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『ありがとう』がお金に乗って帰ってきた日

 私は国分町のとあるラウンジで、白服の仕事をしている。契約形態はアルバイト、いわゆるフリーターというヤツだ。
 先日、待ちに待った給料日がやってきた。そして同時に、予想外のニュースが待ち受けていた。『時給が50円、上がっている…!!』

 その日が給料日だという事を、私はすっかり忘れていた。
 朝?いつも通りに出勤してオープン準備を進めていると、ウキウキの店長から「今日は給料日だね♪」と告げられる。それを聞いてはじめて、なぜ財布がスカスカだったのか謎が解けた。そりゃあ給料日の当日なら、野口さんも北里さんもご不在ですよね。。。

浄化のカタチ
 給料日前日の締め作業中、天気はまさかの、止まない雨模様だった。

「あー、帰りどうしよう」
徒歩通勤の黒服の先輩が呟く。

「締め作業してれば止みますって」
私がのんきに返す。

「いやぁどうかな?そう簡単に止まないと思うけど」
渋い顔をする先輩。

「じゃあ、止まないついでに私のラーメン、付き合いますか??」

そして先輩をそそのかす事に成功した私は、仕事終わりに2人でラーメンを食べに行く事になった。
 因みに締め作業後の天気は、傘が無くても歩けるくらいに、雨は弱まっていた。

 誰かと一緒にお話しをすると、不思議とエネルギーが充電できる。
 言葉のキャッチボールが上手く行かない方とか、ただひたすらに聞き役に徹しないと会話が成り立たない方は別。けれど、気が合う方と、何のしがらみもなく、ゆっくりお話しする時間は、とっても心が休まる。そして、自分が解放される感じがして、なんというか、いい感じに浄化される。
 気が合う方は、話しを聴くのも楽しい。時折見せるリラックスしきった横顔とか、素の状態でくしゃっと笑う顔とか。相手のそんな表情を垣間見ると、純粋にホッとする。そして、癒される。
 そんな訳で、一緒にラーメン行ってくれた心優しき先輩には、もう感謝しかないのだった。


お金とありがとう
 その日の営業中に店長から耳打ちされた一言に、私は衝撃を受けた。
「先月働いた分から時給が50円上がってるから、後で社長にお礼を言っておいて!」
 高卒で働きはじめて12年。『日頃の行いが認められる』というカタチで給料が上がったのは、人生で初めての体験だった。

 今までも、仕事を通して感謝の気持ちを頂ける事が、稀にあった。
 けれど何かと『踏み台体質』な私は、いつのまにか社内の便利屋と化してしまい、気づけば体良く利用されていたりする。

 人を利用しようという下心のある方は、だいたい口が上手い。相手にとって耳障りのいい言葉が何なのかを、しっかりと熟知している。
 だからこそ、そんな人間から向けられた「ありがとう」が、口先だけの『歪んだ感謝』である事に気が付いた頃には、もう既に身を擦り減らしていて、身動きが取れない状態になってしまうのだ。

 感謝の言葉はもちろん嬉しい。そして、言葉で伝える事は大切。
 けれど、それだけではなく行動で『感謝』を差し出された時、「ありがとう」の説得力が増した。
 変な響きかもしれないが、相手の言葉を信用できる感覚があった。
 これってもしかしたら、何かのヒントなのかもしれない。

 話しは戻りますが、給料が増えるのは純粋に嬉しいなと思った、今日この頃でした。





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