BMW R80の製作ステムナットによるフロント剛性アップ作戦

R80のステムベアリング交換をしていたところ、ステムナットがきちんとトップブリッジと嵌合する設計になっていないため、走行中に動いている疑惑が生じました。
そのため、位置を正確に保持するステムナットを製作することにしました。

BMW R80のトップブリッジは4mm厚の鉄板。
それを止めてるステムナットはM28P1.5、二面幅36mm。
規格ナットだとM24が二面幅36mmなので、それを追加工してステム剛性アップが狙えるナットを製作します。
どうせなら高強度な材質で、ということで、強度区分10.9の高力ナットを使いました。
このナット、材質がSCM435。クロモリ鋼なのです。
男子ってクロモリ好きでしょ?

問題はトップブリッジで、ステムシャフトが通る穴が変形してイビツになってる。真円が出ていない。
ノギスで何ヶ所か測ると、33.8〜33.1mmくらいか。
仕方ないのでナットの嵌合部をφ33.7で製作し、後は穴を削って合わせるしかない。
そしてできたのがこちら。

左がノーマル、右が製作品

ノーマルは嵌合部高さが2mmでφ33mm、しかもテーパーになっているのでトップブリッジと内面では接触しないか、したとしても線接触。
対して製作品は高さ3.5mmφ33.7mmなので、剛性アップは確実!
なんだけど、、、ちょっとナットの接触面が少なすぎない?
二面幅実測値35.2mmでφ33.7ということは、0.75mmの幅でしかネジのトルクがかかってない。
それじゃ面圧足りなくない?実はこのナット、緩みやすく、それがハンドルブレの原因となっている可能性もある。
トップブリッジの位置を固定せず、ナットの面圧も足りない。
そりゃブレるよな。トップブリッジの穴も変形するわ。

とりあえず試乗してみる。
変わった気がする。一番違うのは、段差を越える時。以前だったらドスンと車体全体が揺さぶられるところが、トンっとサスだけ動く。
ハンドリングも洗練されて、粗雑さが消えてる。
高速道路もびたーっと走る。
手放ししてもハンドルブレない。
マジか。ナット一つで激変じゃん。

しかし二面36mmでは怖いので、新たに作り直します。
検索すると、M28P1.5のナットは細目規格として普通に売ってた。
二面幅はフロントフォークトップナットと同じ41mm。これを一個買いました。
ナットを新規製作する前に、変形したトップブリッジの穴を修正する。ちょうどφ34.3のリーマーがあったので通しておく。

本来なら、フライスで正しい位置に開け直したいところだけど、うちフライスないのです。。。
ネジと同軸で嵌合部を作るには、捨てネジを作ってチャッキングして、ねじ込んでしまえばセンターが出る。

ナット嵌合部は現合で、ガタ無くギリ回るくらい。たぶん-0.03mmくらいかな?


缶スプレーで色塗って、電気ストーブで焼き付け塗装

ナットが41mmになる利点として、ハンドル周りをスッキリさせるためにカバー?を外している人も多いと思いますが、その際、丸見えになってしまうステムの穴もフォーク用キャップで隠せる。


フォークトップキャップがグレーなのは手作りだから

これで剛性アップ作戦は完了!なんだけど、そもそも何でトップブリッジが鉄板なのか、考えてみました。
多分、フロントフォークの構造が原因ですね。
今のフロントフォークはインナーチューブとアウターチューブの間にスライドメタルが入っていますが、R80にはそれが無いのです。
古いバイクには良くある設計なんですが、そのせいでインナーチューブの並行が正確に出ていないとサスが動かなくなる。
スライドメタルありのフォークよりもシビアな精度が必要なのです。
そのため、太いアクスルシャフトとゴツいスタビライザーで剛性を確保し、アンダーブラケットを基準としてクランプ式のアクスルでフォークの並行を微調整できるようにし、トップブリッジはその調整用遊びとしたんじゃないかな。

アクスルシャフトのクランプボルトとスタビライザー、フォークトップナットを緩めることで、フォークの並行を微調整できる

そうは言っても同年代のバイクでもクランプ式のトップブリッジはあるし、アンダーブラケットとトップブリッジの寸法公差をシビアにすればいいだけじゃん、と思うのですけどね。

改造後のR80はハンドリングも洗練されてぐっと良くなったんだけど、もしかしたら工場出荷時はこんな感じで、パーツがヘタってガタが出始めると車体がガタガタになってしまうのかなぁ

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