「流れに従って生きる」ーCホーム編ーACT42:営業マンMさんの栄枯盛衰
見積金額がおかしい・・という事情で契約白紙となりで、いつも悪者にさせられた営業マンMさんがいます。
全く契約できず首寸前の状態でした。
原因がその営業マンMさんではないのですが、いつも、この施工面積と延べ床面積の計算違いのからくりに気づかない設計部・積算部のミスを、営業Mさんの失敗にカウントされるのでした。
積算・設計部長からは「おいM~,おめぇもあと2~3ヶ月で契約上げないと肩がたたかれるぞ」と脅かされて、Mさんは死に体の状態でした。
そんなMさんにラストチャンスが訪れました。
新しい契約可能性のあるお客様が現れたのです。
しかし、これと同時に・・
Mさんには「この案件を契約できなければ退社」・・
ということも告げられました。
営業マンMさんの覚醒
設計部に不信感をいだいていた営業マンMさんは、私に同行営業を依頼してきました。
私は・・・「ん・・? もしかして、これは、面白いかも」・・
と直感で思い手伝うことを快諾しました。
営業マンMさんは 人あたり や 会話の仕方 は 営業向きなのです。
首寸前のMさんをすご腕営業マンにできるかなぁ・・という面白い目標ができたのでした。
1人を育てて結果が出れば、おのずと他の人も私の話を聞いてくれるようになるだろう・・という思いもありました。
その日から、私と営業マンMさんの個人勉強会が始まりました。
営業に行ったとき、何と何を説明して、どういう手順でCホームの家づくりを理解してもらうか・・。
営業ツールをどういうのを用意してどのように使うか・・。
契約までの流れをイメージできるように説明しました。
そして、お客様のご自宅に訪問したという想定での模擬会話の練習も何度も繰り返しました。
営業マンMさんは、徐々にやれそうな気持ちになって、顔つきが変わってきました。
それは見てはっきりわかるほどでした。
そんなときはうまくいくものです。
数回の同行営業と打ち合わせで、営業マンMさんは、初めて適正価格でお客様と契約をしたのです。
設計・積算部からも「無理のない金額」と言われ、当然喧嘩も起こりませんでした。
こういう現場は問題も起こりづらく、工事完成まで全てが丸くいきました。
契約の夜は、営業マンMと飲みに行きました。
そして、営業の方法の深い部分や、その大切な点を話しました。
一番は、適正価格で契約することが会社のためでもあるが、実は、お客様の家づくりのためにもなることを話しました。
過度に値引きした物件は、現場レベルでいろいろ抜かれてしまい、結局、お客様が損してしまう。
下請け業者も叩かれて発注されるので、その現場へ良いものを作ろうという業者さんの気持ちが抜かれてしまうことになる。
最後にはお金が無いので、現場担当が自分で作業し始めて混乱を極める。
だから、営業マンの契約する金額が、適正金額かそうでないかで、実は、その現場が荒れるかどうかが決まってしまう。
適正価格でなければ、絶対に現場は荒れる。
営業マンがスタート時点でその責任を意識してもらえば、その現場は丸く行くことが多い。
営業マンMさんの逆襲
この契約から、営業マンMさんの目の色は変わりました。
「営業の方法が分かった」と顔が自信に満ち溢れていました。
そして、おのずと結果がついてきたのです。
首の勧告を受けた営業マンMさんは、1年後には、Cホームのトップセールスマンになっていました。
過度な値引き癖が多少残っていたのが、「玉にきず」でしたが・・。
人間とは、面白いものです。
結果がついてこないときには、隅の方で肩を丸くして、肩をたたかれないかとビクビクしていたのに、トップセールスマンになった瞬間に、その肩で風を切って歩いていました。
馬鹿にされていた設計に対しては「ちゃんとかっこいい設計してくださいよ!」なんて茶化すほどでした。
営業マンMさんのつまづき
しかし、これまた人間とは面白いもので、調子に乗りすぎて肩で風を切って歩いていると・・つまづいて こけたりするものです。
営業マンMさんは、絶好調に浮ついて、とんでもない事をしでかしてしまい、どん底まで転げ落ち、2年後に会社を首になってしまいました。
この営業マンMさんを見て・・
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」ということを心しよう・・と思いました。
事実は小説よりも奇なり。
お天道様は見ています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?