究極の判断力を身につける『インバスケット思考』を読んでみた。

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■本レポートの抜粋--------------

問題発見力・意思決定力・分析力・洞察力・創造力・対人スキル・組織活用力 and more…
現役管理職・管理職をめざす人のみならず、仕事に取り組むすべての人が習得したい力、それが「インバスケット思考」。
制限時間内に「未処理箱(インバスケット)」案件を片づける、
リアルなシミュレーション・ゲームをとおして、仕事で求められる本当の力がわかる。身につく。

----------書籍情報----------------

書籍名:究極の判断力を身につけるインバスケット思考

著 書:鳥原 隆志

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■本書の選定理由

本書を選定した理由としては、自身の判断力のスピードと精度の改善が必要だと感じる場面が増えてきたからです。

直近、実務にてディレクション業務をすることが増えてきました。自身が窓口として、クライアントと1on1で対応しているものもあれば、大きい案件だと自身の他に数人、またその上長含めると6~7人のチームで仕事を遂行することが多く、適切な情報処理とその精度上げが不可欠になってきました。

加えて、直近対社外・社内にてこのディレクション業務の滞りから伝達不足や漏れなども発生することがあり、『運用者』という視点を脱し、『コンサルタント』『ディレクター』としての動きをより鍛えていく、全体を見ていく必要があるため、今回本書を選定した形となります。

また今後組織が主体性を軸に動いていくのであれば、今の状況に対して自分がどのように動けばよいか。また限られた時間の中でスピーディに業務をこなし、案件に手を入れていく新人・中途の社員に的確な指示を出す精度も高めていかねばなりません。

これまで体系的にマネジメント・管理業務について学んだ経験が少なく、自分で自分自身に対して『判断が遅い』と感じる部分が多々あります。

そこで、管理職や社員のマネジメントスキル、判断力を鍛えるための手法として活用されているインバスケット思考を本書を通して学ぶことにしました。

◆インバスケット思考とは?

『インバスケット(inbasket)』は訳すとまだ決済がされていない書類が入った『未処理箱』を指します。1950年代にアメリカ空軍で生まれたトレーニングツールで、制限時間内に架空の役職・人物になりきり、多くの未処理案件の処理をおこなうビジネスシミュレーションゲームとして日本でも導入されています。

日本では一流と呼ばれる大手企業の多くが管理職の教育や選抜用のテストとして活用しており、新入社員~若手社員の教育ツールとしても導入されています。

・時間の余裕ができる

・判断スタイルが変わる

・問題解決能力が上がる

インバスケット思考を実践することで主に上記3つの能力が改善されると著書では述べられていますが、これらは新しく能力が身につくのではなく、トレーニングを実施することでその人が本来備え持った能力やスキルを引き出すだけ。

眠っている能力やスキルを発揮する道具として活用することができます。

◆インバスケット思考は『過程』に重きを置く

インバスケット思考では意思決定に至るまでの過程や論理性、仕事の優先順位のつけ方など、良い結果を生み出すためのプロセスを観察し、評価します。例えばある人は就職先を探しているとしましょう。

A:求人広告の『高額待遇』→面接→就職

B:求人広告→情報収集→企業間比較→応募→面接→就職

最終的にAさんもBさんも結果は同じですが、そこへ至る過程は大きく異なります。インバスケット思考では、案件処理に対して結果を評価するのではなく、判断にいたるプロセスを重視します。

インバスケット思考の目的は、判断プロセスを使って、繰り返しトレーニングすることで"良い判断"を"早く"することを目標としています。

◆正解は無数にある

まず、多くの案件や業務を、短時間で精度高く処理するには、大きく以下3つが必要となります。

・優先順位をつける

・正しい判断方法や案件処理方法を身につける

・そして能力の発揮度を高める

また前提としてインバスケットに取り組む数の人だけ正解は存在します。これはトレーニングなので、まずは自分の考えで取り組み、そのうえで上記3つを照らし合わせ学び吸収し、発揮することが重要になります。

◆人の行動にはパターンがある

とにかくがむしゃらに順番通り案件処理を進める人、注意深く資料の隅から隅まで目を通す人、表面的に処理をおこない、時間を余らせている人など。

人には人それぞれ仕事のスタイルが自然と身についています。インバスケットトレーニングを実施し、その過程を観察するだけでもその人の意思決定スタイルや行動スタイルはわかります(著者はそれを『行動の反復性』と呼ぶ)。

僕の場合は、業務の中で発生した事象やクライアントからの要望に対して、社内相談をあまりせず、自己判断で動いてしまい齟齬が生まれてしまうことが多いタイプです。インバウンド思考風に判断すると、『正しい判断方法や案件処理方法』を身につけていない段階でこれをやってしまっているという視点で自己評価をすることができます。

◆インバスケットトレーニング

※本書では全20種のインバスケットトレーニングが記載されています。それらを60分間の間ですべて処理することがトレーニングの条件になっており、制限の中で各案件を処理していく必要があります。各トレーニングについて1つ1つ細かく記載していくことも可能ではありますが、今の自分に欠けている+言語化されていないものだけをピックアップしています。

※今回のトレーニング内での空想の人物は、急遽上層部に任命されて東京支店の店長として抜擢された女性社員です。

◆当事者意識

みずからに対して何を求められていて、また、何をするべきなのか、自発的に判断を行うこと。著書内では『新任』だから、ではなくリーダーになったのであれば組織にサポートをしてくれるように期待しているだけではダメ。

