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製薬企業の研究者がジェネリック医薬品に関する疑問に答えてみました。

★はじめに

本回答は、回答は個人の意見であり、医薬品メーカーや業界全体を代表するものではございません。

★ジェネリックの価格について

■ジェネリック医薬品とは何ですか?

ジェネリック医薬品とは、新薬(先発医薬品)と同じ有効成分を含んでいる医療用医薬品のことを指します。新薬の再審査期間(新薬の効果や安全性を再確認するために収集されたデータを評価する期間)が経過し、特許期間が満了するとジェネリックメーカーも同じ有効成分を用いた医薬品を発売することが可能となります。

■ジェネリック医薬品の値段が安いのはなぜですか?

ジェネリック医薬品の価格が安い理由は、新薬(先発医薬品)の開発にかかる費用を削減できるからです。新薬の開発には、その効果や安全性を確認するために多くのデータが必要で、ヒトでの臨床試験を実施するために数百億円程度の費用がかかります。しかし、ジェネリック医薬品は既にその効果や安全性が確認された有効成分を使用しているため、これらの費用を大幅に削減することができます。そのため、ジェネリック医薬品の薬価は先発医薬品よりもかなり安い価格に設定されており、新しいジェネリック医薬品が発売される際には、先発医薬品の価格の3~4割程度になることが一般的です。

■ジェネリック医薬品に切り替えたのに薬局で支払う金額が3~4割にまで下がりません。なぜでしょうか?

薬局での支払い金額には、薬剤料(薬の価格)だけでなく、調剤技術料や薬学管理料も含まれています。そのため、ジェネリック医薬品に切り替えた場合でもこれらの費用が変わらないため、単純に支払い金額が3~4割にまで下がるわけではありません。ただし、ジェネリック医薬品自体の価格は先発医薬品よりも安くなっているため、全体的な支払い額はそれまでよりも安くなることが期待できます。

★ジェネリックの効果について

■ジェネリック医薬品は添加剤が新薬と異なるためアレルギーが出ると聞いたのですが、本当ですか?

新薬とジェネリック医薬品の添加剤は、基本的に安全性が確認された日本薬局方や医薬品添加物規格に収載されたものから選択されています。そのため、添加剤によるアレルギーリスクは新薬もジェネリックも同程度と考えられます。

■ジェネリック医薬品は先発医薬品よりも効果が劣ると聞いたのですが、本当ですか?

ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同じ有効成分を含んでおり、承認には生物学的同等性試験が求められます。この試験では、最高血中濃度(Cmax)と血中濃度ー時間曲線下面積(AUCt)が国によって定められた範囲内であることを確認します。発売されているジェネリック医薬品は、これらの条件を満たしているため、基本的には先発医薬品の効果に差はないと考えられます。ただし、ジェネリック医薬品に変更したことによるプラセボ効果などの心理的な要因が影響することがありますので、効果に個人差が生じることもありますが、一般的には効果の差はないとされています。

■ジェネリックは先発品の80%の効果でも承認されると聞いたのですが、本当ですか?

ジェネリック医薬品の承認では、生物学的同等性試験が求められます。この試験では、新薬とジェネリック医薬品の濃度の比の90%信頼区間が、100%を中心として±20%の範囲に収まることが要件とされています。
厚労省の調査では、Cmax(最高血中濃度)については4.61±3.41%、AUCt(血中濃度-時間曲線下面積)については3.9±2.98%という結果が示されており、実際には±5~10%の範囲に収まることがほとんどのようです。
H27ジェネリック医薬品冊子(納品) (mhlw.go.jp)

また、新薬メーカーが口腔内崩壊錠等の剤形を追加する際にも同じ基準が用いられています。そのため、「新薬メーカーの錠剤と口腔内崩壊錠の差」と「新薬の錠剤とジェネリックの錠剤の差」はほぼ等しいと考えられます。つまり、ジェネリック医薬品は先発品と同等の効果が期待されるものであり、単純に80%の効果で承認されるわけではありません。

■新薬メーカーとジェネリックメーカーでは新薬メーカーの方が技術力が高いはずなので、先発医薬品を選んだ方が良いのですよね?

技術力だけを考慮すると、そのような考え方もできますが、実際には必ずしもそうではありません。理由は以下の2つです。

1つ目は、ジェネリック医薬品は新薬発売後5年から10年程度経過してから開発が行われます。その間に医薬品業界全体の技術レベルが上がるため、ジェネリック医薬品の開発には新しい技術が用いられることがあります。そのため、ジェネリック医薬品が新薬よりも優れた面があることも考えられます。

2つ目は、ジェネリックメーカーは多くの品目の開発経験がありますので、製剤技術のレベルが高いメーカーも存在します。なお、製剤技術とは、薬の飲みやすさ(大きさや味など)を改善するものが中心となります。

総合的に考慮すると、新薬メーカーとジェネリックメーカーの技術力の違いだけで判断するのではなく、患者さんのニーズに合わせて適切な医薬品を選択することが重要です。また、ジェネリック医薬品は経済的な負担が軽くなることも考慮する必要があります。

■先発医薬品からジェネリックに変えたら、症状が悪化しました。その後先発医薬品に戻したら症状がもとに戻りました。やはりジェネリック医薬品は信用できないものなのでしょうか?

一般的に、ジェネリック医薬品は品質や効果が先発医薬品と同等であるとされています。しかし、個人差やプラセボ効果の影響も考慮する必要があります。特に心療内科などで処方される薬はプラセボ効果が強いことが知られており、患者さんのジェネリック医薬品への印象が症状に大きな影響を与えることがあります。

そのため、ジェネリック医薬品で効果が感じられない場合は、先発医薬品に戻すことも一つの選択肢です。ただし、これは個人の体質や感じ方によるものであり、ジェネリック医薬品全体が信用できないと一概に言えるわけではありません。

■先発医薬品とジェネリック医薬品を賢く使い分ける方法を教えてください。

高血圧や脂質異常症などの長期的な服用が必要な病気に対しては、ジェネリック医薬品に変更することで薬剤費を大幅に節約できる可能性がありますので、まずは1週間「お試し調剤」でジェネリック医薬品を試してみると良いかと思います。心療内科で処方される薬など、プラセボ効果が強く出る薬に対しては、無理をしてジェネリック医薬品に変更する必要はないかも知れません。

■オススメのジェネリックメーカーはありますか?

ここで紹介するジェネリックメーカーは個人的な意見であり、あくまで参考程度に捉えてください。規模や技術面で評価されるメーカーとして、沢井製薬や東和薬品があるかと思います。また、規模は小さいものの技術面で魅力があるメーカーとして、高田製薬(特に小児用)や大原薬品工業も注目しております。

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