見出し画像

不老不死は実現するか

2022年1月-
遺伝子操作した豚の心臓を世界で初めて人間に移植したというニュースが流れた。(参考:NHKニュース「遺伝子操作したブタの心臓 人に移植成功 世界初 アメリカ」)

しかしその2ヶ月後、豚の心臓を移植された患者が死亡したという知らせも届いている。(参考:BBCニュース「世界初のブタ心臓移植を受けた男性が死亡、術後2カ月 アメリカ」

遺伝子操作された豚の臓器を人間に移植するという研究はかなり以前から行われており、実は1997年にはすでに人間への豚の心臓移植手術も行われていたのであるが、この事実はなぜか闇の葬り去られている。
ここに深い闇があるのかもしれない。

今回はそんなリサーチを以下に紹介する。


K.S.R.C ResearchReport FileNo.010011
オリジナル公開日 1999/4/24 報告
  報告者:KS

 人は古くから不老不死に憧れて、それを実現するために様々な努力を続けてきた。不老不死の妙薬は現代医学の力で実現可能だろうか。

 まずは、老化現象から解明していくとしよう。
老化現象とは新しい体組織が作られなくなることである。では、なぜ新しい組織が作られなくなるのであろうか。
 それは細胞分裂の際におけるDNAの複製回数の制限によることが原因とされる。DNAは完全な複製を作ると思われていたが、実はそうではなかったのだ。
 DNAは4個の塩基対の組合せによるものだが、その両端に「テロメア」という構造がある。このテロメアは実は複製されるたびに、その長さが短くなっているのだ。そして、その長さがある長さになると、それ以上複製されることはなくなってしまう。したがって、細胞分裂が起こらなくなり、老化が起きると言うわけである。
 もし、テロメアを短くすることなく複製することが出来たら・・・そう、いつまでも細胞の複製はし続けることになり、老化も起こらなくなるのである。

 テロメアを短くすることなくDNAの複製がされるようにできないであろうか。実は、短くなったテロメアを、再び伸ばす作用のある物質が発見されているのだ。それは、「テロメラーゼ」という。そして、このテロメラーゼはある細胞の中から発見されたのだ。それは、癌細胞である。癌細胞は複製回数が制限されておらず、寿命というものがない(こういった細胞を「不死化細胞」と言う)。

 不死化細胞である癌細胞からテロメラーゼが発見されたことにより、テロメラーゼこそが不老不死の妙薬かと期待されている。しかし、正常細胞からはテロメラーゼが発見されていないことから、不老不死にはテロメラーゼだけではなく何か他の要因があるのではないかという推測がされていた。

 そんな中、その「他の要因」が発見されたのである。

 それは、正常な細胞にはあるが不死化細胞にはない、ある種のタンパク質であった。そのタンパク質は「モータリン」と名付けられ、その後見つかった遺伝子は「モータリン遺伝子」と名付けられた。老化した細胞にモータリンタンパク質の働きを抑える「中和抗体」を注入する実験を行ったところ、なんと老化細胞は再び分裂を再開したという。
 つまりモータリン遺伝子こそ、細胞の寿命を一手に握っている遺伝子なのだ。この遺伝子があるために、細胞は死ぬ運命をたどるのだ。同様に、我々の体も徐々に老化していき、いつかは死ぬ。不死化細胞にはこのモータリン遺伝子がないから、死なないのだ。
 ところが、不死化細胞にもモータリンタンパク質が発見されたのだ。しかし、よくよく調べてみると、正常細胞のモータリンタンパク質は細胞質に散らばっているのだが、不死化細胞のモータリンタンパク質は細胞核の周りだけにあり、アミノ酸組成も違うなど、両者の性質は明らかに異なっていたのだ。
 そこで、正常細胞のモータリンを「モータリン1」、不死化細胞のモータリンを「モータリン2」と名付けた。このモータリン2こそが、細胞を死なせないための遺伝子なのだ。
 例えば、老化した細胞にモータリン2を、癌細胞にモータリン1を注入してやるとどうなるか。モータリン2を注入された老化細胞は再び分裂しだし、逆にモータリン1を注入された癌細胞は死んでいくことになるのだ。

 正常細胞のモータリン1は前述のテロメラーゼを押さえ込んでしまう力を持っていると考えられている。それはそうであろう。もし正常細胞にテロメラーゼがあれば、癌細胞と同じように分裂を繰り返し、不死の世界ができあがっているはずである。
 詰まるところ、肉体を構成している細胞が死ななければ、不老不死は実現できるのだ。
 そう、不老不死の妙薬最有力候補はテロメラーゼとモータリン2といえるのだ。近い将来、不老不死は実現可能かもしれない。

