隔離期間とホームステイまとめ参 熱波事件

ホームステイを語る上で欠かせないのが六月の下旬、バンクーバーを襲った熱波である。この熱波は過去類を見ないほど強烈なものだったようで、熱波による死者は200人を超え、冷房設備のあるホテルは軒並み満室だったという。それに伴い大規模な山火事が発生したり世界最高気温ランキング上位に突如食い込んだりなど、世界を騒がせた大事件だった。そんなバンクーバーで生活を始めていた僕も当然その熱波の被害者となった。

その頃には時差ぼけも幾分かましになり、オンライン授業に出席していた。授業中は特にドアを閉めているので熱気がこもり暑くなるので、また熱がこもって暑いなくらいの認識でしかなかったが、その日は明らかにおかしかった。普段ならドアを開ければ廊下はある程度涼しいのだが、全く温度が変わらない。何事だと思い検索するとカナダで記録的な熱波、死者多数という見出しが飛び込んできた。カナダは年間を通してあまり暑くなく、冷房のついている家はほぼないため死者が出たのだという。

僕の部屋も例に漏れず冷房はおろか扇風機すらなく、半死半生の状態が続いていた。さすがに我慢の限界を迎え、ホストマザーにせめて扇風機を貸してくださいと懇願したが、2階の方が暑いから我慢しろと一蹴された。しかし我慢の限界はとうに超えており、再三の要求で一日一度のシャワーが今回に限り無制限になるという程度まで妥協させた。

焼け石に水とはこのことで、いくら冷水を浴びたとて、ものの15分で汗は噴き出し30分で我慢の限界を迎え、またシャワーを浴びるの繰り返しだった。これを学校のホームステイ担当に相談したが、自分で扇風機でも買え、こちらからは何もできないと突っぱねられ(当時まだ隔離中のため買い物などもってのほかだし引っ越しの時にかさばるものは買えなかった)退去を早めることを決断した。

そんな調子で扇風機すらなかった訳だが、転換期を迎える。忘れもしない熱波最終日の夜、シャワーを浴びている間にホストマザーが僕の部屋の中に扇風機を置き手紙とともに置いていったのである。これまた焼け石の水で、熱波最終日の夜かつその手紙には「電気代がかかるからそんなに使うな」の一言が添えられていた。貸さないよりはましだが、あまり使うなの文言と終わってから貸しに来る姿勢に憤りを隠せなかった。

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