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散髪屋にて指先からタバコの香り漂う

社会人になる1日前に散髪屋に行った。
大学生の時は美容院ばかり通っていたが、
もう染めたりパーマをかけたりすることから
卒業したためこれからは散髪屋に
行こうと思っていた。

高校生までは、
基本的に父親が通っている散髪屋に
僕も一緒に行っていた。
だけど、
その散髪屋が潰れてしまい母親の行きつけの美容院に社会人になる前までそこで髪の毛を切っていた。

久しぶりの散髪屋ということもあって、
どこか緊張感があってドキドキしながら
家から車で15分ぐらいの散髪屋に行ってみた。

美容院とは違って内装もおしゃれな感じではない。
この雰囲気がどこか懐かしい気持ちを思い出した。

店内に入るいなや、
番号が振られた席へ案内された。

1分ちょっと待っていたら30代ぐらいの男性の
理容師さんがこちらに向かって 
小走りで向かってきた。

この回転率が懐かしい。
とにかく美容院と比べると一人当たりにかける
時間が短く早くて良い。

だけど、
美容院のような無駄に話さなくても良いのが
意外と僕はありがたい。

美容院だと近況の話や趣味の話し、
もっと踏み込むと彼女がいるのかの話しに
なることもある。

それが、僕はめちゃくちゃ苦手。
だって、そこまで深い関係じゃ無いのに、
なんで言わないといけないの?と
感じてしまうから。

別に話しても良いけど、プライベートの部分を
土足でヅカヅカと侵入されるのが
あんまり良い気がしない。

もちろん、
美容師からしたらそれも仕事の内の
一つだということは頭の中では
理解しているんだけどね...

まぁ、
話が逸れてしまったからここからまた
戻りますけど...笑

さぁ、
ついに髪の毛を切るということになって、
理容師から「どのくらい切られますか?」と
聞かれたので、「社会人になるので前髪は目に
かからないぐらいで全体的に短めでお願いします」と答えた。

すると、「分かりました。」という返事がきて、
髪の毛を切り始めた。

まずはヘアピンで髪の毛を部分部分で取っていき、
横と後ろをバリカンで刈り上げてもらった。

それが終わった後、
ハサミで前髪と全体的に短くする
作業に入っていった。

チョキチョキとハサミで整えられ地面に落ちていった
髪の毛を見ると大人にならないといけないという
寂しさを感じて悲しかった。

長かった髪の毛がどんどん時間が経つにつれて
短くなっていく。
まるで、
高校時代の自分の姿をビデオで
逆再生しているように感じた。  
もう戻れないんだと考えると心が苦しくなったし、
これから社会人として上手くやっていけるか?
この不安とドキドキした感情は、
コップにギリギリまで入った水が溢れ出しそうな
ものだった。


そんな風に感傷に浸っていると、
髪の毛を切り終えていることに気が付いた。

理容師が鏡を持って後頭部を写し出し、
「こんな感じでよろしいでしょうか?」と
尋ねられた。
僕は「はい。大丈夫です」と答え、
切り終えた髪型をじっくりと見た。
短くなった髪はスッキリしていて気に入った。

その後、
「髭を剃るので台を後ろに倒しますね」と言われ、「はい。分かりましたー」と答えた。

仰向けになったので天井の蛍光灯の光が眩しくて、
時より目をパチパチと瞑って眩しい光を避けた。

その光を見ると、
輝かしい将来から目を背ける必要は無いんだと
思わされように感じて安心した。


すると、
髭を剃られ始めた。
剃りやすいように目を瞑っていたんだけど、 
理容師の指が自分の鼻に近づいた時に
タバコの香りが漂ってきた。
「ん?なんか臭う。この臭い絶対タバコじゃん」と
すぐに気づいた。

よくよく思い出してみたら、
そういえば店内に入る前に、
店の外の自動ドアの横に喫煙所があった事を
思い出した。
そこにその理容師がいた事を僕は見ていた。
あー!この人だったんだ!と全てを悟った。

それでも、
ジョリジョリと髭を剃られ続けられる。
なんとかタバコの臭いから逃れるために、
鼻呼吸をやめて口呼吸に切り替えようと
思ったけど、
それでもタバコの香りは鼻の奥の方へ
ユラユラと漂ってくる。

だんだんイライラしてきて、
「何で僕が気を遣っているんだよ。
髪切る前に手ぐらい洗っといてよ!」と
心の中でズバッとツッこんだ。

その気持ちがさっきまで感傷に浸っていた思いが
その臭いのせいでいつの間にか、
子供が白い画用紙にはちゃめちゃに 
色を塗るように掻き消されていった。

もう諦めよう...
我慢するしか無いな。そう心の中で決意した。

髭が剃り終わり蒸しタオルで顔を拭かれ、
やっと髭が剃り終わり我慢が終わることが
嬉しくて堪らなかった。

最後に、
ドライヤーで髪の毛を整えられ、
やっと全工程が終わった。

「お疲れ様でした」と理容師に言われて、
「ありがとうございました」と答えた。
(ほんと、疲れたよ笑)

お会計に向かいお金を支払い終わり、
自動ドアが開き外に出た。

明日から社会人。
こんなことでイライラしてたらダメだなぁ(笑)

社会人になったらこれよりも
酷い理不尽なことが待っている。
だから、
こんな小さい理不尽にイライラするのは
辞めようと思った出来事でした。





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