小澤恵右

静岡市葵区に住んでいる80歳の男です。ネット碁や源氏物語を楽しんでいます。お茶畑の撮影…

小澤恵右

静岡市葵区に住んでいる80歳の男です。ネット碁や源氏物語を楽しんでいます。お茶畑の撮影・サッカーにのめり込んでいます。近頃は、コロナのこともあって家にこもりがち。NHKドラマをよく見ます。源氏物語の鑑賞や批評や意見を投稿するつもりです。よろしくお願いします。

記事一覧

🔲 荒廃した末摘花邸のイメージ 「蓬生の巻」1

源氏が、明石・須磨で苦難のわび住まいをしていた頃、京の女たちも源氏への思いで、悲しい日々であったことは様々に語られてきました。 しかし、忘れられてしまった姫君も…

小澤恵右
7か月前

🔲 六条御息所の遺言 「澪標の巻」3

「澪標の巻」の前半は、明石の上のお話が中心となっていて、後半は、伊勢から帰京した六条御息所と源氏のお話です。 御息所に恋の手ほどきをしていただいた源氏も28歳。…

小澤恵右
7か月前
2

🔲 脇役ー明石の姫君の乳母「澪標の巻」2

3月16日、待望の姫君が明石に誕生。源氏の喜びは並々ではありません。子供が少なかった源氏にとって、この度は、姫君ですからなおさらです。 源氏は、かつて宿曜が語っ…

小澤恵右
8か月前
5

🔲 弟源氏への劣等感 兄朱雀帝「澪標の巻」

明石から帰京した源氏は、内裏に参上し兄朱雀帝と心置きなく語り合い、喜びを伝えます。話を聞いている朱雀帝の胸中には、様々な思いが去来するのでした。 源氏を須磨・明…

小澤恵右
8か月前
1

🔲 「ちかき几帳のひもに、箏の琴のひき鳴らされたる」   明石の娘の日常生活  「明石の巻」

明石の浦では秋風が吹き始め、源氏は、ひとり寝のわびしさに耐えられません。明石の入道にその気持ちを話して、約束していた入道の娘(明石の上)を自分のところに来るよう…

小澤恵右
8か月前
1

🔲 源氏物語の巻末の言葉「末摘花の巻」5

  「源氏物語」の最後はどのようになっているか、興味をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。五十四帖の終わりとしてはとてもあっけないものなんです。 浮舟を連れ戻しに…

小澤恵右
1年前

🔲 滑稽談への構想「末摘花の巻」4

高貴な身分で零落し、悲嘆に暮れている姫君。こういう姫君の話を聞いただけで、男は、異常な関心を持ってしまうようですよね。宇治の姫君に命懸けで恋をした薫や匂宮は、そ…

小澤恵右
1年前

🔲 不美人といわれる末摘花とは?「末摘花の巻」3

セレブたちが、美しさを競い合う優雅な貴族社会を舞台とする「源氏物語」にはたくさんの美人が登場しています。紫の上・藤壺・桐壺更衣・葵上・夕顔・朧月夜・秋好む中宮・…

小澤恵右
1年前
1

🔲 時の記述について「末摘花の巻」2

父、常陸宮も死に、残された末摘花は、親友の大輔の命婦に悲しい気持ちを打ち明けます。大輔の命婦は、「いとよきおりかな」と、その寂しさにつけ込むように、源氏を導き入…

小澤恵右
1年前
1

🔲 大輔の命婦について 「末摘花の巻」1

夕顔の死後、性懲りもなく、夕顔のような女を求めていた源氏に「色好み」と評判の大輔の命婦が、故常陸の宮様の姫君を紹介することから「末摘花の巻」の物語が始まります。…

小澤恵右
1年前
1

🔲 若紫(後の紫の上)の言葉を初めて耳にした源氏は? 「若紫の巻」5

北山の庵から帰京した尼君を、源氏は、訪問します。時雨の降る夜の事でした。荒れ果てた家でひっそりと暮らしている様子です。 尼君や女房達は恐縮して、源氏に応対してい…