リーダーに抜擢された時点でまず取るべきことは、そして支援と協力を求める気持ちを表明することです。新任だから、引き継いだばかりだから、個人として引き継いだのではなく、組織のリーダーとして引き継いだと考えて動く必要があります。

→今後期の変わり目や、役割(窓口、運用)が変わる際に起こりがち。

◆外部組織の活用

組織のリーダーになると、内部ばかりに目が行ってしまいがちですが、外部もよく観察しなければなりません。

・自部署がどの位置づけにあるか

・サポート、支援を受けられる機能を持つ組織はどこなのか

・報告や連絡のルートはどこなのか

組織として目指している目標は同じでも、部署によって価値観や考え方、時には縦割り的な考え方やエゴイズムがあるものです。部署が違えば価値観や考え方が違うことを前提にまわりの組織と付き合いましょう。

→案件の担当が課を跨ぐ、課を跨いだディレクション業務が発生する際に重要になってきます。言葉にしなければ思っていても伝わらない、またエンドの熱量や温度感こそ間に人を挟めば挟むほど伝達しづらい部分が多くなるため、上記の当事者意識と絡めて対応する必要がある。

◆内容把握力

インバスケットでは短時間で多くの情報を処理することを要求されます。その際に重要なのが、以下に短時間で案件や資料の内容を把握するかということです。『要点は何なのか』、案件を素早く処理するための第1ステップが、この内容把握力だと言えます。

→これもまた重要なのは『伝え方』と『男女の脳の違い』だと思います。相手がどちらの性別なのか、どんな報告形式を望むのか、あくまで『人』に合わせた伝達力も合わせて育まなければなりません。また社内連携をとる際には、その対象は上長にも当てはまるため、今後身につけておいて損はないスキルです。

◆顧客志向

組織を効率的に運営し、かつ規範を維持するためにマニュアルやルールが存在します。リーダーはこのマニュアルやルールを従業員に徹底させる責任があります。しかし時代の流れに沿って、既存のマニュアルやルールがそぐわなくなったり、マニュアルやルールがかえって会社の利益を損ねていないかなども十分に検証しなければなりません。

◆意思決定力

たとえ既に決まっているルールやマニュアルであっても、自分の考えを毅然と述べる行動は意思決定力として評価できます。

→顧客志向と意思決定力は綿密に結びついていると思います。逆に意思決定力が弱いということは、顧客志向でないとも取れます。(これは自分自身になりグサッと刺さりました)

◆危機回避能力

『1件重大事故が発生すれば、その背景として29件の軽微な事故と300件のその要因になりかけた事象が発生している』というハインリッヒの法則があります。

・ "たまたま発生した。。"

・ "今回は偶然起きた"

ではなく、すべて火のないところに煙は立たないという言葉の通り、必ずそれらを誘発した原因があり、次回も必ず起こると予期しなければなりません。

→これも自分が大丈夫だと判断していたとしても、他社から見ると危機的状況の一歩手前といった状況が度々発生します。また過去起きたミスや失敗の経験則から回避できるトラブルはあれど、どう対処したら良いか判断できないトラブルもあります。『原因』は『何』で、『どう』対処する・予防線を張っておくと火事が起きずに済むか。予期できる人に相談することで防げることも過去ありました。

※また本書を読んでみて感じたのは、インバスケット思考を鍛えるためのトレーニングとは言え、仮想の会社において『社内でのぶつかり合い』が多いということです。

良い意味でリスプラは一枚岩、環境の変化に対して負荷がかかっても順応しようと動いているところがあると思います。しかし裏を返せば、そういった意見の主張やぶつかり合いが少なすぎるのでは?とも思いました。主体性、というと体は良いかもしれませんが、コミュニケーション量を増やす(心理的安全性を担保するため)といった働きかけを自身から外へ影響力を発信していく必要があると思いました。

◆まとめ

インバスケット思考では結果に至るまでの”プロセス”が重要視されています。僕自身本書を読んで、仮説や判断を下すまでの過程が重要なことは重々学びましたが、ここでの注意点は"制限時間"と"練習"だと思いました。

個人的に1つの事象に対して深く考えることはできるのですが、その思考にはまってしまい、根本が間違っていたら全体がズレてしまうこと。また普段の業務においては1つの事象に対して大きく時間を割き過ぎてしまうことがあります。(典型的な男性脳タイプです)

また本書を読んでいて感じたのは、支援体制を作るという表現が多数でてきたことです。リーダーという立ち位置でするべきことは組織形成であり、そのために"個人"ではなく"組織"としてプロジェクトを推進できるための根回しや調整が重要であると書かれていることが多かったです。

※上記をネガティブに感じているあたり、僕自身100%フィードバックができていないことの裏付けなのかと気づけました。

今回本書内の20のトレーニングで問題課題に対する管理者としての視点は学ぶことはできましたが、学んで終わりになってしまうと本末転倒です。やはり普段の業務内での"実践(練習)"が必要になってきますので、現場で今回学んだ内容を実践してみます。

※直接的な記述はありませんでしたが、インバスケット思考では振り返りと他社からのフィードバックが無いと、”自身の行動パターン”の把握、並びに正しい判断方法や案件処理能力が身に付きづらいようです。ですので、1つの事象に対してまず制限時間内で仮説を出す、そしてチーム内で情報を交換しどの判断が最適化をすり合わせる。この点に重きを置いてみます。

※また上述した『人の行動にはパターンがある』でも記載しましたが、一番手っ取り早いのは上長や部長、また社長の考えや判断をトレースしてしまうことかと思いました(過去既に自分がぶつかっている壁や事象を突破されている方に聞く)

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