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ひとり空間の都市論 【要約】

序章『孤独のグルメ』の都市論

・本書は、何らかの仕切りによって「ひとり」である状態を確保された空間を「ひとり空間」と定義する。

・「ひとり空間」には、商業施設や住宅のような物理空間だけでなく、スマートフォンなどの使用によって立ち上げられる「見えない仕切り」も含まれる。

第1章 ひとり・ひとり空間・都市

・「ひとり空間」は、「状態としてのひとり」の身体を通して経験される。「状態としてのひとり」は常に「空間」を伴っている。

・都市において人々は互いに「見知らぬ他者」であることで「匿名性」を帯びている。互いに匿名である都市において、「孤独」と「自由」は背中合わせである。

第2章 住まい──単身者とモビリティ

・四畳半の祖である鴨長明の方丈庵は、都と「切断」「再接続」をしていた。

・90年代の狭小な賃貸を掲載した『TOKYO STTYLE』の著者である都筑は、「街を自分の部屋の延長にしてしまえばいい」という。

・シェアハウスは、ひとりでいる状態(切断)と他者とともいる状態(接続)の切り替え(スイッチング)が反映された住宅だ。

第3章 飲食店・宿泊施設──日本的都市風景

・日本の都市には、「ひとり空間」の住宅と商業空間が多く見られる。なぜなら、単身者が最低限の生計を立てることが可能なラインで賃金が設定されているからだ。

・明治以降の日本社会には、組織の「ウチ」の帰属意識と「ソト」の孤立性が存在する。組織では歯車の一部として都市空間では「単位としての一人」として扱うことによって、企業文化や消費文化をつくってきた。

第4章 モバイル・メディア──ウォークマンからスマートフォンまで

・「見えない仕切り」の先駆けがウォークマンである。

・携帯電話は「ひとり空間」がネットワーク化する回路を開き、スマートフォンの台頭ともにSNSが普及することで個人最適化された常時接続の時代に突入した。

・モバイル・メディアの発達が「動きながらの社交」を生んだ。今後も新たなメディアの台頭は、ウチとソトの境界意識や身体経験を再編成するだろう。

終章 都市の「ひとり空間」の行方

・AirbnbやUberなどのシェアリングエコノミーは、血縁・地縁に結びつかない組織体「アソシエーション」を生む。
・「アソシエーション」は、「半匿名性」であり複数所属が可能で「ウチ」の組織より自由である。
しかし、新たな格差を生む点において全てを肯定することは出来ない。


https://www.amazon.co.jp/ひとり空間の都市論-ちくま新書-南後-由和/dp/4480071075

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