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よくある偶然のようなそうでもないような話。

かなり頻繁にたまたま外でばったり出会う友人がいる。

一方的に友人と呼んで良いのか解らないのは、彼女がオタクとは無縁の世界にいるお洒落な陽キャだったから自分の中のオタクである事の卑屈さのようなものが勝手に心の壁をつくっていたのだろう。

そもそも会話の接点もあんまりなさそうなのだが、彼女は私の人生のところどころに関わっている。

一番印象的だった思い出は中学生の頃に「眉毛を抜いて(整えて)あげる!」と言われた時だ。
どんな流れでそんな展開になったのかは今となっては覚えていない。
しかしせっかく整えてくれると言うなら整えて貰おうと思い、彼女が自分のメイクポーチからピンセットを取り出すのをそのままじっと眺めていた。
何でも蒸らしたタオルを眉にあてて、暫くすると皮膚が温まって毛が抜きやすくなるらしい。良い情報を教わったと思いながら抜いて貰った。

彼女はダンス部に所属していて日本語演劇部員として私も携った高校最後の卒業演劇にも深く関係しているのだが、それらはあくまで校内の出来事だ。

実は校外でも偶然よく会っていた。

元々近所(近所というほど近所ではないが自転車で行ける距離)に住んでいるから、まぁそういう事もあるのかな・・・と納得できる部分も多いが他の友人よりも会う確率が格段に高い。

何故偶然だと言い切れるのかと言うと、待ち合わせもしていないしたまたま会った時の服装もジャンルが全く違うしお互い別の用事のついでにその場所に寄っただけだからだ。
そういう時は大抵彼女は頭から爪先までお洒落で、私はもっとマシな格好してれば良かった・・・と毎度ひどく後悔している。

ダイエットで女性用のジムに通い始めたら、やはり彼女に出会った。

自由な時間にいつでも来て良い、という形式のジムだから誰がいつ来るかは全く予想ができないし誰が入会しているのかはインストラクター以外は知らない。

なのに出会ってしまい、おまけに私は太っていたので本気で会いたくなかったのだがお茶に誘って貰ったので近くの喫茶店に一緒に入った。

どうやら結婚するらしい。

う~~~ん。自分とは雲泥の差・・・とまたも卑屈になっていたが「結婚式の二次会に来る?」と聞かれたので有難く参加した。
そこで食べたラズベリー味のマカロンが乗ったチョコレートケーキがめちゃくちゃ美味しかったのが今でも忘れられない。

しかし人妻になったという事は何となく偶然会う頻度はぐっと減るだろうなと漠然と考えていたが、意外とそんな事にはならなかった。

彼女に子供が生まれてからもコンビニの前で偶然会ったり実家からはかなり遠さのある、電車に乗って行く距離の場所でも偶然会ったりする。
だから高校を卒業してからもお互いの近況を何故か知っているような不思議な縁だった。

しかしコロナ禍となってはさすがにもう会えないだろう・・・と思っていたら、どっこい最近また会ったのだ。正確には会ったと言うよりもすれ違ったのだが。

私はマスクをつけていて、頭に帽子を被って自転車のペダルを漕いでいた。

特に何も考えずに真っ直ぐ進んでいると、彼女が旦那さんと向こうから歩いて来るのでビックリしすぎて二度見したが、声をかけなかった。
彼女は目立つ容姿だしマスクをつけいなかったのですぐに分かったのだが、見間違いの可能性もある。
悩んだ挙句に決心してSMSメールをした。LINEのIDを知らないからだ。
日時と場所の説明をして尋ねてみるとやはり本人だった。
小学生の頃から知っている存在だが本当に不思議に感じる。
そこで初めて私は自分からコロナがおさまったらお茶しようと誘った。

人生は一体何が起こるか解らないし、できるだけ直感に忠実に動きたい。