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角口圭都サックスチャンネルベストヒット2022 プログラムノート

こんにちは!サックス奏者角口圭都です!
サックスの演奏、楽しんでいらっしゃいますか?
今回の記事は、12月26日の「角口圭都サックスチャンネルベストヒット2022」コンサートのプログラムノートです!

曲解説の執筆を芸大の博士課程で勉強しているサックス奏者嵐田紀子さんにご協力いただきました。

今回のプログラムです!↓

ドゥメルスマン:オリジナル主題によるファンタジー
ピアソラ:チャオパリ
ファリャ:火祭りの踊り
カッチーニ:アヴェマリア
フィトキン:GATE
ドビュッシー:月の光
♪お楽しみ♪アルトサックス吹き比べ
リード:バラード
クレストン:ソナタ 作品19
マルティーノ編:ガーシュウィン・ファンタジー
アンコール:花は咲く


J.ドゥメルスマン:ファンタジー

J.ドゥメルスマン(1833-1866)はベルギーとの国境にほど近いフランスのHondschooteで生まれ、フルーティスト、作曲家として活躍しました。1860年に作曲された《ファンタジー》。サクソフォンという楽器は1840年代にアドルフ・サックスによって開発されたため、私たちサクソフォニストにとってかなり初期に書かれた“古典”と呼ぶべき作品です。情熱的な冒頭に始まり、シンプルながら技巧的なパッセージと優雅な旋律がカデンツを挟みながら交互に現れ、鮮やかなアルペジオで幕を閉じます。

A.ピアソラ:チャオパリ 

A.ピアソラ(1921-1992)はアルゼンチンのイタリア移民3世の子として生まれました。10代からバンドネオン奏者として演奏活動を開始し、1954年にはクラシックの作曲家を目指してフランスへ留学し、ナディア・ブーランジェに師事します。そこで自身の音楽の根源はタンゴであると助言されたことにより、これまでのタンゴの常識を覆す作品を生涯にわたって精力的に発表しました。《チャオパリ》は1955年の作品。パリの華やかな夜と、そこを去る寂しさが感じられます。

M.ファリャ:火祭りの踊り

1915年に初演された組曲『恋は魔術師』の1曲。物語の主人公は女癖の悪い夫ホセに先立たれ未亡人となったジプシーの女性、カンデーラス。悲しみに暮れる彼女に想いを寄せた若者カルメーロと恋仲になりますが、亡霊となったホセに邪魔をされます。この亡霊を追い払うため、除霊の儀式「火祭りの踊り」としてジプシーの娘達が火を囲んで踊り、成仏させるのがこの物語のクライマックス。炎が揺らめくように半音を行き来するトリルや土俗的な旋律やリズムが、情熱的かつ怪しげな情景を映し出します。

G.カッチーニ(V.ヴァヴィロフ/朝川朋之編):アヴェ・マリア

「カッチーニのアヴェ・マリア」として知られるこの作品はイタリア・ルネサンス音楽末期の作曲家、G.カッチーニ(1545-1618)によって作曲されたと思われていましたが、ロシアのギタリストでリュート奏者、そして作曲家だったV.ヴァヴィロフ(1925-1973)によって書かれ、1970年、彼自身が録音して発表した作品です。ヴァヴィロフが発表時に「作曲者不詳」としたことで誤認されるようになったとか。美しくも無力感を纏ったテーマは次第に熱を帯び、ドラマチックなラストを迎えます。

G.フィトキン:GATE

イギリスの作曲家G.フィトキン(1963-)はポスト・ミニマルの作曲家。ソプラノ・サクソフォンとピアノのために書かれたこの作品は2001年に発表されました。ピアノによって絶え間なく演奏される16分音符の上をサクソフォンの音価の長い音が空を切っていくように颯爽と駆け抜けていきます。ミニマル・ミュージックは短い音型を何度も反復したり、ずらして重ねることで聴き手をしばしば不思議な聴覚体験に誘いますが、徐々にサクソフォンの音数も増えていき、拍子に変化をつけながら駆け抜ける息つく間もないアンサンブルは、聴き手にも爽快感をもたらしてくれることでしょう。

A.リード:バラード

吹奏楽の名曲《アルメニアン・ダンス》など数多くの作品を作曲したアメリカの作曲家A.リード(1921-2005)。この作品はアルト・サクソフォンと吹奏楽のために書かれたもので、1955年に楽器メーカーからの委嘱を受けて作曲され、1958年、アメリカのクラリネット兼サクソフォン奏者、ヴィンセント・アバト(1919-2008)によって初演されました。叙情的な旋律や温かな響きが微細に移り変わってゆく色彩の美しい作品です。

P.クレストン:ソナタ 作品19

P.クレストン(1906-1985)はイタリア系移民のアメリカ人作曲家。このソナタは1939年にアメリカのサクソフォン奏者セシル・リースンに献呈されました。
《ドゥメルスマン:ファンタジー》と並んで、クラシックサクソフォンの代表的な作品です。これぞサックス!というべきかっこよさ、泣きの音色、鋭敏さ・・・などの持ち味が存分に生かされています。作品は3楽章形式。第一楽章「with Vigor(精力的に)」、第二楽章「with tranquility(静穏に)」第三楽章「with gaiety(陽気に)」。

J.ガーシュウィン作曲(R.マルティーノ編曲): ガーシュウィン・ファンタジー

J.ガーシュウィン(1898-1937)の有名な作品によるメドレーで、1991年、アメリカの作曲家R.マルティーノによってサクソフォニスト、D.アンダーウッド(1948-)と米海軍軍楽隊のために作曲されました。《Strike Up the Band!》、《Summertime》、《It Ain't Necessarily So》、《Oh, Lady be Good!》、《Fascinating Rhythm》、《Rhapsody in Blue》、《I Got Rhythm》が登場します。美味しいところを集めたガーシュウィン7曲聴き比べセット(日本酒飲み比べセットならぬ?)のような作品です。


コンサート内では、3本の吹き比べもしました!こちらのレポはまた後日!

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