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『英文解体新書2:シャーロック・ホームズから始める英文解釈』「はじめに」より(北村一真)

 シャーロック・ホームズと言えば、その名を知らない人はまずいない探偵キャラクターの代表格です。ホームズ関連の書籍も多種多様で、導入書から大部の図鑑にいたるまで枚挙にいとまがありません。その中には英語学習を意識した対訳本の類も数多く存在しますが、原典の英語の文章を語句や構文のレベルからしっかりと解説したものは意外にも少なく、よい英文解釈の素材になるのに惜しいなあ、という気持ちを常々抱いていました。私にとってホームズとの本格的な出会いのきっかけは語学でした。学生時代に英語で何か物語を読もうと思い、手に取った洋書の中の一冊がコナン・ドイルの短編集だったのです。誰もが知る作品を読むことで自分の力が実用に足るものかどうか確認したいという気持ちもあったのかもしれません。いずれにせよ、英語を通じてホームズと触れ合う中であることに気がつきました。それは、ホームズ作品が大学受験レベルをクリアした人にとって一歩上を目指して取り組むのに丁度よい英文で書かれているということです。受験単語をしっかりマスターしていれば何とか挑戦できる語の難度である一方、重要な表現がこれでもかと散りばめられているので、文法や構文の理解を確認しつつ精読していくのに極めて効果的な素材になっているのです。

 本書はその素材を活かしたいという思いで執筆したものであり、いわゆる対訳本の形は採っていません。むしろ、ホームズ作品を用いた英文解釈の参考書と言ったほうがしっくりきます。想定している読者も必ずしもホームズのファンの方だけでなく、大学受験レベルより上の英文解釈力を身につけたいという方、近代後期の英語の文章をしっかりと読んでみたい方一般が対象です。

 構成に関して言うと、1~3 章でホームズの登場する長編、短編作品を、4章でドイルによるチャレンジャー教授のSF シリーズを、そして、最終章でエドガー・アラン・ポーや H. G. ウェルズなど知名度の高い他の英米作家の冒険小説を扱うというものになっています。前半のホームズ作品については、長編(1 章)と短編(2~3 章)という大きな区分はあるものの、それ以外は知名度や難度など、主に英文解釈の素材としての取り組みやすさを意識して配置しました。後半でホームズ以外の作品を採用しているのも、前半で鍛えた力を活かしてさらに多彩かつ難度の高い英文に取り組んでいけるような構成を意図したためです。やはり中上級者が対象の本ですので、こうでなければならないという決まった読み方はありませんが、英文は後の章になるにつれて少しずつ難しくなる傾向があり、また、後半には前半の復習を意図した箇所も含まれているので、前から順番に取り組んでいくのがスムーズではないかと思います。

『英文解体新書2:シャーロック・ホームズから始める英文解釈』

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