小澤恵右
1年前

🔲 御代りとしての紫の上と浮舟の話「若紫の巻」4

源氏が、生涯の思い人として慕う藤壺は、父帝の妃。禁断の恋に苦悩する源氏が、藤壺の御代わりとして八歳の若紫を理想的に育てるというのが「源氏物語」の一つのテーマとな…

小澤恵右
1年前

🔲 源氏は、尼と少女を垣間見た「若紫の巻」3

源氏が、若紫(後の紫の上)を初めて目にしたのは病気療養のために北山の山寺に出かけた折の事でした。その時の様子は 日も、いと長きに、つれづれなれば、夕暮れのいたう…

小澤恵右
1年前
2

🔲 北山の風景と落差の恋物語「若紫の巻」2

北山の山寺へ、病気療養のために出かけた青年源氏は、都とは違った山里の春の風物に心を奪われてしまいます。遅咲きの山桜の美しさは今まで見たこともないものでした。 僧…

小澤恵右
1年前
3

🔲 紫式部、昔物語への挑戦「若紫の巻」1

「わかむらさき(若紫)」という言葉を耳にしたとき、平安時代の貴族や知識人階層の人なら「伊勢物語」を脳裏に浮かべたはずです。この美しい詞は、「伊勢物語」の最初のお…

小澤恵右
1年前
7

🔲 青春の挫折 「夕顔の巻」5

夕顔は、怪死し、空蝉は、夫と伊予の国へと旅立ちます。取り残された源氏の寂しくもつらい秋の暮れ。源氏はしみじみと自己を振り返ります。その様子が、次のように語られて…

小澤恵右
1年前
🔲 荒廃した末摘花邸のイメージ 「蓬生の巻」1

🔲 荒廃した末摘花邸のイメージ 「蓬生の巻」1

源氏が、明石・須磨で苦難のわび住まいをしていた頃、京の女たちも源氏への思いで、悲しい日々であったことは様々に語られてきました。

しかし、忘れられてしまった姫君も何人かはいたようです。「蓬生の巻」では、その中で、末摘花に焦点が当てられて物語が展開することになります。

父常陸宮は、死んでしまって、源氏だけを頼りとしていた姫君にとって、源氏の隠棲はとんでもない苦難となってしまうのでした。評判はもとよ

もっとみる
🔲 六条御息所の遺言 「澪標の巻」3

🔲 六条御息所の遺言 「澪標の巻」3

「澪標の巻」の前半は、明石の上のお話が中心となっていて、後半は、伊勢から帰京した六条御息所と源氏のお話です。

御息所に恋の手ほどきをしていただいた源氏も28歳。年上の御息所は、35歳になっていました。荒れ果てた六条の大邸宅を修理・手入れをして、源氏は、彼女と娘の斎宮(19歳)を迎えます。しかし、源氏の訪問が絶えて、寂しい秋の頃、彼女は、死期を悟って、尼になってしまったのです。源氏は、あわてて御息

もっとみる
🔲 脇役ー明石の姫君の乳母「澪標の巻」2

🔲 脇役ー明石の姫君の乳母「澪標の巻」2

3月16日、待望の姫君が明石に誕生。源氏の喜びは並々ではありません。子供が少なかった源氏にとって、この度は、姫君ですからなおさらです。

源氏は、かつて宿曜が語った言葉を思い出します。

藤壺女御との秘密の御子は、冷泉帝となり、葵上との間の御子・夕霧は順調に成長しています。ですから、宿曜の言葉の通りなら、明石の上との間に生まれたこの御子は、后となり、源氏一族の繁栄を約束してくれるのです。

大切な

もっとみる
🔲 弟源氏への劣等感 兄朱雀帝「澪標の巻」

🔲 弟源氏への劣等感 兄朱雀帝「澪標の巻」

明石から帰京した源氏は、内裏に参上し兄朱雀帝と心置きなく語り合い、喜びを伝えます。話を聞いている朱雀帝の胸中には、様々な思いが去来するのでした。

源氏を須磨・明石へ流す原因を作ったのは、母弘徽殿大后一族です。常に源氏の敵役として存在していたのです。優しく美しい源氏は、かけがえのない弟なのですが、源氏が人々に称賛されればされるほど、我が身のコンプレックスは大きくなってしまうのです。

