イブはマスターと共に

婚活パーティー会場を後にした僕たちは、
この不完全燃焼のまま帰るのは危険だと判断し、
いきつけのBarに向かった。

このBarは良い日も悪い日も、
行けば「今日はなんだかいい一日だった気がする」
と思える最高の場所だ。

カウンター6席とテーブル1席の、ウィスキーが数多く取り揃えてあるこのオーセンティックバーは白髪交じりでオールバックの渋いマスターがやっている。

今年の頭、彼女に振られたその日に出会ったバーで、若い人があまりこないということもあって、なにかと可愛がってくれている。

イブに街コンに行ってなんとも言えない結果だったと伝えると

「それは行くイベントを間違えたでしょ」
と笑ってくれた。

そして
「そういえば、昨日お店に来た2人組の女の子いい子たちだったよ。あ、紹介しようか?」
と言ってすぐに電話を掛け始めた。

このマスター…できる。

電話が終わると
「年明けにセッティングするよ。」
といってくれた。

うーん。
来年はここにたくさん通うことになりそうだ。

さらにマスターはいくつかおすすめの飲食店を教えてくれた。

ここは接客のレベルが高いからとか
ここで働いてる子は見たほうがいいとか

タイミングがあったら誘ってくれるみたいだ。

そうやってBARで過ごしていると、なんとなく二十歳のときに初めてオーセンティックバーというものに行った時のことをふと思い出した。

当時お世話になっていた社長が大阪に居るときに連れて行ってくれた。

「確かその時はその社長を真似してラム酒を飲んだんです。…確か、キャプテンモルガンだったかな?」

「ラム酒か。じゃあこれ飲んでみたら?」

そういうとCENTENARIOというラムの30年ものをロックで出してくれた。

「た、高そう」

「キャプテンモルガンの30倍はいいやつだよ」

「値段怖いんですけど」

「先行投資だよ、はっはっは」
と笑っていた。

丁寧に削られた丸氷のアイスでラム酒を戴いた。

いやなアルコールの感じはなく甘さとふわっとした刺激が感じられた。

男ばかりのイブは、それはそれで楽しく過ぎていった。

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