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2022年を振り返る~ハーマーとドリー編

色々あったいわきFC。この1年を数回に分けて振り返ってみたい。

J3優勝&J2昇格という最大級のトピックの一方で、やはり外せないのはハーマー&ドリーの登場だろう。いわきサポーターばかりでなく、多くのマスコットファン、一般層にまで人気を広めたハーマーとドリーの誕生から、彼らの宿命を追ってみた。

告知は唐突に

告知は唐突だった。J3参入が決定した2021年11月25日スタートしたクラウドファンディング。そのプロジェクト挑戦にあたって下記文章が掲載された。クラブカンファレンスで度々質問にあがっていたマスコット計画が、遂に明らかになった。

現在、来季のJ3参入へ向けて、準備していることがあります。
一つ目は、クラブ公式「マスコットの誕生」です。
Jリーグ参入を機に、ついにクラブ公式マスコットが生まれます。その姿は、来シーズンの開幕戦でお披露目予定です。今回のプロジェクトに支援いただいた方は、マスコットに名前をつける時の投票に参加していただくことができます。待望の公式マスコットの誕生に是非多くの方が関わっていただきたいと思っております。

https://readyfor.jp/projects/iwakifc2021

Twitter界隈も「J3昇格」と同時にマスコットの話題で大きな盛り上がりをみせた。様々な予想合戦がスタートする中、この時点でフタバスズキリュウを予想しているツワモノも現れた。

すでにお見事な人もいれば、ねもっちは残念(笑)
そしてクラウドファンディングの終了(達成)から1ヶ月強、サポーターは妄想を膨らませながらその時を待つことになる。

1本の動画が与えた衝撃

1月30日に行われた2022年新体制発表会。その最後に公開された動画の衝撃がサポーターを襲った。

いわきFCというクラブは情報管理がかなり徹底していると感じている。新体制発表会を前に行われた「スポーツによる人・まちづくり推進協議会」の交流会に参加させていただいたのだが、その中の質問コーナーでも「どんなマスコットか、かっこいいか、かわいい系かだけでも」という質問に対してクラブはノーコメントを貫いた。マスコットプロジェクトを絶対に成功させる、動画を公開するまでは一切情報は出さない、そんな意志を感じた。

さて公開された約4分の動画はさすがのクオリティ。散りばめられた仕掛けは、今振り返ってみても面白いが、初見には謎だらけだった。「かわいい」「大久川」「ばくたちがいるよ」―ぼく、、たち?そして呼び出されるタテノ。大久川が出てきた段階で「フタバスズキリュウ」と一発で分かった地元サポーターも、一体どんなフタバスズキリュウなのか、あの長い首がどう表現されるのか分からなかったことだと思う。まさか首の短い首長竜を持ってこようとは。

この段階でサポーターは動画を、単なる「マスコットプロジェクト」の一環として、第三者的な視点で眺めているに過ぎなかった。

傍観者から当事者へ

「つづく」というから続くのだろう…と思いながら待つしかないいわきサポ。卵を孵化させるというテーマと開幕戦までのスケジュールから、それなり長い動画になるのだろうなという覚悟は出来たものの、どんなスパンで出てくるのかは想像も出来ない。そんな中、約1週間を経てEpisode2が公開された。以後サポーターは「(ガチャッ)あっ!!!デデデデン♪」のジングルとともに繰り広げられる選手やスタッフによる茶番劇を毎回追うことになる。

3~4日おきに公開される1分程度の動画は、選手の練習に無理やり使われてしまう卵と、卵を必死に守ろうとするタテノの奮闘を中心に展開。闇落ちしたイワシミズの策略を掻い潜りながら、卵の謎の正体が少しづつ明らかになっていく。2ヶ月弱という「長い前振り動画」は、傍観者であったはずの視聴者の心境を次第に変化させていった。短い時間に分割されて連続的に公開していく「じらし手法」は、タテノと卵を見守り、同時に卵を慈しむ感情を視聴者に与えはじめる。そして傍観者はいつのまにか、孫の誕生を待ちわびる祖父母のような当事者へと変わっていった。この期待の高め方はさすがというほかなく、誕生前に「生まれたら思いっきり愛でる」という意識をサポーターの間にしっかりと根付かせることに成功した。

