KEI_SUZUKI_アシュペー

自分を潤すだけなら説明はいらない

表参道と青山通りをL字型に結ぶ小路があり、素敵な店々が立ち並んでいる。このサブストーリトを「青参道」と呼ぶそうです。

名付け親はアシュ・ペー・フランス。30年の旅の先々で出会った感動やクリエーションが詰まった系列ショップが界隈には23店舗。

H.P.FRANCEがラフォーレ原宿に1号店をオープンしたのが84年。それから36年経ちいまや直営が65店舗。当初の社名は「原宿プロジェクト」。頭文字のH.P.はその名残であり、原宿への愛着がうかがえます。

では社名につくフランスはなぜ?

やがて店舗が増えて、フランスで買い付るようになる。現地のフランス人女性が「これ素敵よ、どうかしら」と勧めてくるものたちは、少し変わっていた。例えば、針金でぐるぐる巻かれただけの指輪とか、小さくて何も入らないハンドバッグだったり。

”なるほど、高価なものが美しい宝石とは限らないし、機能性が備わっているものが高価とも限らない。”

そんな驚きと洗礼を持ち帰ると、この感性は原宿の文化と親和性が高いことに気が付く。

そういえば、90年代のぼくは、フリーマーケットでアンティークを掘り出し、古着屋で買ったクリームイエローのセーターにグレンチェックのモッズパンツを合わせ、耳にはピアス。4色のペンキを使って、自分で塗ったドクターマーチンを履いて、髪はいつも栗色だった。

いつからか「好きな街は?」と聞かれると「原宿」ではなく「銀座」と答えるようになったけど。改めて青参道を歩くと、"自分だけの正解"を知っていて、それを楽しんだ、あの感覚が蘇る。

説明という手段は社会生活において必要だけど、ファッションは説明できないから価値がないとは限らない。

本当は、自分を潤すだけなら、説明なんていらない。

”よくわからないけど素敵。”

そう思えた時に、すでにこの心は満ちている。


スクリーンショット 2020-02-04 10.27.45

青参道にあるH.P.FRANCE「水金地火木土天冥海」にて。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?