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モダン 5色人間 新規カード批評

モダン環境に5色人間が現れてから、3年近くが経つ。
かつてから「人間」というクリーチャータイプを持ったカードは数多あったが、イクサランで帆凧の掠め盗り手付かずの領土を獲得しアーキタイプとして完成された。当時のモダンメタゲームではほぼ敵無し、大会のTOP8常連組で最強のビートダウンの名を欲しいままにしてきたのだった。

しかし、あまりの完成度の高さ・強さに新たな人間戦力は供給されることがなくなってしまっている。
既存のリストはどれも共通していて、フリースロットはせいぜい3枚程度、といった具合にデッキは洗練されている。中途半端な新規カードは古参の先輩人間たちを押しのけてまで採用されないのだ。

他のアーキタイプは新規カードをもらい、強化され続けている。そんな中で5色人間は置いてけぼりな状況となっていると言っても過言ではないだろう。

そこで、イクサランの帆凧の掠め盗り以降、新規人間にどのようなものがいて、採用の余地があるのかを改めて私的評価して整理してみたい。

1.民兵のラッパ手

3マナ2/3警戒に加えて、戦場に出たときにライブラリーの上4枚からパワー2以下1枚を公開して手札に加える。

基本セット2019で収録された期待の星。
除去連打に弱かった人間に持久力を与え、警戒で殴れるハゲとして採用された。後に挙げる昨今の新規人間の中ではかなり強い。バーン相手には壁になりながらオーリオックのチャンピオンを探してくれる。コンボ相手には翻弄する魔道士を、クリーチャー相手には反射魔道士を探すといった具合にその場に合わせて使いやすい。

メタゲーム上にジャンドなどの除去ミッドレンジやバーンが多ければメインから入れてもいいほどの性能で、後述する溜め込み屋のアウフなどのサイドカードを探しやすいのもGOOD、しかし当然スカることもある。
ほとんど弱い場面がなく、ラッパから幻影の像、ラッパをコピーしてさらに後続へという動きは盤面を巻き返せる。
サイドに2〜3枚採用が多い。

2.秋の騎士

3マナ2/1 出たときに4/3になるか置物破壊か4点ゲインを選べる騎士

非常に便利かつ柔軟性が高くサイドカードの枠を減らしてくれる良いカード。
しかし人間ではない。
このあたりから露骨に人間というクリーチャータイプが付くことはなくなってゆく。
とはいえ、貴族の教主古代の聖塔などの土地を少し工夫すればキャストにそれほど難はない。

人間というデッキは出てしまったものに触りづらく、クリーチャーは反射するしかなく、置物に触れなかった。厄介なキラーカードとなる血染めの月罠の橋などのアーティファクトを破壊できるのはありがたい。(血染めがあって難なく出せるかは微妙)
押している盤面なら4/3になり殴れる、押されていれば4点ゲインと強い。しかし人間ではない。
次の拘留代理人の方が触れるものが多いのでそっちが優先されがち。

3.拘留代理人

出たときに対戦相手の同名パーマネントをすべて追放、戦場を離れたときに戻る拘留の宝球が3マナ1/3になった。

彼もまた人間ではない。
しかし何にでも触れるというのは非常に強く、戦場に複数体並んだタルモゴイフ難題の予見者なんかを追放できたときは気持ちいい。プレインズウォーカーにも触れて、前述した秋の騎士と役割が若干被るものの、総じて優秀なハゲである。
拘留の宝球霊気の薬瓶から出るというのは強く思えるが、除去されたら場に戻ってしまうのでプレインズウォーカーなんかは再度忠誠度をゼロから使えてしまったりもする。
もし人間だったら、サリアの副官でタフネス4まで上げて稲妻に耐え、致命的な一押しも紛争が必要…となれば強かったがそう上手くはいかない。
人によってメインに入れたり、サイドに1〜2枚入れたり。

