リフォーム工事中の地震被害について

「リフォーム工事をしている最中に地震があった場合、その損害は誰が負担するのか」

 今年1月にあった能登半島地震、また4月には台湾で大きな地震があった。巨大地震があると現在進行中のお客様からこのような質問が寄せられることがある。

調べてみると公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センターの住まいるダイヤルにて以下の似たような相談事例があったのでご紹介したい。

「リフォーム工事中に地震で全壊の被害を受けた。工事代金を支払う必要があるか?」

結論を言えばこの回答者は


「契約事項に取り決めがなければ民法536条1項に従い、完成引き渡し前であれば発注者に支払いの義務はないと考えます。」


としている。

ちなみに民放536条は以下。


第536条1.当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる
2.債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。
(以上ここまで)


ここでいう「当事者双方の責めに帰することができない事由」とは不可効力のことをいうのだろう。

不可抗力といえば自然災害。地震、雷、隕石、落石、台風、水害などなど

 大げさな話だが例えば隕石がドーンと落ちてきて、あたり一面が焼け野原になっても、一方的に施工会社に負担せよというの現実的ではない。
 負担が大きくなれば計画的に倒産、廃業する会社も出てくるだろう。施主としては業者に逃げられるのが一番、痛い。
(そもそもリフォームの現場での被災認定ができるのか不明な点はある)

弊社では工事請負契約書に以下の条文を加えている。

(株)ロビン工事請負契約書 約款の一部 

不可抗力の損害については、工事の出来高については甲(施主)、仮設、施工前の材料、設備品については乙(請負会社=弊社)が負担することとしている。

私は専門家ではないため、万が一があった場合、工事請負契約書の約款と民放536条のどちらに効力があるかはわからない。
しかし中小企業の建築・リフォーム会社においてギリギリの内容で約款を設定し理解をして頂いている。

加えて言うなら(論点は少し変わってしまうが)この条文があることで実際に被災し損害があった場合、

「よりよいアイデアを出し合って解決しましょう」

という相談のテーブルを用意することができる。結局のところ工事の最中のトラブルは不可抗力であろうとなかろうと誠意ある態度で相談、打ち合わせをしていくほかない。そのテーブルを用意させていただくための条文である。

ちなみに以下の場合はどうだろうか。

「真夜中、リフォーム工事現場に自動車が突っ込んできて現場に損害が出た。自動車はそのまま逃げて運転手もわからない。現場の損害負担は誰がするのか?」

(株)ロビン 工事請負契約書約款 一部

こちらは被害であっても一般の損害になり、乙(弊社)の負担である。

 裏を返せば(お客様には関係がないが)この一般の損害の場合は施工会社が保険会社と契約をしている建設工事保険が適用される。

余談だが、地震に限っていえば基本的に施主が入っている地震保険があれば支払の対象になる可能性がある。(増築工事中など未登記部分は対象外)
すみやかに保険会社に連絡し対応してもらうことが望ましい。

 余談だが地震保険は官民一体が制度設計している特殊な保険である。

(参考 財務省 地震保険制度の概要)


 地震保険は政府と民間の保険会社が共同で運営している制度で被災者の生活の安定に寄与していることを目的としており火災保険の付帯扱いである。民間保険会社が負う地震保険責任を政府が再保険し、民間のみで対応できない巨大地震発生の際に再保険金の支払いを行うために地震再保険特別会計にて区分されている。
1回の地震による支払い限度額は12兆円で過去の巨大地震が発生した際でも総支払限度額以内であった。

 これだけ地震が頻発すると工事中に巨大地震がきて損害に遭ったら誰が負担してくれるのか、と心配になる気持ちはよくわかる。
今後、その不安を払拭してくれる保険商品が一般的になるかもしれない。
実際にそうなった場合は、繰り返しになるが施工会社とよく相談の上、ベターな選択をするしかないのが現実的である。

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