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The Satoshi Trial 17日目

2024年2月28日 宍戸健

「クレイグ博士はサトシじゃない裁判 by COPA」(通称:COPA裁判、サトシトライアル)続きます。2024年2月27日(月)の審理は17日目です。本日はCOPA側のデジタル鑑識を担当した証人への尋問です。LaTexファイル分析を担当したArthur Rosendahl氏に対し主にクレイグ博士側の弁護士が尋問しました。Rosendahl氏はスウェーデン人の数学者で現在世界のTex User Groupの会長です。(TexはLaTexの前身となったソフトウェアであり別物ですが、Rosendahl氏はLaTexの長年のユーザーでもあるようです。)

1.Schedule 

2.背景と主張
Rosedahl氏はCOPAに依頼され、クレイグ博士側から提出されたLaTexで書かれたBitcoinWPのファイルを分析し、そのファイルがPDFに変換されたBitcoin White Paperの元になったか否かのリポートを作成し、参考資料として提出しています。その内容は、毎度おなじみの「クレイグ博士がLaTexのファイルを改竄しPDFのWPに極めて似るように努力した形跡がある。しかし完全に同一なWPは出力されなかった。よってLaTexで書かれていない。」という結論でした。(実際には70ページに渡るリポートです。)

そこで本日は、その分析に対しクレイグ博士側の弁護士が「ほんとですか。」といろいろ尋問しました。時間は約1時間くらいで短かったです。

昨年12月に「BitcoinWPはLaTexで書かれていた。」の記事を書きましたが、今回RuthさんがLaTexでWPを書いたらこんな感じとTweetしてたのわかりやすいので貼り付けます。(Rosendahl氏に渡されたLaTexファイルはエラーが出て再現できなかった。)

https://x.com/ruthheasman/status/1762433139454959918?s=20

3.Rosendahl氏のリポートに疑問を投げかける。
クレイグ博士の弁護士(Orr)
ローゼンダール(AR)
COPA側弁護士(HG)
メラー裁判長(ML)

Orr: クレイグ博士は彼の2008年当時のコンピュータ環境は先進的で複雑な仕組みにしていたと証言していますね。彼はMikTeXを使用し、VM(Virtual Machine)を実行してLinuxとWindowsを両方使っていました。(宍戸健:当時も今も、クレイグ博士はものすごい複雑なシステムを組まれています。そもそもコンピューター技術の博士でもあり、自宅に何十もラックを建ててるくらいですから。)
AR: そうですね。私には理解するのが難しいと思いました。

Orr: 彼はRed Hat(Linux)とWindowsを使用していましたね。
AR: はい。

Orr: 彼はLinuxでTeXLiveを使用し、WindowsでMiKTexを使用しました。
AR: それはわかりますが、技術的に彼がいつ何を使っていたかは明らかでした。

Orr: 一緒に考えてみましょう。彼の証言から次の3 つのことが説明されると思います。

1: 彼はWindowsとLinuxの両方でLaTexを使っていた。
2: Windowsを使う時は、MikTexを使っていた。
3: Linuxを使用する場合、代替としてTeXLiveを使っていた。
技術的な観点から見ると、これは正しいですよね。
AR: はい。

Orr: そして、彼はこれをバーチャルに行うことができるのでしょうか?
AR: はい。

Orr: あなたの報告書ではTeXLiveは使用しましたが、MiKTeX は使用しませんでしたね。
AR: その必要はなかったからです。
(宍戸健:MiKTex環境では分析してないことがわかった。)

Orr: ホワイトペーパーを作成するときに彼がMiKTeXを使用した場合、結果は異なる可能性があります。
AR: そうですね、純粋な論理上の話ではありますが。

Orr: このパッケージ(宍戸健:2009年より後のバージョンのことを言っている)以降により、Times New Romanフォントが使えるようになりましたね。
AR: そうです。

Orr: (2008年当時の)Unicode数学パッケージでは数学フォントにTimes New Romanを使用できなかったのは正しいことですが、Times New Romanを使用するようにカスタマイズすることは技術的には可能でしたね。
AR: はい、でも当時はUnicode数学は利用できませんでした。Times New Romanを使用することはできませんでしたが、カスタム コードを使用すれば使用できたでしょう。