4.アゾリウスの造反者、ラヴィニア

青白2マナで2/2の熊ボディに非クリーチャースペルの踏み倒し、マナの踏み倒しを咎めるお姉さん。

2体並んでも意味がないので伝説なのはいいとして、一見するとトロン相手に使えそうではある。
しかし、土地が4枚並べば大いなる創造者、カーンは出る。
2つ目の能力は現状打ち消したいピッチスペルもなく、モダンではせいぜい続唱やミシュラのガラクタなどしか使いどころがなく、レガシー以下で活躍中。

5.高名な弁護士、トミク

白白2/3飛行と恵まれたボディから、使いどころのない能力。

相手の土地の悪用を咎めるヘイトベア。
もちろんモダンでは一切使うタイミングがない。
「1ターンに複数枚土地をプレイできない」とかなら今頃大活躍していることだろう。
彼女もレガシー以下で頑張っているようだ。

6.不確定な船乗り

悪名高いモダンホライゾンからやってきた、2マナ2/2の標準ボディに多相で人間になりすますヘイトベア。自身を含め、プレイヤーはパーマネントが対象に取られるたびに1マナ要求する。

彼もまた、人間ではないが人間でもある多相の戦士。
標準的なサイズに加えて能力も比較的強く、第2のスレイベンの守護者、サリアのようである。
思考囲いコジレックの審問は2マナとなり、稲妻も2マナ、難題の予見者も5マナとなる。

ピン除去しかない相手に複数体並べればかなり強いが、対象を取らないスペルにマナ要求することはなく、至高の評決神々の憤怒といった全体除去をそのままのマナで打たれてしまうのが痛い。
また、コントロール相手には選択などのドロースペルにまでマナ要求するサリアと違い、そのあたりの動きを止められないため何とも微妙な弱さだった。
押されている状況にも非常に弱く、戦闘能力も今ひとつ。
たまに2枚ほど採用されてたりする。

7.溜め込み屋のアウフ

モダンホライゾンからの新入り名誉人間。熊ボディに石のような静寂を内蔵した。

見てそのまま、石のような静寂がクリーチャーになった。古代の聖塔やサリアを使う加減で非クリーチャースペルを使えない人間デッキにとってはクリーチャーであるだけありがたい。
トロンや親和相手にとりあえず入れておけば苦しいらしい。信仰なき物あさりを失ったドレッジは叫び角笛頼りなところがあるので上手く行けば刺さるかもしれない。
一方で当然自分の薬瓶が止まってしまうことも大きな難点で、それを嫌って不採用にされることもある。しかしトロンやドレッジ、親和にはそもそも薬瓶が遅すぎて有効ではないため、サイドで入れ替えれば丁度よかったりもする。
もちろん殴れないので戦力にはならないものの、背に腹は変えられんのでサイドに2枚が定石となっている。

8.疫病を仕組むもの

彼もまたモダンホライゾンからの新入りで指定したクリーチャータイプをすべて-1/-1修整する接死持ち。

もちろん言うまでもなく人間ではない。
それどころか、人間にとってはキラーカードで、ジャンドなんかにこれを出されたら投了ものである。
接死はインクの染みではない。
人間やマーフォークといったモダンの部族にトドメを刺すえげつないカードであったが、当の部族側が同系対策に入れていたりもする。

人間デッキから見ると、対処のしづらいドルイドコンボ相手に「人間」を指定すると療治の侍臣が止まるため便利。氷牙のコアトルなんかも止めれるし瞬唱の魔道士チャンプも、機を見た援軍のトークンも消せる。案外コントロール相手に使える。

3マナと重く、色も出づらい黒なためキャストに難があることも多い。上記の使い方なら人間としてキャストできるイゼットの静電術師でもよかったりもする。

9.魅力的な王子

出たときに占術2、3点ゲイン、自軍ブリンクを選べる2マナ2/2の人間。悪名高きエルドレインの王権から参入してきた。

2マナで出たときに魔除けのように効果を選べるといういいデザインの人間。
序盤なら占術2、バーン相手には3点ゲインと便利。
3つ目のブリンク能力はクセがあって、相手の除去に合わせて薬瓶から飛び出してきて除去を無駄にさせるという使い方が強い。既に戦場に出ている反射魔道士をブリンクして再度能力を利用したり、サリアの副官をブリンクすれば全体打点が増えたりする。
基本的に薬瓶のカウンターは2で固定したいため、2マナで出せるところは非常に魅力的である。

