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仲良し姉妹

天野あまの しずく
天野 ゆき

雫:私には4歳下の妹がいる。妹の名前は雪。そのまんま、雪が降る日に生まれたから。そして私は雫。これもお察しの通り梅雨の時期に生まれたから。私と雪は自分で言うのも何だがとても仲のいい姉妹だと思う。2人で出掛けたり、着るものを交換したり、お揃いの小物を買ったり。とにかくお姉ちゃんっ子で私の後をいつも付いて回って来てた。自慢の可愛い妹。昔1度だけ喧嘩をしたことがあるけど、理由はあまり覚えていない。確か雪のハンバーグの方が大きかったから。そんなことだったような気がする。

雪「お姉ちゃん、ホントにいいの?」
雫「うん!お姉ちゃんは嬉しいんだよー!雪とまた一緒に暮らせるなんて!」
雪「私からしたら有難いんだけどさ、迷惑にならない?」
雫「雪がいて迷惑になんてなるはずないじゃん!」
雪「そっか。それならいいんだけどさ。」
雫「お母さんも2人1緒の方が安心って言ってたでしょ?それとも何?雪はお姉ちゃんと一緒に暮らせるのが嫌なの?」
雪「そんなはずないよ!この4年間寂しかったんだよ?」
雫「んー!我が妹ながら可愛い!」
雪「ちょっと、そんなにギュッてしないでよー!」
雫「えー!いいじゃん!雪をたくさん補充しないと!」
雪「あははっ、なにそれ。」

雪:私には4歳上のお姉ちゃんがいる。いつも優しくて頼りになる。けどたまに抜けてることもあるし、私に甘々だからこれでいいのか?なんて思ったりもする。私はこの春から大学に通うために実家を出ることになった。初めは一人暮らしを考えていたけど、専門学校を卒業して社会人三年目を迎えようとしているお姉ちゃんの家で一緒に暮らすことになった。理由は安く済ませられることと学校から割と近いこと。...あとはこのシスコンお姉ちゃんの強い要望。でも正直私も一人暮らしは不安なこともあったからよかった。

雫「雪ー。荷物はこっちに送ったんだよね?」
雪「うん、家具とか家電を買う必要が無いってなったらそんなに大した荷物にならなかったから。」
雫「また洋服の交換もできるね!」
雪「うん、そうだね!でさ、初期費用も浮いたしそのお金でご飯にでも行かない?」
雫「それはだめー!雪は将来の為に貯めておきなさい。お姉ちゃんは社会人なんだから!」
雪「それは分かってるけど、タダで転がり込むようなことはしたくないよ。」
雫「雪...なんていい子なの!可愛い上に優しさも兼ね備えてるなんて!」
雪「はいはい。大袈裟だって。でもね、私も少しは自立しないとだし、バイトして少しはお金貯めてたから。これからまた新しいバイトは探すけど、んー...2人暮らしのお祝いってことでさ!...だめ、かな?」
雫「ずるい!雪はずるいよ!そんな可愛い視線送られたら断るのも申し訳ないじゃん!」
雪「そんなあざといことしたつもりないよ?」
雫「雪がいつかお嫁に行ったらお姉ちゃん泣いちゃう...。」
雪「お姉ちゃん?」
雫「きっと雪が選ぶから素敵な人が『お姉さん、妹さんを僕に下さい』なんて言ってきて...」
雪「おーい?」
雫「雪が幸せになるならそんなに喜ばしいことはない!ないんだけど...うぅ...。」
雪「お姉ちゃん?そろそろ戻ってきてくれる?」
雫「...はっ!いけない!雪のウエディングドレス姿が眩しすぎて倒れるところだった!」
雪「あははは...。それで、話戻してもいいかな?今日のご飯なんだけど。」
雫「うん、雪が頑張って貯めたお金で食べるご飯は格別なんだろうな。」
雪「ほら、またすぐ違う世界に行こうとする!何が食べたい?」
雫「ごめんごめん。んー...お姉ちゃんは雪と一緒なら何でもいいんだけどなぁ。」
雪「そう言うと思った。」
雫「雪が食べたいものは?」
雪「私も特に...あっ!ハンバーグ!」
雫「ハンバーグ?」
雪「うん!お姉ちゃんハンバーグ好きでしょ?」
雫「うん、好きだけど雪はそれでいいの?」
雪「もちろんだよぉー!」
雫「ふふっ。雪は相変わらず優しいね。」
雪「そう?」
雫「うん。ホント、自慢の妹だよ。」
雪「えへへ。よし、じゃあ食べに行こっ!」

雪:こうしてお姉ちゃんとの2人暮らしが始まった。休みが合えば一緒に遊びに出掛けて、買い物をしたり外食をしたり。昔に戻ったみたいで楽しい日々を過ごした。
雫:雪と一緒に暮らせるようになってから前にも増して毎日が充実している。私の家は着実に私たちの家に変わっていっていた。雪の物が少しずつ増えていく。と言っても一緒に使えるものなら洋服だろうがコスメだろうが何だって共同で使っていた。
雪:お姉ちゃんは外ではしっかりとした社会人をしているみたいだ。たまにお姉ちゃんは職場の人と休みの日に会うことがある。その時でも私を連れていってくれる。周りの人達も嫌な顔せずに受け入れてくれる。お姉ちゃんの人柄あってのものなんだろうな。
雫:私の周りの人達とも雪は上手く付き合ってくれる。家では基本的に当番制にしているけど、2人で一緒にご飯を作ったり洗濯をしたりすることもある。もしかして私たち世界一仲のいい姉妹なんじゃないの?って思うことが多くある。と、まぁ姉バカもここまで来れば病気だと稜矢りょうやに言われてしまった。稜矢とは私の彼氏でもう3年ほど付き合っている。そんな彼もなんだかんだ言いながら私たち姉妹の仲の良さを微笑ましく見てくれている。

雪「お姉ちゃん、またお揃いにしたいものが増えちゃった。」

雫:一緒に暮らし始めて半年ほど経った頃、突然雪にそう言われた。

雫「え、なに?そんな改まって言わなくてもお揃いにできるものは今まで通りで大丈夫だよ。」
雪「そっか!そうだよね!ありがとう。」
雫「うん。それで?次のお揃いは何?」
雪「ん?稜矢くんだよ!」
雫「...え?」
雪「だーかーらー、私も稜矢くんと付き合うことになったの!」
雫「雪?え?どういうこと?」
雪「ん?そのまんまだよ?これで稜矢くんもお揃いだね!」

雫:そう言って笑った雪の顔は、私の知っているそれとは違って見えた。

-END-

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