ホーム開幕戦前夜の衝撃

動画「最終話」がアップされることなく「孵化予定日」のホーム開幕戦前日を迎え、サポーターの間にはもやもやとした物が残り始めた3月19日午後11時25分、最終話が公開された。「この時間かよ!!」と思う間もなく、動画を視聴するサポーターたち。

これまでの日々を振り返るタテノ。
「アリガト、タテノ」という言葉とともに、8500万年前と現代を繋ぐ物語が紙芝居で展開される。今振り返ると、最初の動画の大倉代表の「お告げ」も最終話の紙芝居も、ハーマーによるテレパシーだと理解出来る。

紙芝居では首の短いクビナガリュウが遥か未来に誕生するいわきFCでフィジカルを鍛えて首を伸ばすために、過去に戻る可逆的機能を持った卵型オーパーツ内で眠りに就き、いわきFCが誕生した現代に蘇るというバカバカしいけど、どこか泣けるストーリーが展開される。こういうの好きでしょ?ええ大好きです。

動画内の時が3月20日午前0時を迎える。
「時間です」タテノ氏の言葉に呼応するかのように変化する卵…型タイムマシン。そして登場するマスコット。

人型のフォルムを確認
太しっぽ系を確認

公開された直後にもツイートしたが…こんな動画を開幕戦前夜に打ち込まれて、眠れるわけがない。なんでこんな時間に打ち込んでくるんだ、いやこれは動画内での孵化予定時間と現実の時間をリンクさせるという仕掛けに違いない!なんて動画だ、凄い…と思っていたのだが、実はなぜこの時間だったのかを後日知ることになるが、それは書かずにいよう。

とにもかくにも大団円を迎えた動画の一方、現実世界では翌日には「本物」が公開されるという状況。出産予定日なのである。しかも娘は「じいちゃんばーちゃん、病院で待ってていいよ」と言ってくれている。明日には孫…もといマスコットの顔も見ることが出来る。動画を見たサポーターの誰もが、眠れない夜を抱いて寝たことだろう。ZARD。

登場したマスコット

試合開始直前、場内にいわきFCの公式テーマ曲・加藤ミリヤの"Walk To The Dream"が流れ、会場中のファン、サポーターが一斉に白い幕のかかったメインスタンド入場口を見つめる。幕が落ち、スモークの中をフラッグを持ったマスコットが手を振りながらゆっくりと登場する。

この時点で涙腺がやばいのだが、はっきりと姿が見えた時の周辺の(主に女性)サポーターによる絶叫と「可愛い!!」という声がずっと耳に残っている。
あぁやっと生まれてくれた。なんとなくだけど「おかえり」って言葉が浮かんだのよ。

それにしてもなんだあの頭の上のたこやきっぽい亀は…あ、首長竜乗せてんのか。興奮してよく見てなかったけど、確かにオーパーツから登場したドリーにタテノ氏が何か乗せてるような様子も写ってた。匂わせてはいたんだよ、やっぱあの動画凄いわ。しかも何これ、キレッキレでダンスはするし動き1つひとつがあざと可愛いし、やんちゃっぽいところもあるし。これは凄いマスコットが登場したなぁ…というのが第一印象だった。

その後のハーマー&ドリーの人気は言うまでもない。
いわきFCファン、サポーターの増加と別のベクトルでハーマーとドリーの人気も高まっていくことになる。

いつか帰る場所

様々な映画や小説で描かれるタイムリープ物は、ある部分で宿命を持っている。タイムパラドクスの発生=因果律の矛盾を抑止する為に、時間を超えて未来や過去を訪れた登場人物は、いつかは「帰るべき場所・時代」へと帰っていく、ということ。

過去に戻る機能のみを有した卵型オーパーツによって8500万年前からやってきたハーマーとドリーも、いつかは彼らがいた時代に戻ることになる―ということを考えただけで号泣ものなわけだが、時限的というエッセンスが入っているからこそ背番号決定のような動画がいきてくるし、様々な感情をサポーターやファンを中心とした視聴者層に届けることに繋がる。とはいえ、書くと野暮になるから書かないけれど、そんな「エッセンス」は気にせずにハーマーとドリーにはいわきFCに居続けるのだろうし、そんなエッセンスをも胸に抱きながら、サポーターは2023年もまたハーマーとドリーから目を離せなくなるのだろう。

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