最初にやろうと思っていたことはできなかった
少し前に当初やろうとしている事業から180度ピボットしました。
それまでの経緯を書き残しておきます。
そもそもの起業のきっかけについては前回のブログで書き綴っていますので良かったらお読みください。
最初の事業とそのきっかけ
最初の事業を考えるとき、様々な考え方があると思います。
基本的にはやりたいこと、興味があることをやろうとする方が多いと思います。私はそうでした。自分が興味があることをリストアップして、どんなことをやりたいのかを考えました。
その中で、「日本の素晴らしさを世界に広めたい」「日本の良いものをもっと世界に知ってほしい」という思いに辿り着きました。きっかけはサランラップです。イギリスのラップはくっつかないし切れないです。それに比べて日本のサランラップは最高です。
まあこれはきっかけにすぎません。それから色々とあるなかで、日本文化に興味を持ち、「日本の素晴らしさ」が伝統工芸に凝縮されているのではないかと考えました。
個人的に日本文化や工芸品について調べているうちに、どんどん興味を持ち、修士論文も和竿について書きました。和竿というのは、竹でできた伝統的な釣り竿のことです。
伝統工芸産業は重大な問題を抱えています。それは需要の減少と売上高の低下、それに伴う業界の縮小です。これを根本的な原因として、材料の確保が難しくなったり、後継者不足など関連する問題も次々と現れています。
この問題を解決したい。日本の素晴らしいモノ、工芸品を世界に広めたい。
これが事業の目的になりました。事業内容に関しても、様々な問題を分析し、簡単に言うと、【工芸品をハイブランド】として売ることがベストだと確信し、それに関して計画を立てていきました。
少し個人的な話になってしまったので一般化すると、多くの方々と同じように、「これをこうしたい」ということを最初の事業として選び、計画を練り、人を訪ね、話を聞きました。
起業をするという夢が少しずつ現実になる喜びと興奮がありました。しかしながら、今となっては無根拠な自信と幻想が大半を占めていたと思います。
それはなぜか。
事業を成立させるためには多くのことを考える必要があります。
良く言われる【ヒト・モノ・カネ】は初期に必要になります。
売る商品=プロダクトは競合にも負けない価値を持つ必要があります。
もしプロダクトが良くても、売れなければ意味がありません。マーケティングやセールスの方法を複数持つ必要もあります。
また、プロダクトはしっかりと利益を生む必要がありますし、売れ続けなければ会社は潰れてしまいます。
私と共同創業者は、実際にこれらを具体的なシミュレーションができるレベルまで落とし込みました。しかしながら、様々な課題が浮き上がってきました。工芸品業界という枠組みで数十の事業アイデアに対してです。
細かいことを書くとあまりにも長くなってしまうので割愛させてもらいますが、致命傷となる問題は、その業界が斜陽産業というか、右肩下がりの業界であるという事実です。そのことは当初から理解しながらも、アイデア次第でなんとかなると思い込んでいました。しかし需要が減っているということはニーズが減っているということです。
これでは事業をスケールさせるのが難しいと感じました。
それから、しっかりと地に足をつけて一つ一つ検証、シミュレーションをすると、【自分たちができること】の範囲を超えていました。お金がかかりすぎることが判明しました。
人によっては、「こんなことは気にせずにまずはやってみろ、行動が大事だ。」そのように言われる方がいるかと思います。特に起業家の先輩たちはアイデアよりも行動が大事だとみなさん口を揃えて仰っています。
自分ではわかっていました。というかわかっていたつもりでいました。しかし、実際にかかる金額、プロダクトの開発、仕入れ、販売方法の選定、マネタイズ、マーケティングの方法、集客の見込みなど考えれば考えるほど、一言で表せば「無理そうだ。」と思ってしまいました。
少なくとも私には、見通しが立たない中で数百、数千万のお金を調達して、自信をもって事業を始めることはできませんでした。
メンタルが弱っていった
最初は無根拠な自信と幻想があり、多少の問題もなんとかなるだろう、このように思っていたのだと思います。
しかし、時間をかけて必死にリサーチして練った計画に問題が見つかり、解決策を探す、見つかる。次の問題が見つかる、解決策を探す。頭を抱える。
他の方法を探していると、この問題の原因はこれだから、こうした方が良いと思い、事業内容自体にも変化が生まれる。「これならイケるぞ!」と暗闇の中で光を見つけたような気分になる。
ただまたこのアイデアにも問題が見つかる。希望が砕かれる。
このようなループが半年以上続き、自分には何もできないのではないかと思うようになりました。例えるなら、「出口が全く見えない長いトンネルの暗闇の中で、何度も光に可能性を感じるが、出口は見つからない。」
このような精神状態です。ついには諦めて就職した方が良かったのではないかと考えるようにもなりました。
辿り着いた一つの結論
本当にここには書ききれないような様々な問題が想定され、色々と事業内容を考えた末、2つの結論に辿り着きました。
一つは、工芸業界のような厳しい産業に変化を起こすには、大量の資金または圧倒的な影響力が不可欠である。ということです。
もう一つは、これは私のようなビジネスのド素人が最初にやる事業としてはハードルが高すぎるという結論です。
これらの結論が出たのは4月末、それからは別の業界で別の事業をやることに決め、お金と経験値を得た後に工芸に戻ってくると心に誓いました。
正直めちゃくちゃ悔しかったです。工芸関連の人にはお世話になりましたし、ここまで半年以上考えたのに、結局やらなかった。何もやれなかったわけです。
いつか、必ず戻ってきます。この気持ちは今も変わりません。私には修行が必要です。
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