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奈良県下市町「KITO」の廃校利活用 行政視察

1. 視察の概要

【視察日】2024年8月20日(火)
【視察場所】奈良県下市町「KITO」
【目的】廃校となった施設の地域活性化・利活用事例を学び、今後の千葉県銚子市での廃校活用施策に反映するため。
【背景】人口4,500人を割っている。町内には小中一貫校が1校。

2. KITOの概要
施設概要
 奈良県下市町に位置する「KITO」は、かつての小学校の校舎を利用し、新たな地域コミュニティの拠点として再生された施設。地元住民の交流や外部からの観光客誘致、企業やアーティストとのコラボレーションを積極的に行っている。

主要な活用分野
1. 観光と宿泊施設
校舎の一部を宿泊施設に転換し、自然体験や地域の文化を学べるアクティビティを提供。地元の食材を使ったレストランも併設し、観光客を引き込んでいる。

2. コワーキングスペース
デジタルノマドや企業向けにコワーキングスペースを提供し、地域外からのビジネス人材を取り込んでいる。

3.地域住民との連携イベント
地元住民との交流を目的としたワークショップやマーケット、季節ごとのフェスティバルが定期的に開催されている。

4.芸術・文化活動の拠点
廃校の教室をギャラリーやアトリエとして活用し、アーティストやクリエイターが活動できる環境を提供。

3. 視察の成果
地域住民との一体感
…KITOの成功の鍵は、地域住民との密接な連携にあると感じられた。地域住民が主体的に施設の運営に参加し、自分たちの拠点として愛着を持っている点が印象的だった。下市町元気印集落事業として、将来をイメージしながら、住民が自ら考え行動することを応援する事業をスタートした。

地域外からの資源の取り込み…観光客や外部企業を積極的に受け入れる仕組みが整っており、地域経済の活性化に繋がっている。特にコワーキングスペースの利用者が地域に一時的に滞在することで、地域に経済的な循環が生まれている。その他、KITOに限らず町の20万円の支援事業では、地域で話し合い試行錯誤しながら、移住促進ゲストハウス「山桜」(使われなくなった集会場を有効活用)自治会が運営するゲストハウスとして補助金を支給され全国初スタートさせた。その後、草谷地域「風の谷」人口22人でスタート。平原地域「薬膳とハーブの里」(人口71人)をスタート。町民が作る地元食材を使ったピザハウスが好評で他の地域から食べに来る方が行列を作るほどだそうです。また耕作放棄地を使ったハーブの生産を行い、新たな特産品としてハーブティーの加工販売も行い。収益事業も行う。

柔軟な施設活用…宿泊施設、コワーキング、アートスペースなど、多様なニーズに応じた空間の活用方法が取り入れられており、単なる「廃校再利用」ではなく、時代に合ったマルチユースな施設として機能している点が重要。

4. 千葉県銚子市での廃校利活用への応用
今回のKITO視察から得られた知見は、銚子市での廃校利活用施策において非常に有用であると考えられる。以下の具体的な施策を提案する。

地域住民参加型の運営モデル…地域住民が自らの拠点として活用できる仕組み作りが鍵。住民が主体的に運営に関わることで、施設に対する愛着や責任感が生まれ、持続可能な利活用が可能になる。しかしながら、そこに収益性を持たせなければ、結局行政の持ち出しが発生する。それを最小限に抑えるためにも、住民に修正のある事業を行ってもらうということが必要。

観光資源との連携強化…銚子市の自然や文化を活かし、観光資源と結びつけた宿泊施設やアクティビティを提供。観光客が地域の魅力を体験できる環境を整備する。

外部からの人材・資源の誘致…コワーキングスペースの導入など、外部からのビジネス人材やクリエイターを誘致する施策を検討。銚子市ならではの強みを活かし、地域外の資源を取り込むことで地域の活性化を図る。