心穏やかな朱

もっとみる
🔲 「ちかき几帳のひもに、箏の琴のひき鳴らされたる」   明石の娘の日常生活  「明石の巻」

🔲 「ちかき几帳のひもに、箏の琴のひき鳴らされたる」   明石の娘の日常生活  「明石の巻」

明石の浦では秋風が吹き始め、源氏は、ひとり寝のわびしさに耐えられません。明石の入道にその気持ちを話して、約束していた入道の娘(明石の上)を自分のところに来るようにと催促します。しかし、聡明な娘は、身分違いをよくよく思案して、源氏のところに行くことを拒み続けているのです。

八月十三日の月の美しい夜、入道は、ひそかに源氏に話をつけて、娘のところへ忍び込ませます。女との語らいには自信満々の源氏ですが、

もっとみる
🔲 源氏物語の巻末の言葉「末摘花の巻」5

🔲 源氏物語の巻末の言葉「末摘花の巻」5

 

「源氏物語」の最後はどのようになっているか、興味をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。五十四帖の終わりとしてはとてもあっけないものなんです。

浮舟を連れ戻しにやった小君の残念な報告を受け、源氏は、考えます。「誰かが浮舟を小野の里に隠しおいたのではなかろうか。自分が宇治に、浮舟を、昔見捨てておいた体験でお考えになされる」ということです。となっています。

長編の大作ですから、ハッピーエンドの結

もっとみる
🔲 滑稽談への構想「末摘花の巻」4

🔲 滑稽談への構想「末摘花の巻」4

高貴な身分で零落し、悲嘆に暮れている姫君。こういう姫君の話を聞いただけで、男は、異常な関心を持ってしまうようですよね。宇治の姫君に命懸けで恋をした薫や匂宮は、その典型かもしれません。

若い源氏も、「雨夜の品定」で、恋物語の先輩の左馬頭などから聞かされた話に今まで知らなかった世界がある事を知らされたのです。葵上や藤壺や六条御息所とは、全く違った姫君が自分を待ち受けているのではないかと。

源氏は、

もっとみる
🔲 不美人といわれる末摘花とは?「末摘花の巻」3

🔲 不美人といわれる末摘花とは?「末摘花の巻」3

セレブたちが、美しさを競い合う優雅な貴族社会を舞台とする「源氏物語」にはたくさんの美人が登場しています。紫の上・藤壺・桐壺更衣・葵上・夕顔・朧月夜・秋好む中宮・浮舟…

しかし、彼女たちの一人一人について考えると確かなイメージを持つことができないのが不思議です。その容姿など明確に思い出すことができません。これは、私の感想ですが、皆さんはいかがですか。

教養とか優しい思いやりとか従順であるとか趣味

もっとみる
🔲 時の記述について「末摘花の巻」2

🔲 時の記述について「末摘花の巻」2

父、常陸宮も死に、残された末摘花は、親友の大輔の命婦に悲しい気持ちを打ち明けます。大輔の命婦は、「いとよきおりかな」と、その寂しさにつけ込むように、源氏を導き入れ、末摘花の琴の演奏を聞かせることに成功します。そして、末摘花と源氏の恋物語は進行していくわけですが、そのことについては後ほど。

物語の出発に「八月十余日」という日付が明確にされています。現代の小説ではこのような時の記述は、余ほどの意味を

もっとみる
🔲 大輔の命婦について 「末摘花の巻」1

🔲 大輔の命婦について 「末摘花の巻」1

夕顔の死後、性懲りもなく、夕顔のような女を求めていた源氏に「色好み」と評判の大輔の命婦が、故常陸の宮様の姫君を紹介することから「末摘花の巻」の物語が始まります。「末摘花の巻」の物語の展開に重要な働きをする大輔の命婦とは、どのような人物だったのでしょうか。