 しかし、細胞としての寿命がなくなったとしても、何らかの外的要因により体や臓器が損傷をうけた場合はどうであろうか。工業製品のように傷んだパーツを取り替えることができたら、常に新品のパーツであれば、より不老不死といえるだろう。
 現代医学においても、それは可能であるし実行されている。臓器移植や美容整形などがそうだ。

 しかし、臓器移植にはいくつかの問題点が存在している。

まず一つは、拒絶反応だ。
 人間の体には抗体というものが存在している。この抗体は、体に自分とは異なったものが侵入してきた場合、そのものに対して攻撃を仕掛け、撃退する仕組みのことだ。攻撃された移植片は破壊され、最終的には臓器全体が急性出血を起こし壊死してしまう。

2つ目は、ドナー不足だ。
 日本では1997年10月に臓器移植法が施行されたが、いかんせん臓器を提供してくれる人(ドナー)が、不足している。これは、一つ目の問題点とも関係するのだが、拒絶反応を最小限で食い止めるため、できるだけ抗体のタイプが一致している人同士でないと移植ができないことも影響している。

 上記のような問題点があるのだが、ここに来てこれらの問題点を一挙に解決できる手段が確立されはじめている。「トランスジェニック」である。
 トランスジェニックとは、遺伝子注入実験動物とでも言えよう。人間の遺伝子を持った動物である。遺伝子の中に人間の遺伝子(「外来遺伝子」という)を持ったこのトランスジェニック動物の臓器を使えば、厄介な拒絶反応の心配をする必要がない。遺伝子レベルで同一なのだから拒絶反応が起こるはずがないのである。また、トランスジェニック動物を使えば、ドナーが出てくるのを待つ必要もなくなるのだ。
 しかも、トランスジェニックの良いところは、低いコストで可能な点だ。通常、遺伝子の培養には複雑な装置と綿密に整えられた環境が必要だが、トランスジェニックの場合、複雑な装置はなしに大量生産できるのだ。
 このトランスジェニック動物の臓器移植というのは、すでに行われている。アメリカでは1997年にトランスジェニックの豚の心臓を40歳の男性に移植し、成功している。また、1998年12月にはトランスジェニックで造ったネズミの細胞を脳に移植している。

 また、「クローニング」で培養した自分の臓器を移植するという手段もある。
 1997年2月のクローン羊ドリーの誕生のニュースは世界中を駆けめぐり話題を振りまいたが、そのドリー誕生から1週間後にはクローン猿も誕生しているのである。これによりクローン人間も技術的には可能なことが証明された。が、倫理上の観点から様々な反発が出ている。確かに、人間そのものをクローニングしてしまうことは問題があるとは思うが、部分的にならどうであろうか。例えば、肝臓や心臓だけをクローニングしておけば、万が一の場合自分の細胞から造った臓器を移植することができるし、倫理上も問題ないように思える。


 このように、不老不死は夢物語ではなく、現実のものになろうとしている。

 しかし、限りある命だからこそ有意義に生きていけるのではないであろうか。それとも、無限の時間を使った人生の方が有意義なのであろうか・・・・


<解説>

1997年10月

 日本で臓器移植法が施行された1997年10月から1ヶ月後の1997年11月にはアメリカで前代未聞の実験が行われ成功している。
 それは、猿の首を別の猿の体にすげ替えるというものだ。
 道徳に反する等の批判が多かったが研究の成果は見事で、猿は1週間ほど生き延びている。
 しかも、当時の研究者は、このまま行けば今後30年以内には人間にも適応可能だと話しているのだ。

トランスジェニックの豚の心臓を40歳の男性に移植

 移植半年後、この男性がマスコミに以下のように語った。
「生きているのはありがたいが、周囲から豚の心臓を体内に入れているとからかわれるのはもう飽きた。移植には必ずしも感謝していない。」
このことは、トランスジェニック移植に隠された問題点と言えるだろう。

ネズミの細胞を脳に移植

 脳内のドーパミン不足で起こるパーキソン病の治療として行われた。
①ネズミに人間用ドーパミンを分泌する遺伝子を注入し、変異細胞をつくる。
②その細胞をカプセルに詰め、人間の脳に移植。
③ネズミの細胞から出たドーパミンがカプセルから人間の脳にしみ出して症状を抑える。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?