5. 結論
奈良県下市町のKITOは、廃校利活用の成功例として非常に参考になる事例であった。特に、地域住民との協力や観光資源との連携、外部資源の誘致といった多面的なアプローチが銚子市でも有効に活用できると考えられる。また補助金の有効活用に始まり、地域住民と連携し、その場で収益事業を地域住民がスタートさせていることに驚きました。また廃校になった小学校も「下市町賑わい創出協議会」を立ち上げ(構成は住民、事業者、職員)協力し合い取り組んでいました。下市を自慢したくなる、下市に行きたい、下市の人と関わりたい、下市で働きたい、下市に移住してみたいという人を増やす。をスローガンに関係人口を増やし、さらに身近に感じる町へ魅力度を高める取り組みを町民と一緒になって取り組んでいました。結果、下市町では現在、未利用財産については1施設で、それも利用方法は決まっているとの事でした。銚子市の廃校利活用プロジェクトにおいても、これらの要素を積極的に取り入れ、地域の持続的な発展に寄与する施策を展開していくことが重要である。

ちなみに日本全国の廃校利用で多い事例には、以下のような活用方法があります。

1. 観光施設や宿泊施設
廃校を観光資源として活用する例が増えています。特に、自然環境に恵まれた地域では、校舎をリノベーションして宿泊施設やキャンプ場として利用するケースが多いです。観光客が地元の文化や自然を体験できる場所として、廃校が再利用されています。
例)北海道の「廃校カフェ」、岐阜県の「和良おこし協議会」の宿泊施設など

2. 地域のコミュニティスペース
地域住民の交流やイベントの場として、廃校がコミュニティセンターとして使われることもよくあります。地元住民の集まりや、子どもから高齢者まで多世代が集まる場所として活用されています。
例)福島県の「旧戸石小学校コミュニティセンター」

3.芸術・文化活動の拠点
廃校をアートや文化活動の拠点として使うケースも増えています。校舎をギャラリーやアトリエに転用し、アーティストやクリエイターが活動する場を提供しています。芸術祭や展覧会が開催され、外部からの訪問者を引き寄せることにもつながります。
例)瀬戸内国際芸術祭の「大島小学校アートプロジェクト」

4.農業・環境教育施設
廃校を農業や環境教育の場として再活用する事例も多いです。校庭や教室を利用して、地元の農作物の生産や、環境学習の場として機能させることで、地域資源を活かした教育活動が行われています。
例)長野県の「信州ファームスクール」

5.企業オフィス・コワーキングスペース
企業のサテライトオフィスやコワーキングスペースとして廃校が利用される事例もあります。地方創生の一環として、地方での働き方を促進するため、企業が校舎をオフィスや作業場に転用し、デジタルノマドや在宅勤務者の需要に応えています。
例)長野県の「旧信州大学農場跡地のサテライトオフィス」

6. スポーツ・レジャー施設
廃校をスポーツやレジャーの施設として利用するケースもあります。体育館や運動場を活かして、スポーツ施設やアスレチック施設に転用され、地域の子どもたちや観光客が楽しむ場として再生されています。
例)新潟県の「雪国スポーツ交流施設」

7. 福祉施設
高齢化が進む地域では、廃校を高齢者のデイサービス施設や福祉施設として転用する例も増えています。地域の福祉ニーズに応じて、校舎を再活用することで、高齢者の居場所や支援の場として役立っています。
例)岡山県の「旧高梁市立備中町立津川小学校のデイサービスセンター」

8.食育・農産物加工施設
地域の特産品や地元の食材を使った食育や加工施設として、廃校を再利用する例も見られます。食文化の発信地として、地域産業の活性化にも寄与しています。
例)静岡県の「天城産業交流会館」

総括
全国の廃校利用では、地域の特性やニーズに応じて、観光、文化、福祉、ビジネスなど多様な用途に転用されています。特に、地域の住民や外部からの訪問者を結びつける拠点として、廃校が持つ広い空間と歴史を活かした創造的な利活用が目立ちます。銚子市では現在までで10施設以上が空き公共施設として手付かずのまま残っています。今後の課題として出来る所から、ひとつずつ方向性を決めて行く必要性があります。

担当職員の方から廃校利活用について説明を受ける
KITO正門
グランドと遊具はそのまんま残っています
エントランス
グランドに残るブランコ
歓迎のモニュメント
入口を入るとお土産売場が広がっています
階段は手をかけずほぼそのまんま
広いカフェスペース
座席もゆったりと座れます
2階の長廊下
各教室には木工作品が展示販売されています
別の教室
元理科室はそのまんま
水道スペースもそのまんま
体育館には藁で作った迷路
段差がついていて遊べる本棚

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