十九作目 菓子と紅茶とモーツァルト 第四回百合文芸小説コンテスト応募作 一
一 舞姫
散乱する花々の上を、ひとりの女が踊る。
フィガロの結婚に合わせて、ファーストフラッシュの香りを振りまいて。
その姿は自由。身に纏う物もない、まるで月夜の妖精のよう。
白肌は暗闇の中でただ輝き。
月明かりがその純な桃色の女らしさを見せる。
足には赤い靴。
鮮血のような紅色は、乾いた花々を踏み荒らしていく。
それは私の記憶。過去の女たち。
無邪気な表情は、私に甘えていた頃のミルクの香りのする君と変わらない。
そう、あの頃の始まりの君と。
二 とあ