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初マカオ見参なり 前編

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ジャジャーン!!!
不肖けんさわ、ついにとうとう、そしてやっと!ですね。。
第66回を数えるマカオグランプリに行って来ました。

『Le Mansとマカオは老後の楽しみに取っておく』って現役時代から言っていて、息子も社会に出て自分にかかる負担も減ったので、老後の楽しみモードスイッチオン!ってワケなのですねwww

この度のマカオ行きは、マカオ在住日本人のレーシングマネジメント関係者の招きで、何から何までお世話になりました。この場で最初に御礼申し上げます。

んで、マカオです。
いんやあ、世界中のF1レース開催国を訪問して来た僕ですけど、マカオはまたいろんな意味で刺激的でしたねー。

ご存知の通りマカオは、ポルトガルから返還されて現在は中国の一国二制度が適用された特別行政区で、同じような境遇の香港が民主化と中国共産主義との狭間で大動乱になっていますけどその隣の地域。
海を隔てて5〜60キロしか離れていないので日本を出るときには皆さんに心配されて来たんですけど、マカオは別世界でした。
「香港の次は台湾かマカオだと思うから油断はしていません」と現地の方々は異口同音に言いますが、同時に「マカオは中国とうまく距離感取ってやっている。何しろカジノ利益の運用が上手いし、政治的にも敵対しないように立ち回ってるからね」とのことで、香港を気にしつつ独自の道を行く決意があるんでしょうね。中国からの密入国者の取り締まりも厳しく行っていて、元々中国と混在一体の香港とは違うのもあるでしょう。
新宿区程度の広さに約64万人の住人で、香港や中国沿岸部のような高人口密度を想像していた僕には驚きのゆったり生活が行われていて、なんか住みたいくらいでしたよ。

マカオへは札幌新千歳空港から香港までが約5時間。そこからバスで1時間ほどです。
僕の感覚としては「ひょいと」飛んで行って来ました。



さて、さて、さてさてw
マカオに入りまして、メディア手続きや座席やロッカーの手続きを済ませて、コースを下見に向かいました。
案内してくれたのは、マカオ在住の新進カメラマンの若者トニーさん。
彼の車でコースインです。

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一般道を閉鎖して使用する公道サーキット。
僕はモナコとポー始め沢山の公道サーキットレースの取材経験があります。
それにマカオは媒体を通じて長年見て来ていました。

山側は狭いよーって聞いてました
登り下り凄いよおって聞いてました。
荒い舗装、バンピー、アンジュレーション、全て聞いてました、

け、ど、、、

想像を、絶 し て た ー !!!!

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モナコ、マカオ、ポーの3カ所を「クルクル(パー)サーキット」と個人的に呼ばせてもらいます。

が、
マカオはその中でも別格だわあ。

マカオで、若者のレースであるF3を開催する。
その意味を深く考えるレイアウトだったなあ。

パーマネントサーキットで速い、強い、巧いってことを証明してシーズンを終えて、それからアジアのマカオに来て公道レースに参戦する意味。
それは、強さ、速さ、巧さを超えた「格」みたいなものがマカオで勝つことで証明できるんだと思います。それだけのコースレイアウトだった。

正直言って、僕はシビレました。
マカオのコースの虜になりましたよ。

非常に狭い山側の市街地は、狭いって聞いてたけどさ、あれって実際に見るまで考えていた狭さとは質が違った。言葉にすると先人たちが書いて来た通り「連続するブラインドコーナーを圧倒的に狭いコース幅のまま突っ走る」んだけど、レベルがね。想像超えてた。
初参戦ドライバーには厳しいと言われる所以なんだけど、今年のウイナーは初参戦のリチャードですからね、まさに格を示したよねー。

そしてそのコースでは、朝から晩までレースが続き、F3とツーリングカーにGTに二輪がバンバン走っちゃうんだから、羨ましいやら憧れやら尊敬やら驚愕やら、そんな言葉を繰り返し脳内再生していた僕でした。



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昼間出会ったプレマの選手の下見。きっちりタブレット片手にエンジニアやアドバイザーと一緒にノウハウ伝授すね。土曜の22時過ぎに先輩ドライバーに連れられてコース下見に出て行ったドライバーもいましたよ。難コースだけに、下見も念入りに。


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わしはリスボアコーナーで撃沈www






育成って?

今回マカオでの主たる取材対象としたのがFIA-F3です。
昨年まで GP3 と呼ばれていたカテゴリーが、今年から装いも新たに FIA-F3として欧州を中心にシリーズが行われました。
F1を目指す若者の登竜門として行われているカテゴリーですから、育成選手達が多数参加していて、マカオを見れば各社の育成状況が垣間見れるというわけです。

