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「何でも数値で考える」デジマ思考の罠

初めまして。株式会社PLAN-Bの松本健吾と申します。
株式会社PLAN-B」というSEOやインターネット広告、Webサイト制作などデジタルマーケティングを総合的に支援している企業にて、オウンドメディア「PINTO!の責任者やSEOツール「SEARCH WRITE」のマーケティング責任者をやっています。

先日エキサイト株式会社様主催のオフラインイベントで、「デジマ思考の終わり」というトピックで少しだけお話をしました。せっかくなので思考の整理も込めて、そこで話した内容をnoteにまとめてみました。


デジマ思考の特徴=「数値で捉える」

「デジマ思考の罠」とタイトルで表現しましたが、何も「デジタルマーケティングが終わった」などと扇動的なことを言いたい訳ではないです。

「簡単に数値化されるからと言って、数値化されたデータばかりを見てしまうと本質的な改善ができなくなる」という話をここからします。


デジタルマーケティングの世界では、大抵のことは簡単に数値化できるため、特定の指標の増減を分析するときに因数分解することも比較的行いやすいです。

上記の特徴から「広告からのコンバージョン数が減ってしまった!」となれば

CV(コンバージョン数)=imp(表示回数)×CTR(クリック率)×CVR(コンバージョン率)

こんな形で分解して、どの指標が悪化したのかを確認すると思います。

数値に基づきPDCAを回すことができるため非常に便利です。イケてる感じがします。論理的にも聞こえますから、社内での説得などでもそれなりに威力があるでしょう。実際に「CV数が減っているのはCTRの悪化が原因で、〇%から△%に落ちています」と報告があれば、ある程度は納得できる内容かと思います。

数字の怖さ

しかし、この特徴ゆえにデジマ思考は恐ろしいのです。

  • デジタルマーケティング思考の特徴

    • 簡単にほとんどのことが数値化できてしまうこと

    • さらに、それら関係性を数式で表現できること

これらの特徴はデジタルマーケティングの強みでもあるのですが、一方で恐ろしさでもあります。

人は数字があるとそれにすがりたくなります。さらに、数字を目標に置かれた場合、その数字をハック的に伸ばそうとします。

このことから、「数値化されている範囲」では改善が行われても、「数値化されていない範囲」での改善が相当見えづらくなるのです。

例えば、あなたが広告からのセミナー参加のリード数を目標に入っている(その成果でお給料が決まる)とします。

このときに、「バナーに登場する登壇者を男性から女性に変更して、CTRが〇%上がった」となれば、以降のセミナーバナーには女性ばかりが並ぶようになるでしょう。


しかし、これは本当に正しいPDCAなのでしょうか?胸に手を当てて考えてみてほしいです。

個人的には、半分は正しいし、半分は正しくないと思っています。当然前述のようなPDCAの回し方は現場で行われているでしょうし、私も同じようなことをしてきました。

しかし、それでは大きく失っているものもあると思います。
先ほどの例でいうと「女性ばかりをセミナーで打ち出していて、この会社は少し品がないな」と思われるリスクもあります。しかし、結果としてのCVRが上がっていればこのリスクはスルーされることも現場では多いです。

簡単な数値化ばかりを見ると上記のように、数値化しづらい観点でのリスクを見落とします。

こういったことの積み重ねで、成果の頭打ちが到来するのです。

まとめると

  • デジマ思考ではだいたいのことを数値化できてしまう

  • しかし、それゆえに数値化されていない/しづらい部分に目を向けられなくなる(人は考えやすいものを考えてしまうもの)

  • 結果として、数値に表れていない心理変容などを見落とすことになり、中長期で成果が伸びなくなる

ということが起きます、という話です。

よくある間違い

 もう少しこの感覚を理解していただくためにいくつか例を追加します。

  • すべての成果を計測できるという前提で施策を管理する

  • 個別の施策すべてに対して、それ自体のROIを気にする

こういう考え方をしてしまっていれば、危険信号です。

海外では、「The End of Attribution」という「成果を個別施策と紐づける時代は終わった」とする派とそうでない派の議論も交わされているようです。 (プライバシーへの配慮なども背景にある)

▲「The End of Attribution」という考えについての議論も海外ではある
https://youtu.be/WKP8plONj5E?si=9j9j5aBzPVG66JBk
本線からそれますが学びになる動画でしたのでぜひご視聴ください

現場で、「その施策ってROIどうなの?」と聞かれること、多いと思います。

しかし、そのコミュニケーションはデジマ思考の悪い部分につながりうると思っておいてください。

一つの施策について、それだけでROIがあっていればそれは素晴らしいことですが、逆に単一施策でROIが合う施策以外に手を出すことができなくなります。

例えば、今Meta広告を出稿していてROIがあっている場合、未来の顧客獲得に向けた施策であるオウンドメディアのためのコンテンツ作成は、その段階ではROIが合わないため先送りとなります。その他にも、認知獲得にはつながるが、施策実施からすぐにCVにつながらない施策は実施されません。

これを繰り返していると、獲得施策を中心とした投資配分になります。もちろんフェーズによってはそれは問題ありません。が、いつまでもそれで成長し続けられるかと言われれば、疑問符が付きます。

コンバージョン率が2%のとき、「2%の方が行動した」と捉えることもできますし「98%は行動しなかった」とも捉えられます。このとき、デジマ思考では98%に対してはそれ以上の解釈を生まないのです。

取るべき態度とは

上記を踏まえて、どんな態度をとると良さそうか、現段階での松本の見解です。

  • 何を数値化するかは慎重に判断する。数値化により欠落する要素があるので、それを許容するかどうかを考える(簡単に数値化されるからと言って、そこだけを見ないようにする。)

  • 数値はハックされるという前提のもと、追う数値を決定する。
    (でないと、数値化により欠落した要素は無視され続ける)

  • 「何もかも数値化して追うことができる」という前提を捨てる。

数値ベースで考えること自体は何も悪くありません。むしろ、必要不可欠です。しかし、

  • 今見ている数値は本当に変えるべき数値なのか?

  • わかりやすく算出されやすいから見ているのであって、「見るべき」ではなく「見やすい」ものを見ていないか?

という問いかけはセットで行いましょう。

このあたりの議論は、100か0かで考えると危険です。以下記事でも書きましたが、塩梅で捉えるようにしましょう。

アンチ二元論|松本健吾|株式会社PLAN-B|オウンドメディア「PINTO!」|「SEARCH WRITE」マーケ (note.com)

最後に、こういった文脈で「数値に表れない顧客を理解せよ」と語られることが多いです(激しく同意です)が、自社のポジショニングを十分に理解しない、顧客理解のみでのコンテンツ作成は他社と同質化したコンテンツマーケになるという話をどこかでしようと思います。楽しめるかはわからないですが、次の記事も楽しみにしていただけると嬉しいです。




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