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僕らはまだ入部前、先輩は中学2年生

休日よりも人がまばらな行きつけのカフェ。
いつも座るところよりも数段高い席を見つけて荷物を置く。
今日は一人ということも相まっていろいろな用事で来ている人がいることに気づく。

一人で作業をしている男の人、友達とお喋りに夢中になっている女の人、おそらく仕事の打ち合わせであろうおじさん。ここらで働いているのだろうか、スーツを着た外国人の人も見える。

さすがに勉強している高校生は見なくなってきたな…。
そんな事を考えながらピーナッツバターとイチゴジャムを混ぜた奇妙なサンドイッチを頬張る。イチゴの味はあまりしない。

その奇妙なサンドイッチを食べきる頃、僕の周りに3組ほど社会人とおぼしき人と就活スーツを身に纏った大学生が話をしていることに気づいた。
まだ若干緊張した面持ちの学生が鏡に映った自分に見えてきてあまり直視はできない。

聞こえてくる質問も僕がOB訪問でよくする質問だったりするもんだからいよいよ直視しないだけではこのむずがゆさは止められなくなってくる。
自分の声もこんなに上ずってたかな~とか、俺なんてお土産とか渡してないじゃんとかいろいろ考える。

そうやって勝手にむずむずしていたら中学生になる前に体験入部みたいな形で練習に参加した事を思い出した。

体格は小学生と比べ物にならないくらいでかくて声も野太い。おまけに超強豪校だったもんだから、とんでもないとこに入学を決めてしまった…と思っていた。
でも入部してからはどの人もみんないい人ばかりで、あの時感じた地獄に
送り込まれたような恐怖は今の今まで消え失せていた。
それどころか優しくてバスケが上手で日本一までチームを導いた先輩たちが僕は大好きだった。

就職も同じようなものなんだろうか。
もちろん付き合う人の年齢差は干支1周分じゃ足りないくらいだけど。
憧れて尊敬する先輩も見つかるのだろうか。

まだ僕は入部前のちびっこだから何もわからない。
でもあの時と同じなのだとしたらなんだか大丈夫な気がする。

僕らはまだ入部前。先輩は中学2年生だ。

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