れば、ともすれば「ECに売上を奪われてしまう」とも感じるような状況の中で、その不安や反対にも負けずにECに注力できる組織を作り上げたことも、大きな成功要因であったと感じます。

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