(宍戸健:BitcoinのWPはTime New Romanフォントが使われています。2008年当時LaTexのディフォルトではTimes New Romanは搭載されていなかった。)

Orr: あなたはTeXLiveのLaTexを使用し、クレイグ博士はMiKTeXのLaTexを使用していました。最終的な影響は、あなたの環境がクレイグ博士とまったく同じ環境ではなかったことです。
AR: そうは思いません。彼はどの環境を使用したかを明確に述べていませんでしたが、可能であれば私はそれを再現する努力をしたでしょう。

Orr: それで、あなたのLaTexファイルはビットコインのホワイトペーパーに出力できなかったのですか?
AR: そうです。

Orr: でも、クレイグ博士と同一の環境でやればできるでしょう?
AR: いいえ、私の意見ではそうではありません。

Orr: これ以上の質問はありません。

HG: 証拠に戻ってもいいでしょうか。あなたは、結論に至るより重要な部分は文書の内部に関するものだと言いました。
AR: はい。

HG: これらもあなたが参照していたセクションですか?
AR: はい。

HG: これをビットコイン ホワイトペーパーに出力するためにLaTexファイルを作成するには多大な労力がかかります。どれくらいの努力でしょうか?
AR: テクノロジーを変更できるその能力を持っている人は世界中でほとんどいません。

HG:どのような努力ですか。時間がかかるということですか。
AR: 何時間もかかります。図についてはさらに詳しく説明します。一日分の仕事になるでしょう。

HG: クレイグ博士のファイルをどのようにコンパイルするか尋ねられました。 Orr氏によれば、TechLiveディストリビューションは影響を与える可能性があるという。
AR: はい。

HG: 出力が大幅に向上した例を誰かが示したことがありますか?
AR: いいえ。

HG: このコンピレーションを参照してください
AR: [笑い]

HG:コンパイルにおけるディストリビューションの違いは何だと思いますか?
AR:非常に最小限のものになるでしょう。

HG: 彼らはその違いを説明できるでしょうか?
AR: そうは思いません。

HG: Times New Romanを使用するためにクレイグ博士がLaTexをカスタマイズした可能性はありますか?
AR: カスタマイズするには数週間かかります。

ML: 私(メラー裁判長)から一つだけ質問です。Times New Romanフォントを使うカスタム設定をクレイグ博士が使っていたとしたら、あなたが分析したものにその痕跡は残りますか。
AR: そうは思いません。

ML:本日は以上です。

4.本日の結論。
上の尋問にあるように、ローゼンダール氏の再現環境はクレイグ博士とまったく同じ環境ではありませんでした。

また尋問の中ではTimes New Romanフォントの話が出てきていますが、これは実は2008年当時でもカスタムオプションで利用することは容易であったことがわかりました。こちらは、2005年当時にわずか10行くらいのコマンドでTimes New RomanフォントをLaTexで使えるようにするやり方が紹介されています。つまり、ローゼンダール氏は間違っているのです。

前回の私の記事では、クレイグ博士とShoosmith弁護士事務所はLaTexからPDFには変換できるが、PDFからLaTexにリバースエンジニアリングすることは実質的には不可能だと言われています。それはステガノグラフィーなども入れ込んでいて、それは古典力学の「三体問題」に似ており、少しでもずれると全く同一にはならないそうです。(いちいちむずかしいww。)

最後に、このLaTexファイルを証拠資料として提出するにあたって、なぜか、当時のクレイグ博士の弁護士事務所(Ontier)が反対していました。このような不審な動きが理由でOntierから現在のShoosmithに弁護士事務所が変更になりました。

また、メラー判事もLaTexの証拠資料(Additional Documents)として受け付けることについてこのような発言をされています。

「162: COPAとCoreDev達陣営が書面と口頭で、追加書類を除外するよう私を説得す るために相当な努力をしたことは事実であり、しかし、その努力は失敗に終わった。」

https://www.bailii.org/ew/cases/EWHC/Ch/2023/3287.html

本日は以上です。

参考資料:


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