データと申請事例からみる採択へのヒント

1.ファクトデータをつかめ!

スポーツ競技でも科研申請でも、期待する結果を得るためには、まず敵を知り、データに基づいた分析がものを言います。そこで、昨年度の科研費採択状況に関するデータを眺めながら、攻略するヒントを探ってみたいと思います。
 まずは、表1~表3までの研究機関別、研究種目別の応募数、採択件数、採択率等の一覧をご覧ください。
 研究機関別では、筑波大学は全体の8番目にランクインしているわけですが、上位にはいわゆる旧七帝大がずらりとラインナップしおり、旧帝大の研究力の強さが科研費採択データから見て取れます(表1参照)。
 次に研究種目別に見ると、採択率に関しては、若手研究が約40%と高く、次いで研究活動スタート支援が38.4%で続き、その後は基盤C(29.2%)、基盤B(29%)、基盤A(27%)が30%弱の採択率となっています。そして、最も採択率の低いのが、挑戦的研究であり、萌芽が15.9%、開拓が10.7%と狭き門となっています(表2参照)。
 さらに筑波大学体育系にフォーカスして、応募数、採択数、採択率についてみると、最も応募件数が多いのが、基盤C(37件)で、次いで若手研究(24件)となり、この2つの研究種目で全体の応募数(90件)の過半を占めています。一方、採択数で見ると、基盤Cも若手研究も同数の9件であり、採択率は、基盤Cが24.3%、若手研究が37.5%となり、スポーツ科学関連の平均採択率よりやや見劣りする状況にあります(表3参照)。

表1 研究機関別採択件数・配分一覧(令和3年度)

筑波大学の採択件数(新規+継続)は全研究機関の中で8番目。新規採択率は30.0%。

表2 研究種目・区分別応募数、採択件数、採択率等一覧

最も採択率が高いのは若手研究で約40%、続いて基盤研究(C)で約30%程度。

表3 体育系の応募数、採択件数、採択率等一覧

体育系の新規採択率をみると基盤Bでは健闘しているものの、基盤Cや若手研究では見劣りする。

 全体の傾向は上記のデータからある程度つかめたわけですが、ではこれらのデータを元に申請者各個人はどのような戦略を立てるべきでしょうか?
 一つの攻略ポイントは、より採択率の高い種目を狙うことにあると思います。となれば、最も採択率の高いのは若手研究ですが、中には「私はもう若手ではない」と思い込んでいらっしゃる方もいるのではないでしょうか?従来は、年齢による制限がありましたが、現在は「博士の学位取得後8年未満の研究者が一人で行う研究」となっており、過去8年以内に学位を取得された方であれば、応募する資格があるので、年齢に関係なく該当者はぜひ狙っていただきたと思います。そして、若手研究に応募される際には、ぜひ角川先生の解説を参考にしてみてください。
 次に、あえて重複申請狙いで挑戦的研究に応募する方を除けば、挑戦的研究はかなり狭き門ですので、挑戦的研究を避けて、基盤Bや基盤Cにエントリーされる方が、採択される確率は上がるものと思われます。そして、基盤Bや基盤Cに応募される場合には、坂入先生の解説をぜひ参考にしてみてください。

2.申請事例から学ぶ

 申請書作成の要領については、既に角川先生坂入先生による詳細な解説がされていますので、そちらを参照いただくとして、実際に申請書を作成する段になって、なかなか具体的なイメージが湧きにくいという方もいらっしゃると思いますので、ここで申請書の作成事例をご紹介したいと思います。
 2つの申請書は、いずれも私が作成したもので、2019年に挑戦的研究(萌芽)に応募して不採択となった事例と、2021年にふたたび挑戦的研究(萌芽)に応募して採択された事例となっております。自分の恥を晒すようで、気が引けるのですが、少しでも皆さんのお役に立てばと思い、提示させていただきました。
 今読み返すと、不採択となった申請書は、いかにもやっつけで、とりあえず体裁を整えて提出したというのが見え見えです。審査員の目を引こうと、「新しいことにチャレンジします」と書いてはいるものの、具体的な研究方法や期待される効果などがきちんと記載されおらず、これでは採択されないのは当然ですね。
 不採択の結果を受けて、その後ちょっとまじめに研究計画の練り直し、共同研究者などとも打合せをして、捲土重来を期して、再度挑戦しました。特に①本研究の目的のパートは入念に推敲したつもりです。坂入先生がおっしゃっているように、審査員は忙しい中、たくさんの申請書に目を通さなくてはならないので、最初のページを一読して、まず大まかな優劣をつけます。よって、つかみがとても大切となります。また角川先生が指摘されるように見た目の分かりやすさや体裁にも気を配ったつもりです。
 もちろん、これがベストと言えるような代物ではありませんが、審査員は坂入先生や角川先生の指摘されたポイントちゃんと見ているという証左ともいえるかもしれません。
 

3.ネット上の有益情報を活用せよ!

 「科研費申請」とタイピングして検索すると、関連する情報がごまんと提示されます。その中で、私が役に立ちそうだなと思たのが以下のサイトです。
科研費.com

特に使えそうなテンプレートがいくつか用意されていますので、なんかとっかかりを作りたいと思われる方は、活用されてみてはいかがでしょうか?
科研費.com式「なにどこテンプレート」

そこそこの申請書が書けるテンプレート


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?