フェラーリドライバーアカデミー(FDA)
ザウバーJr.
レッドブルジュニアチーム
メルセデス

等々が見込みのある若手ドライバーを傘下に置き育成し、将来のF1ドライバーとなるべき才能を見極めているんですよね。

我らが日本勢では、ホンダが角田選手を育成ドライバーとしています。

以前から日本の育成に多少疑問を持っている僕は、10年ぶりにレース取材に出るにあたり世界の若手ドライバー育成状況を見たいという目的を持ってマカオ入りしました。

今回招いてくれた方が、プレマレーシング始め若手育成にも詳しい方でしたので、さまざまに聞きながら、実際に目にして、いろいろ感じて来たわけです。

そもそもで言いますと、僕が若手ドライバーの育成に目を向けたきっかけは、 ARTAでした。
元F1ドライバーの鈴木亜久里氏が主宰するアレです。
ホンダ系育成ドライバーのうち、カート時代からARTAが目を掛け、 SRS-Fに進めてスカラシップを獲ってフォーミュラに進むという流れをずっと見て来ました。
僕自身も北海道でARTAの事務局みたいなことをしていた時期もありましたし、その関係で育成途上のたくさんの若手ドライバーとも交流して来ました。

次に、2000年にツインリンクもてぎで行われた CIK/FIA ワールドカップカートで目撃したマクラーレンの育成ドライバーであったルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグの存在もあります。
当時、まだ幼かった二人のドライバーに育成の方針に則り行われていたプログラムの説明を聞いたのです。


「完成したプロフェッショナルなドライバーとして育てるために、カート時代からきちんとした先を見据えたトレーニングプログラムをこなしてもらう。フィジカルはもちろん、レース戦術やマナー、そしてメディア対応などのメニューもある。彼らには必ず成功して欲しいからだ」

この言葉が強烈に印象に残っています。
それを聞いたのが2000年のことですから19年前です。
ご存知の通り、二人はその後見事にF1世界チャンピオンになったのですから、当時のマクラーレンの育成が素晴らしかったことに異論はないでしょう。
そして、そう言った最先端の育成プログラムが結果を残したことで、多数のメーカーが育成を追従したとも言えると思います。

マカオで見て来たのは、やはり欧州の育成はしっかりしてるな、ってこと。

まずフィジカル。
育成に選ばれた時点で、そのドライバーが速いことは当然で、それプラス何を身につけてもらうか、なんですけど。フィジカルに関しては「次のカテゴリーで必要な体力を備える」というのが基本です。
フィジカルて言うと体力ってイメージすると思うんですけど、レーシングドライバーに必要なフィジカルは体力だけではありません。
もちろん体力は重要な育成項目の一つで、最大酸素摂取量を高めてレース中の心拍数を低く保つことで脳の酸欠を防ぐとか、Gモーメントに負けない体を作るとかは基本中の基本です。
F3とその上のF2さらにF1ではダウンフォースも桁違いで体に掛かる負担も増大しますから、F3時代にF2の体力を備えていつでも上に乗れる体を準備すれば、F3でいっぱいいっぱいってことはありませんから。

さらに、準備体操を見ていても解る事なんですけど、目から入る情報を体に伝える神経の能力向上に時間使ってましたよ。
視線からの複数の入力に対して、的確な判断を瞬時に行い手足に伝える能力は、クルマに乗って慣れで身に付けるレベルではなくてトレーニングして高めていくことで数値化したデータとなり育成に役立てることができるのですね。

またウオーミングアップも、先端のドライバーはトレーナーを雇って行なっていて、F3ドライバーが一昔前のF1ドライバー並みのプログラムを行なっていて驚きました。
あれって、かつてミハエル・シューマッハがF1に導入したんだったと思いましたが、時代は進んでるんですねー。

シューマッハは、レースに役立つことは何でも摂り入れるタイプの先人で、かつては専用のトレーニングジムを積んだトレーラーまで同行していたんですけど、流石にF3でそれは見なかったなwww
(かつてイチローがそんなの使ってましたよね)


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トレーナーと共に走行前のウオーミングアップをして、必要な筋肉と神経を目覚めさせます。一般のストレッチとはレベルが違います。




また、メディア対応にも感心しました。
指導を受けているのか自然なのかは聞けませんでしたが、18〜19歳の若者がまあしっかりしていた。
スポンサーに支えられて行うプロのレーシングに於いて、ドライバーの印象ってとても大切で、先に触れたマクラーレンの育成では中学年代の彼らにもメディア対応プログラムを課していたわけです。

プレマのドライバーの記者会見。
各セッション後のプレス対応。
公式記者会見での受け答え。


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コメントしているカメラの向こうにはたくさんのファンとスポンサーがいると言う意識ですね。

世界に配信されるそうした映像が、スポンサーやファンやメディア関係者に届くワケですから、どの受け答えも世界を向いて行うのは当然。
そしてF3でも世界で活躍するドライバーならそれができて当然なんだな、って感じましたよ。

そう言えば、テニスの錦織圭選手が所属するIMGアカデミーでもメディア対応教育が行われてるらしいんだけど、IMG出身選手は受け答えがスマートすぎてメディアに人気ないって聞いたことがありましが、そのくらいプロには必須なスキルってことでしょうね。

プロがプロを育てる環境。
それが必要なら取り入れていく貪欲さ。
そして成功すると大きなマネーを手にすることができるマーケット。

チーム内の風通しの良さそうなところとか。

ドライバーがガレージにいつもいて、チームとのコミュニケーションを大切にしている姿とか。

全てが羨ましく思えてならないマカオでの育成を見ての感想でした。


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次回は、じゃあ日本の育成って?




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