『モジャ』という映画について(『未知との交流』のうちの一話)


12月3日(土)公開の『宇賀那健一監督短編集 未知との交流』の2本目は『モジャ』という作品です。
僕の過去作品『転がるビー玉』でご一緒したカエルムさんと何か新しい作品を作ろうという話になり、プロデューサーの戸川さんとAPの比嘉さんと色々と練りながら作品を紡ぎあげていきました。

撮影が行われたのは2021年の11月。企画を始めたのは初夏くらいだったかと思う。
長引くパンデミックによって、打ち合わせも何もかもがオンラインになる中、直接対面しての「対話」の重要性をひしひしと感じていた時期でもあった。そして、同時に『異物-完全版-』と『往訪』という作品が海外で想像以上の反響をもらい、映画はアクションであるということを再確認したのだが、それと同時に、だからこそ「会話劇」で海外に通じる作品を作りたいという野心にも駆られていた。

では「対話」とはなんだろう。と考えた際に、僕なりの結論は「聞くこと」だった。
誰かになにかを言ってほしいというより、重要なのは誰かになにかを聞いてもらうことなのではないかと考えたのだ。
そして、誰かに何かを聞いてもらう際は知らない人に聞いてもらう方が、気が楽なときだってある。それがもし人間をよく知らないエイリアンだったら「人間とは」ということも浮き彫りに出来るかもしれない。そうして企画が練りあがっていく中、プロデューサーでもある戸川さんにデザインをお願いして出来上がった可愛いエイリアンがモジャである。

『異物-完全版』と『往訪』を経てアナログの撮影の楽しさと重要性を感じていた僕が今回挑戦したのはパペットだった。小さい頃に観ていたセサミストリートのような手触り。それがこの作品によく合うのではないかと思ったのだ。

キャストは馴染みのメンバーに集まっていただいた。
主演には(まだ発表されていないけれど)僕の新作に出演してくださっている兵頭功海さん。
その現場で「絶対にまた一緒にやろう」と話していたが、有難いことにすぐ実現することが出来た。セイヤという狂おしいほどの愛を抱いた純粋な青年は、本人の現場の居方も芝居も圧倒的に純粋な兵頭くん以外に考えられなかった。

アキ役には『異物-完全版-』主演の小出薫さんに出演していただいた。『異物-完全版-』では主演でありながらほぼ台詞がなかったので、今回は長台詞の長回しに挑戦していただいた。

ヒサオ役には『サラバ静寂』の工場長役、内木英二さんに出演していただいた。内木さんは21年ほど前に僕が役者として初めて出演させていただいた舞台にも出演していて、それからずっと良くしていただいている。内木さんの全てを包み込むような優しい芝居がこの
映画には必須だったと思う。

最後のピースはモジャ役の関本巧文さんである。ワークショップで本作の台本をやった際にすごく良くて、且つ本人も出演を熱望してくれて実現した。現場では関本君は全身ブルータイツでパペットを動かしながら声を出すというかなり難しいミッションを実現してくれた。

この映画全体のトーンは僕ではなくて俳優部を筆頭としたチームが作ってくれた。それくらい最高の、そして最高に優しいチームだった。

余談ではあるが、本作はロケ地の一ヶ所が僕の実家である。
たまたまもう一つのロケ地から近かったということもあるが、皆でうちのばあちゃんが張り切って作りすぎてカレーとお赤飯と豚汁を食べたというのは個人的にもとても忘れがたい出来事だった。

モントリオール・ヌーヴォー・シネマ映画祭で僕の特集上映を行っていただいた際はモジャも連れて行ったのだが、それはそれは大人気だった。そして、とても印象的だったのは脚本上では一切説明していない、モジャの地球に来た目的についてお客さんが皆分かっていたことである。日本のお客さんにはどう映るだろう?早く皆さんに観ていただきたい。

12月3日(土)の初日舞台挨拶には『モジャ』からは兵頭功海さんが登壇。
12月5日(月)の上映後には『モジャ』チームのキャスト全員(兵頭功海さん、小出薫さん、内木英二さん、関本巧文さん)にてトークを行います。
池袋シネマ・ロサにて感想を聞かせてもらえたらとても嬉しいです。


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