しかしながら、薬瓶がなければ除去を空振りさせるという使い方は出来ず、イマイチな場面も多い。
残念ながら他のカードを押しのけてまで入るほどのパワーではなかった。

10.ドラニスの判事

2マナ1/3の壁ボディに手札以外からの呪文キャストを咎める能力持ち。世紀の大失敗システム「相棒」をフィーチャーしたイコリアで安全弁として(?)刷られた人間。

良く言えば、フラッシュバック呪文や続唱、デッキトップから唱える能力などを止められる。
しかし使いどころがかなり限定的で、それくらいしか刺さらないなら別にいいや…となってしまう可哀想なクリーチャー。相棒も消えたしね…。

11.ドラニスのクードロ将軍

3マナ3/3で他の人間を+1/+1修整するロードでありながら、自身や後続の人間が場に出たときに相手の墓地から1枚追放する。さらには2マナと2体生贄でパワー4以上のクリーチャーを破壊するハゲ。

巨獣と人間の対決を描いたはずのイコリア、まともに使える人間はこのハゲだけであった。
人間のロードといえばアヴァブルックの町長がいるが、町長はただのロード持ち(変身は無視)でしかなかった。それに比べ将軍ともなればさすがに能力が盛り盛りで、墓地対策をメインからできるのは強い。
現在の環境は世紀の壊れカード自然の怒りのタイタン、ウーロをはじめとした墓地利用環境となっており、自軍を強化しながらウーロを追放してくれる。
おまけに次いで強力なメタデッキのエルドラージトロンにも破壊能力を使おうと思えば使える。後引きした貴族の教主なんかを生贄にすることになるだろう。

ロードの能力を1番活かせるタイミングを考えると、コンバットブロック時に薬瓶から出してサリアの副官や教区の勇者をパワー2ものパンプアップをして一方的に討ち取る といった展開だが、そのためには薬瓶を3にせねばならず、若干メイン戦略と噛み合わない。普通に出しても当然強いんだが…。
現在のメタではメインに2〜3枚採用されている。
今後も墓地利用が減らない限りはそのまま使われ続けるのかもしれない。

12.封じ込める僧侶

最新弾である基本セット2021にあの封じ込める僧侶が再録。レガシーでしか使えなかった強力な踏み倒し禁止おばさん。

ドレッジ、裂け目の突破、集合した中隊などの踏み倒しによって場に出るクリーチャーを追放する人間。元々レガシーでは使えたがモダンにやってきた。
瞬速がついていることで相手の不意打ちで踏み倒したクリーチャーを消せる。
しかし当然自分の薬瓶が1番被害を受けるわけで、安易に採用することができない気もする。
その一瞬だけ追放するだけだしなぁ…ドレッジには墓掘りの檻でいいような気もするし…まだ評価が定まらない。

ネクストレベル人間へ

イクサランで帆凧の掠め盗りを獲得以降、まともに使える人間は基本セット2019の民兵のラッパ手とイコリアのドラニスのクードロ将軍のみだったということがお分かりいただけたと思う。
もちろん新規カード=強いというわけでもなく、明らかな壊れたカードをよこせというわけでもない。
場合によってはメタゲームに合わせて今まで使われなかった人間が使われるようになるかもしれない。コアトル対策のイゼットの静電術師なんかは特にそうだ。
とはいえ、5色人間はすっかりトップメタから転落してしまっている。雑なライフゲイン、メインから強力な土地基盤破壊、速度とサイズで上回るデカブツが闊歩する環境下では厳しいのかもしれない。

有用なプロテクション持ち、除去耐性持ち、クリーチャー踏み倒し禁止バージョンのガドック・ティーグなんかがほしい。切実に。

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