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ボカコレで見つけた推し曲 #描いてみた 2020冬(3)

ごきげんよう!今日も元気なインターネット中年・賢ニです。前回・前々回に引き続き、ボカコレ2020冬の際に描いたイラストと、その曲の推しポイントをのせていきます。今回でラストです。過去2回の記事は下記リンクよりどうぞ。

11枚目 カルーアクラブ(Sabre)

私は酒を飲めませんが、過去、ほんの数年間の間お酒を飲んでいた時があります。私の飲むことができる、数少ないお酒でした。私は飲み会の席でみんなと一緒に酒を飲み交わしたくて、一人暮らしの部屋でちびちびと飲んでいたのです。その頃のことを思い出します。真夜中、カルーアをひとり口に含む、孤独でむなしく、贅沢なひととき。ある時間がくると、眠気とは違った気怠さが脳味噌を包み込み、気持ちいいんだか気持ち悪いんだか、分からないような気持ちになります。その、頭を誰かに抱えられたような不思議な感覚を、この曲は中盤あたりで、ぐにゃ〜んと描いていて、その頃のことを急激に思い出しました。という、私の思い出にぐいぐい入り込む不思議な曲。音がかわいくて、お洒落だけど、ぼんやりカルーアを飲みながら朝焼けを待つ、アンニュイで、それ以上でもそれ以下でもない「深夜未明」の空気を閉じ込めた、ほろ苦い世界が広がっています。甘いからって油断しちゃいけません。カルーアミルクのごとく。

12枚目 1000年生きてる(いよわ)

額縁の中で1000年生きている女の子が、人間の営みを眺めているのですが、曲のラスト「生き汚く生きて何かを創ったら/あなたの気持ちが1000年生きられるかもしれないから」で、彼女が単なる「意志を持った絵画」ではなく、1000年前の画家の「気持ち」そのものであると分かります。「見ててあげるわ楽しませて」「あなたの気持ちに賭けてみたいのさ」1000年前の画家が語りかけてきます。命は短く、きれいに生きることは難しいけれど、何かを創ってみたいと思うし、誰かが創ったものを見たいな、と思わせられます。私の好きな20世紀の画家、ピエール・ボナールが、最晩年に言葉をのこした言葉を思い出しました。

私の絵がひび割れずに残ることを願う。西暦2000年の若い画家たちのもとに、蝶の羽で舞い降りたい。

ボーカルが突然、不意にキーを下げるように歌ったり、中盤で雰囲気の違うパートが入ったり、音が気ままに楽しく展開していくのが楽しくて好きです。私は、聞き取れないほどの早口でなくとも、こんな風に楽譜を自在に行ったりきたりする様を聴くたびに「ボカロの歌だなあ」と感じます。

13枚目 枷(ホノ)

自分ではあまり意識をしてこなかったけれど、むしろ私はピコピコした電子音ミュージックが好きだと思ってきたのですが、どうやら思っていたより、私はロックが好きなようです。初音ミクは空っぽなので、歌詞の中に自分の気持ちをそっくり詰めてしまえるんですね。サビの開放感たるや、本当に私自身が手をひかれてどこかに連れていってくれるよう。しかしながら、曲のタイトルは「枷」。明日を捨てたところで、せいぜい寒い部屋で毛布を被ってぽつねんとするくらい。明日になればいつも通り、また数字を作りに会社へ行くだけです。でも、多分みんな、そうやって生きていくんですよね。その時心を支えるのは、音楽であったり、自身のイマジネーションであったりするのだ、と思い出します。メロディが本当に良くて、本当に本当に良くて、心が膨らむ感じがする。音楽の力だなあ。

14枚目 ばけばけばあっ!(夕立P)

いつも「僕」だけを怖がらせにくるおばけの曲。これ、テーマパークのハロウィンパレードっぽくて最高にアガるんですよね。(リンクは貼らないけど、2010年東京ディズニーランドスペシャルイベント「ディズニー・ハロウィーンストリート“ウェルカム・トゥ・スプーキーヴィル”」と似た雰囲気を感じる。え...10年前?)耳元で囁くセクシーな声、おどかしてくる「ああああああ」の声、悲鳴、「オバケ〜♪」のコーラスと、結月ゆかりの色々な声を堪能できて楽しい。極め付けは「ばけばけばあっ!」「ぐるぐるわっつ!?」という、愉快な造語!舞浜のパレードルートで聞きたーい!

15枚目 ことばのおばけがまどからみている(Frog96)

MVも絶対見てください。そしてイヤホンで聴いてください。UTAU処女作!?と驚いて、過去の創作物を拝見したのですが、その中にいくつも「あ?これ知ってる...」というバズ作品があり、あの人であったか!と膝を打ったのでした。

音楽やグラフィック、言葉を、自由に分解して遊ぶことができる人が選んだボーカロイドが、UTAUの重音テトだというのに妙に納得したのでした。左右から不思議なことばを囁きかける「ことばのおばけ」に、重音テトはしっくりきています。冒頭の電子音は、伝統芸能で人ならざるものが登場する予感を表現するか細い笛の音に似ていますし、途中で原稿用紙の文字が「?」に変わるタイミングがあるのですが、その時のゾワッとした感覚なんて、これはもうおばけ以外にありえないのです。原稿用紙のますの向こうに、おばけはいます。おばけの言葉を、あなたは理解できますか?本当に?その時、あなたは正気でしょうか。

16枚目 きみよみ(ゆくえわっと)

「ね おねがい かみさま あのひとをゆるして」の出だしでまず好き...機械仕掛けのような音があちこちから聞こえてきて、その隙間を縫うように、振り絞る女の子の声がする。この曲は、ずっとずっと「君よ、君よ」と呼びかけ続ける歌なんですよね。苦しい世界で、それでも手を取り合い生きていきたいと思っている。「伸びるこの手とつなぐその手は愛なのよ」という文言が好きすぎて、呪文のように頭の中で繰り返しています。にっちもさっちもいかなくなっても「君」との愛を信じて生きるのだ。とても小さな箱の中に、あらゆる職人の技術を仕込んだ、芸術品のような曲。何度も何度も、この曲の世界に入りたくて箱を開けては、毎度うちのめされています。

以上、ボカコレ期間に描いた16枚のイラストたちでした。私は本当に人の影響を受けやすいのですが、今回はボカコレ期間ニコニコ動画に満ちていた創作意欲の渦にまんまと感化された形で、描きたい絵がどんどん出てきて、とても楽しかったです。曲の作者に見つけて頂いて、直接「この曲が大好き」という気持ちを伝えられて幸せでした。環境にどんなに制限がかけられていても、人間のイマジネーションはとどまるところを知らない。ボーカロイドにその想いを託し、数多の曲が生まれた3日間。楽しかった〜!

期間中、Twitterを荒らしまくってすみません。...いつもか...。

賢二

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