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鯉の呼吸と循環について-7月の魚病対策-

鯉の鰓蓋をめくりますと赤く綺麗な鰓がみられます。ちょうど車のラジエーターのようなヒダ、つまり鰓弁が密に並んでいて、ここで外部の水と魚体とのガス交換(呼吸)が行われています。

口腔の加圧ポンプと鰓腔の吸引ポンプの一連の作業で引き起こされます。鰓弁の基部には外転筋と内転筋があり、口腔からくる水がくまなく二次鰓弁の網の目を抜けるように鰓弁の列の位置を調整し、二次鰓弁内の血液は上皮を隔てて流れる水とは逆方向に流れ、つまり対向流になるようになっていて、ガス交換の効率を高めています(図2、岩井)。

図2

水温24.5℃での口腔水の酸素分圧(PO2)が141.4±7.1mm Hgのとき、鰓腔水の分圧は36.9±13.8mm Hg、混合静脈血の酸素分圧は11.7±1.7mm Hgということで、常に二次鰓弁中の血液の酸素分圧が外を流れる水中の酸素分圧より低い状態であり、ガス交換がなされるわけです。

鯉の換水量は200ml〜590ml/min・kg(血流量22〜100ml/min・kg)で換水流比が6.9〜9.1とヒトに比べると大きく、効率が悪いことを示します。

つまり、水は空気の薬1/30しか酸素を含まないため、水を呼吸する魚は、空気を呼吸するヒトよりもはるかに多量の呼吸媒体(水)をガス交換面に流さなければならないわけです。つまり、ヒトの換気と魚の換水の効率にみられる大きな相違を規定する最大の要因は、呼吸媒体の酸素容量ということになります。

鯉の呼吸の特性として、動脈血酸素分圧がほかの魚より低い(ニジマスは85mm Hg)

したがって、混合静脈血の酸素分圧も低く11.7mm Hg (ニジマスは19mm Hg)ということで、鯉が低い動脈血酸素分圧でも健全に生活ができるためには、その血液の酸素親和性が高いだけでなく、酸素容量が十分な大きさであり、組織の炭酸ガス分圧PCO2条件で十分な酸素がヘモグロビンから解離されることを意味しており、鯉の生息する水域は比較的酸素欠乏にさらされやすく、異常の特性は、その生態に適したものと考えられます。鯉の最小必要分圧(水中)は70〜80mm Hg といわれます(板沢)。

魚類のヘモグロビンも哺乳類のヘモグロビンと同様、温度上昇により酸性親和性が低下し5月の魚病対策 図2、しかも水中溶存酸素量は温度に反比例して低下するので、水温上昇は魚にとって呼吸機能上二重の負担となります。ヘモグロビンとpHの関係については、血液のpHが低すぎると鰓の部分で酸素との結合が抑制され、酸素が豊富な水中でも激しい運動などで窒息状態になることもあり得るとしています(山口)。

水質が悪くなりますと、二次鰓弁の上皮の剥離や、細胞の肥厚-増生などが生じ、ガス交換の効率が低下すると言われています。

魚類の心臓は低温でも心拍数を増し、高温で収縮力を増すとされ、魚心にはアドレナリンが見出され、カテコールアミンが魚心の促進効果を持つとされ、鰓の血管を拡張し、大部血管を収縮するということです(羽生)。

※画像はイメージです。

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