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2019年ベストアルバム

1.Christian Scott /Ancestral Recall
2.Weyes Blood/Titanic Rising
3.Kendrick Scott Oracle/A Wall Becomes A Bridge
4.Brittany Howard/Jaime
5.Esperanza Spalding /12 Little Spells
6.Snarky Puppy/Immigrance
7. 細野晴臣 /HOCHONO HOUSE
8.Anderson .Paak/Ventura
9.J.Lamotta Suzume/すずめ
10.Philip Bailey/Love Will Find A Way

1位はダントツでライブでもベスト1に選んだChristian Scottの「Ancestral Recall」。Christian Scottには2015年にリリースした「STRETCH MUSIC」という名作がある。これは自分がジャズにハマるきっかけを作ってくれたアルバムでもある。ピーター・バラカン氏のFM番組「Weekend Sunshine」のジャズ特集にゲストで登場した柳樂光隆氏がこのアルバムを紹介し、今までジャズに関してさほど関心が持てなかった自分が「これが今のジャズなのか」と触発してくれたのがこの作品だった。
元々ニューオリンズ出身のChristian Scott Atunde Adjuahのルーツはブラックインディアンにあり、所謂典型的なブラックアフリカンの作る音楽と一線を画していた。ルーツであるネイティブアメリカン、さらにその先のルーツであるアフリカの呪術的な色合いをさらに色濃くしたのがこのアルバム。ただワールドミュージックにはならずにエレクトロとジャズをミックスしつつ、ジャズの枠組みを遥かに超えた仕上がりになっていて素晴らしい。
ニューオリンズという街がカリブの玄関口として、西アフリカからやって来た黒人奴隷のカリブ経由での帰結点であったという歴史を意識させ、彼の作品がアメリカ大陸とアフリカ大陸をシンクロさせているような心地さえしてしまう大作である。

以下は甲乙つけ難いが、2位のWeyes Bloodは異色で風情としては70年代のカントリーロックにも通じる色合い。何よりも楽器編成に魅かれる。スライドギター、オルガン、パーカッションに女性ベーシスト。女性ボーカリストNatalie MeringのソロプロジェクトであるWeyes Blood、本人曰く「Bob SegerミーツEnya」だそうだが、自分の印象は「透明感のあるニール・ヤング」「ジョニ・ミッチェル×フライング・ブリトー・ブラザーズ 」と色んな例えができそうな多面的なプロジェクトである。どこか懐かしいが彼女しか作れない独特のメロディラインに聴いた瞬間に引き込まれて何度も聴いた名盤である。
3位のKendrick Scott Oracleの「A Wall Becomes A Bridge」はChristian Scott同様、黒人の新世代ジャズの作品だが、ドラマーのソロ作というよりOracleというグループとしてのまとまりが凄い。Kendrick Scott(ds)、John Ellis(sax)、Mike Moreno(g)、Taylor Eigsti(key)、Joe Sanders(b)の各ミュージシャンの演奏も素晴らしい。ライブもこの不動のメンツでアルバムが再現され、両方体験することで完結する仕組みが心憎い。フュージョン的な聴きやすいメロディとジャズ的な即興とプログレのような難解さが音像としてスタジオワークで見事に作り込まれている。プロデューサーはDerrick Hodgeと聞いて納得した。
4位のBrittany Howard「Jaime」はAlabama Shakes のリード・シンガーBritta
ny Howardの初ソロ・アルバム。Robert Glasperの参加が話題だが、何と言ってもドラマーにNate Smithを起用したのがヒットであろう。2018年のJose Jamesの来日で叩いた彼を観て、彼こそがDrummer of the yearだと感激したが、あの震えるようなプレイがこのレコードでも堪能できた。オルタナ×南部ブルースといった風情のAlabama Shakesの音から進化したオルタナ・ジャズ的なくぐもった音色をNateのビートが見事に支える。
5位のEsperanza Spaldingの「12 Little Spells」は彼女がベースを弾かずにシンガーに徹した作品。メンバーは2018年R+R=NOWでも来日したドラムのJustin TysonにMatthew Stevens(g)、Aaron Burnett(sax)、Burniss Travis(b)、Corey King(bv)。彼女のベースが聴けないのは寂しいが、その分ボーカリスト、シンガーソングライターとしての地位を確立したと言えよう。以前より彼女こそ「黒いジョニ・ミッチェル」と思ったが、その独特のメロディラインに磨きがかかり、演奏家から作家へと大きくバージョンアップした。2020年に来日を最も熱望するミュージシャンである。

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