熊谷知事のお知らせ『能登被災地訪問』
能登被災地訪問の続きです。備蓄倉庫となっている場所を視察。ここは浜松市と自衛隊が運営支援に当たっています。
様々な災害を経験し、千葉県や千葉市を含め、多くの自治体は大規模災害時に支援物資の集積・管理・配送についてロジスティクスの専門である民間事業者に委託するスキームを構築してきましたが、珠洲市においてはそれが機能せず、初期は様々な支援物資が十分な整理なく保管され、水が入った段ボールを集中して一カ所に集めたために体育館の底が抜けたとのこと。自衛隊・浜松市などによってここまで整理が進み、3月末をもって宅配事業者に委託されるとのこと。
午後は被災地で当初から支援活動を継続中の民間支援団体「愛知人」の赤池代表から現地の支援状況や行政に求めることを伺いました。東日本大震災を契機に結成された団体で、令和元年房総半島台風の際も木更津市や鋸南町でブルーシート張りなどを行って頂いていましたので改めてお礼も申し上げました。
現時点では道路事情や現地の復旧状況から、「愛知人」のように組織化されていて、スキルも持っている団体が民間支援を行っている状況です。愛知人とは事前に木更津市が協定を締結していますが、発災後、被災した行政や社会福祉協議会ができる限り早く、こうした信頼できる団体とタッグを組めるかが重要です。
その後、旧本小学校の避難所を訪問。千葉県と市町村が避難所運営に当たってきた避難所の一つです。従事している職員を激励させて頂きました。
発災直後から避難所運営に当たっている地元の区長から「千葉県の方々には本当に感謝しています」とご評価頂きました。これまで現地で活動してきた職員はもとより、派遣職員が抜けた穴を埋めてきた職員にとってもありがたい言葉です。
珠洲市役所を訪問して泉谷市長から復旧状況や今後の支援ニーズなどを伺いました。珠洲市は千葉県が対口支援として多数の職員を派遣し、様々な業務に当たってきたところです。
これまで派遣された職員から把握していた情報と、市長からの話を組み合わせることでさらに理解を深めることができました。
また、珠洲市には千葉県のほか、千葉市を始めとする県内各市町村、浜松市、福井県、兵庫県、神戸市など様々な自治体からの応援職員が詰めています。
私も発災すぐに対口支援の開始を提案してきましたが、被害の大きさを迅速に把握し、速やかに対口支援スキームを発動させることが求められます。今回、対口支援は従来の災害と比べても早く、かなり分厚く展開されていますが、それでも奥能登に関しては他県からの支援職員が到着するまでの3日間程度をさらに短縮できる余地はあったと思います。
千葉県で発生した際に、まず各地で発生した被害の概要を早期につかみ、被災市町村が小規模な場合、初期対応すら混乱する可能性があるため、「災害マネジメント総括支援員」など首長の「災害マネジメント」を直接支援できる職員をできる限り早く派遣し、市町村が機能する状況を作ることが重要です。
さらに、災害マネジメントが機能し、状況を把握後、その規模に応じて県外に対口支援スキームを求め、十分な職員体制を整えることも県には求められます。
そして、甚大な被害を受けた自治体は混乱し、被害集計作業が進まないため、被害が大きい自治体ほど、しばらくの間は公式資料に数字が反映されづらいです。皆さまも最初の頃はここまで能登半島地震の被害が大きいとは分からなかった方もいるのではないでしょうか。これは珠洲市や輪島市が長い間、石川県の災害対策本部会議資料で被害住家の数が実数が入らず、「被害:多数」のまま止まっていたためです。
私は防災危機管理部の職員には、「仮に県内のある市町村の被害が甚大で、被害報告が上がってこなかったとしても、その自治体の世帯数が5,000であれば、被害の概要によって、"被害家屋:1000~3000"というような形で集計の数字に表れるよう幅を持った数字で本部会議資料を作るように。でなければ、国民やマスコミに被災地が深刻な状況であることが数字で伝えることができない」と指示をしています。
私も東日本大震災や令和元年房総半島台風などを被災自治体の長として指揮してきましたが、行政は不正確なことを嫌うため、確定数字が出るまで発表しないケースが多々あります。
平時は当然それが望ましい姿勢ですが、緊急を争う時に確定数字を待っていては本末転倒になることがあり、何度も「途中でいいから発信せよ」と指示してきました。こうした判断が行政の中で一人、有権者から選ばれている首長、政治家の役割だと私は考えています。
※転載に当たっては熊谷知事の許可を得ています。
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