源氏にとって、惟光の母大弐の乳母の次に大切な乳母であった左衛門の乳母の娘が大輔の命婦という事なんです。「大輔」というのは、父が皇族の血統で兵部

もっとみる
🔲 若紫(後の紫の上)の言葉を初めて耳にした源氏は? 「若紫の巻」5

🔲 若紫(後の紫の上)の言葉を初めて耳にした源氏は? 「若紫の巻」5

北山の庵から帰京した尼君を、源氏は、訪問します。時雨の降る夜の事でした。荒れ果てた家でひっそりと暮らしている様子です。

尼君や女房達は恐縮して、源氏に応対しています。障子の向こうから尼君の心細そうな声が聞こえてきます。

源氏は、好色な男に見えぬように注意しているのですが、それでも、やはり若紫の事が気になります。一声でもいいから若紫の声を聞かせてと女房にお願いするのですが、女房はそっけなく「若紫

もっとみる
🔲 御代りとしての紫の上と浮舟の話「若紫の巻」4

🔲 御代りとしての紫の上と浮舟の話「若紫の巻」4

源氏が、生涯の思い人として慕う藤壺は、父帝の妃。禁断の恋に苦悩する源氏が、藤壺の御代わりとして八歳の若紫を理想的に育てるというのが「源氏物語」の一つのテーマとなっていることは周知のとおりです。

若紫を見初めた時から、その美しさが藤壺と通じていることを認知していたのです。

源氏が、若紫について詳しく調べると、彼女は、藤壺の兄の兵部卿の宮の子供であることが分かります。ですから、似ているのも当然です

もっとみる
🔲 源氏は、尼と少女を垣間見た「若紫の巻」3

🔲 源氏は、尼と少女を垣間見た「若紫の巻」3

源氏が、若紫(後の紫の上)を初めて目にしたのは病気療養のために北山の山寺に出かけた折の事でした。その時の様子は

日も、いと長きに、つれづれなれば、夕暮れのいたう霞たるに紛れて、かの小柴垣のもとにたち出で給ふ。人々は、かへし給ひて、惟光の朝臣と、のぞき給へば、たゞ、この西おもてにしも、持仏すゑたてまつりて行ふ、尼なりけり。・・・・・・ 

と描かれています。西日に照らされて室内が明るくなっていると

もっとみる
🔲 北山の風景と落差の恋物語「若紫の巻」2

🔲 北山の風景と落差の恋物語「若紫の巻」2

北山の山寺へ、病気療養のために出かけた青年源氏は、都とは違った山里の春の風物に心を奪われてしまいます。遅咲きの山桜の美しさは今まで見たこともないものでした。

僧房からの眺めも興味深いものです。つづら折りの下の方に小柴垣の風流な住まいの家も見えます。供人に聞くと、僧都が二年ほど籠っているところだと答えます。でも、美しい女の子などが何人か見えます。女房や女童もいるようですという供人もいます。どんな人

もっとみる
🔲 紫式部、昔物語への挑戦「若紫の巻」1

🔲 紫式部、昔物語への挑戦「若紫の巻」1

「わかむらさき(若紫)」という言葉を耳にしたとき、平安時代の貴族や知識人階層の人なら「伊勢物語」を脳裏に浮かべたはずです。この美しい詞は、「伊勢物語」の最初のお話に出てきます。

この「伊勢物語」の冒頭の部分を暗記している方も沢山いらっしゃるのではないでしょうか。

「源氏物語」54帖のそれぞれの巻名がどのようにして付けられたかについては諸説あります。しかし、「源氏物語評釈」で玉上琢弥氏が述べてい

もっとみる
🔲 青春の挫折 「夕顔の巻」5

🔲 青春の挫折 「夕顔の巻」5

夕顔は、怪死し、空蝉は、夫と伊予の国へと旅立ちます。取り残された源氏の寂しくもつらい秋の暮れ。源氏はしみじみと自己を振り返ります。その様子が、次のように語られています。

「夕顔は、死んでしまい、もう一人の恋人・空蝉は、今日、夫と共に伊予の国へ下ってしまう。私一人を残して、冥途と伊予と。知らない世界へと旅立って行く。そんな寂しい秋の暮れであるよ。」一人取り残された源氏の苦しい心が表現された歌です。

もっとみる