『LEAP 〜ディスラプションを味方につける絶対王者の5原則』
ハワード・ユー著 「LEAP 〜ディスラプションを味方につける絶対王者の5原則」
「どんな競争優位性も一過性のものだ(ナレッジ・ファネル)」という前提のもと、長く勝ち続ける企業は、自社の基盤となっている知識(ナレッジ)とその賞味期限を客観的に評価した上で、時に自社の製品にとって替わるような新たなナレッジ分野へのリープを繰り返している、ということがノバルティス、P&G、IBM、アップルなどの事例をもとに解説されています。
筆者は、新たなナレッジ分野へのリープを、
①ノバルティスが長年にわたって有機化学→微生物学→遺伝子学 と基盤となるナレッジをシフトしたことによって生まれたグリベック(慢性骨髄性白血病治療薬)
②P&Gが石鹸を大量生産するオートメーション(機械工学)から消費者心理学をもとにした広告・マーケティングの内製によってコモディティ化による価格競争から脱したこと
を例に挙げて説き、これらが時に自社の既存製品の市場にとって替わる(=セルフカニバリゼーション)ことに躊躇してはならないということを、合成洗剤を開発したP&Gが「この商品が(自社の)石鹸事業を滅ぼすかもしれない。しかしどうせ滅ぼされるならP&Gに滅ぼされるほうがいい」と商品化を意思決定した象徴的な例によって主張しています。
どうすればリープを起こすことができるかについては残念ながらさほどの頁が割かれていませんが、「未来を大胆に推測すること」「大胆な意思決定を可能にするために”見えていない部分“をなくすこと(実験を繰り返す、トップの介入)」の重要性を繰り返し述べるとともに、AIなどのテクノロジーが人間の居場所を奪うという消極的な議論を止め、積極的に活用すべきだとも強く主張しています。
そして個人的には、筆者が本書を通じて最も主張したいこととは「AIや自動化は決して人間の役割を奪わない」ということなのではないかと感じました。
だからこそ企業幹部は、ヒトがAIに代替されないクリエイティビティを発揮し得る組織や風土を作らなければならないということこそ、本書全般に通底する筆者からのメッセージなのです。
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