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☆『象たちも憩いて草を食み』 〜コントラバスだけのコンサート

☆2023/10/6 「豊中まちなかクラシック」の公演として「象たちも憩いて草を食み」というタイトルの演奏会を行いました。当日、お客様に読んでいただいた「曲目解説のようなもの」を、ここに再録します。


私たちは日本センチュリー交響楽団のコントラバスセクションです。今年この4人にメンバーが定まって、その喜ばしい記念と共に(もしくは喜んだ勢いで…)四重奏を皆さんに聴いていただこう!という案が浮上したのでした。コントラバスだけの演奏会は昨今増えてきましたが、まだまだお聴きになる機会は少ないかと思います。今夜は初めて耳にされる珍しい曲や、よくご存じの曲も(きっと、少し変わったアレンジかもしれません)とりまぜて、がんばって演奏いたします。どうぞお楽しみくださいますように。


◇J.S.バッハ(Johann Sebastian Bach 1685 - 1750)

 ◆羊は憩いて草を食み〜「狩りのカンタータ」BWV208より

NHK-FMの「あさのバロック」のテーマ音楽として有名になりましたが、原曲はバッハの世俗カンタータの中の1曲で、リコーダー2本と通奏低音を伴ってギリシア神話の女神パラスが歌うソプラノのアリアです。少々ムリがあるとわかってはいたのですが、演奏会タイトルとのリンクも含めて「羊もすなること、どうしても象もしてみむとてするなり」とばかりにアレンジしてみました。もしかすると、このグループのテーマ曲になるかもしれません。今夜の演奏の出来によっては!



◇T.オズボーン (Tony Osborne 1947 - 2019)

 ◆ピンクの象(The Pink Elephant)

 ◆パーティ!(Party Pieces)〜「ピクニック」-「重金属」-「歌おうか」

コントラバスだけで演奏会のプログラムを組もうとするとき、オズボーンほど頼りになる作曲家は少ないのではないかと思っています。イギリスの王立音楽院でコントラバスと作曲を学んだ彼は、意欲的でしかも楽しめるコントラバスのための作品をたくさん残してくれました。その中から今夜は、やはり象をタイトルに持つ少しブルース調の「ピンクの象」と、短くて親しみやすい3曲から成る「パーティ!」(この曲だけ三重奏です)を演奏します。

(追記:もちろんコントラバスのための作品以外も、たくさん残しておられます。念のため)



◇D.ランズウィック(Daryl Runswick 1946 - )

 ◆犬小屋のシュトラウス

ヨハン・シュトラウス親子の有名どころ(何曲
聞こえましたか?)をつなぎ合わせてメドレーのようにした曲なのですが…楽器が楽器ですので、とてもユーモラスなアレンジになっていて、コントラバス四重奏の演奏会では相当な頻度で演奏されていると思います。作曲者はイギリス生まれで、ジャズのベーシストとしての活動を皮切りに、ポピュラーやクラシックの世界でも作曲家として活躍されているようです。


◇S.シェーファー(Stefan Schäfer 1963 - )

 ◆タ・タ・タ・タ(TA-TA-TA-TA)

こちらはベートーヴェンの曲の有名なところをつなぎ合わせています(こちらは6曲です。数えてくださいますか?)。曲名の由来は第5交響曲の(あの)「タタタター」かもしれませんし、もしくはメトロノームの発明者メルツェルに捧げた歌曲(歌詞がタ・タ・タ・タ…と始まるんです)から転用された、第8交響曲の2楽章かもしれません。作曲者はハンブルクのオーケストラのコントラバス奏者で、この楽器のための(もしくは含んだ)作品をいくつも書いておられるようです。


◇L.ハーライン(Leigh Harline 1907 - 1969)

 ◆星に願いを(When You Wish upon a Star)

今夜いちばん皆さんがご存じの曲かもしれません。1940年のディズニー映画「ピノキオ」の主題歌で、古今東西それはもうさまざまなかたちで演奏されています。途中からテンポ・アップしてスウィングし始める今夜のアレンジは、お気に召しますでしょうか。


◇A.ピアソラ(Ástor Piazzolla 1921 - 1992)

 ◆ブエノスアイレスの冬(Invierno Porteño)

ピアソラの「新しいタンゴ」は、生国アルゼンチンやアメリカをはじめ、ほとんど世界中で演奏されていて、とくに近年はクラシックの奏者たちが競って挑戦しているようです。皆さんもいろいろな楽器編成で耳にされることが多いのではないかと思います。「冬」は「ブエノスアイレスの四季」の中でも特に美しいと言われていて、暗い雰囲気から始まりますが、曲調は矢継ぎ早に変わってゆき、そのたびにグッとくるメロディが現れる…たいへん印象的な作品です。


◇吉田有音(Aruto Yoshida 1984 - )

 ◆夕暮れに(At Dusk)

作曲者の吉田さんもコントラバス奏者として、私たちとたびたび一緒に演奏する機会もあります。この曲の解説に代えて、作曲者からいただいたコメント☆と、私たちのインプレッション★を記します。


☆「この曲は僕が所属するコントラバスカルテット『BassBar』のオリジナル曲として作曲しました。僕は頭の中では『ドレミ…』の音が分子のようにあっちこっち飛び回っていて、たまに結合したり、離れたり…。そんな中で気に入ったものを作曲に使ったりしています。この曲もそうやってできました。できた曲をメンバーに聴いてもらったところ『夕暮れ時っぽい!』との声が多く、曲名もメンバーに決めてもらいました。

メンバーも気に入って弾いてくれ、聴きに来てくれた人も気に入ってもらえたりして、こうして多くの方々に聴いていただけることを嬉しく思います。コントラバスが奏でる夕暮れの風景をお楽しみください」


★「いい曲だなあ…ハモリがおいしいなあ…左手が局所的に難しいなあ…」

★「茜色の夕焼けではなく、すみれ色の薄暮れ。胸がキュッとしめつけられるような、黄昏時」

★「香りでいうとシトラス的な、爽やかな曲だと感じました。今回のコンサートで是非ともこの曲を演奏したいと思っておりました!私のパートに出てくる、高いシの音への大きな跳躍がとても好きです」

★「リズムやハーモニーは基本的に明るくて楽しいんだけど、なぜか個人的な遠い記憶のような何かを思い出させる、不思議なバランスが魅力」

★「コンサートの帰りに口ずさんでしまうようなキャッチーで耳に残る曲です。爽やかだけど、夏の終わりのようなちょっぴり切ない感じもします」