なぜ白人男性が連れているアジア人女性は○○なのか?

ある日私は、友人である白人のアメリカ人男性と、アジア食材のお店に行きました。買い物をしていると彼が突然、「あの女の子かわいい。あの緑の服着た子」と言いました。お互い彼女がいない私と彼は、よく恋愛の話をしていました。彼からそんなことを言われたのは初めてだったので、私はどんな女性だろうとわくわくしながら振り返りました。レジの前で緑の服を着た、東洋人の女性が立っています。しかしその瞬間、私は非常に戸惑いました。意味がわからなかったのです。つまり、こんなことを言うのは大変失礼なのですが、私にはその女性がかなりの不細工に見えたのです。

私は日本に住んでいる時、自分の「女性の顔を評価するセンス」について疑ったことはありませんでした。私がかわいいと思う女性は、周りの男友達もかわいいと思っている。それはごく当たり前のことです。もちろん人それぞれ顔の好みはありますが、私が不細工だと思っている女性を、友達がかわいいと思うことはまずありませんでした。しかし、それはほぼ単一民族で、多くの価値観も共有されている日本人同士では普通でも、相手がアメリカ人となると話は別です。私はアメリカ人男性と女性の話になった時に、意見が一致したことがありません。それも私にとって、「美人だとは思うけど好みではない」というレベルではなく、「どこからどう見ても不細工としか言えない」というような女性を、アメリカの友人たちはかわいいと言うのです。以来私は自分のセンスを疑うようになり、女性の顔を評価しないようにしています。どの女性が美人なのか不細工なのか、もう私にはわからなくなってしまいました。

しかしそれにしても、どうしてこんなに異性の顔の評価が違うのでしょうか?人は、異性の顔をどのような基準で選んでいるのでしょうか?学術的にはまだ結論は出ていませんが、これまでの研究では、二つの要素が重要であることがわかっています。左右の対称性と、自分の顔との類似性です。

左右対称な人は健康的で魅力的

動物にとって、自分の遺伝子を受け継ぐ子供を残すことは、そのために生きていると言っても過言ではないくらい重要です。よってパートナーを選ぶ時には、遺伝的に優れた相手が魅力的に見えるのは当然です。せっかく子供を残しても、遺伝的欠陥のために生き残れなかったら意味がありません。遺伝的に優れているかどうかは、顔や体が左右対称であるかどうかでわかり、それを手がかりとして相手を選んでいるのではないかと推測されています。動物は生活するうえで様々なストレスに晒され、それが顔や体の対称性に現れます。特に影響するのは、病気につながる活性酸素による酸化ストレスと、病原菌やウイルスによる感染です。対称性が高いということは、それだけ健康で病気やストレスに強い遺伝子を持つ優秀な個体ということです。

ニホンザルの近縁のアカゲザルの顔写真を撮影し、デジタル処理して対称性を計算し、その個体の健康度と比較した研究では、左右対称な顔のサルほど健康状態が良いことがわかっています (1)。これは人間でも同様で、耳や指の長さなどの左右対称性と体内の酸化ストレス度を比較した研究では、対称性が高い人ほど体内の酸化ストレスが低く、また酸化ストレスが低い人ほど、魅力的な見た目だと思われていることが判明しています (2)。 つまり、遺伝的優秀性やそれによる健康状態は、外見に現れるということです。サルが異性の顔を見て、「うわー超イケメン!」などと思っているかどうかは不明ですが、「左右対称な顔=子作りのパートナーとして最適」であることは予測できます。

「美しさ」とは社会の中での価値観

しかし野生動物ではない人間にとっては、左右の対称性が決定的な魅力とは思えません。「薄めの顔がタイプ」「キレイ系よりかわいい系」と言う人はいても、「対称的な顔が好み」と言う人には会ったことがありません。世間的にも対称性が話題になることはほとんどなく、それよりも顔や目の大きさ、一重か二重か、鼻やあごの形などの方が重要に思われます。冒頭の「緑の服を着たアジア人女性」を私は失礼にも不細工だと思いましたが、それは左右対称ではないという意味ではありません。目や鼻などのパーツの話です。しかし私の友人は美人だと評価したので、パーツが私の好みではなかっただけで、左右の対称性は高かったのかもしれません。結局「どの顔が美しいのか」というのは社会の中での価値観であり、国や地域、民族や時代によって変化するのです。つまりこの社会ではこういう顔が美しいとされているから自分もそう評価しているだけで、普遍的なものではありません。日本でも平安時代では切れ長の目の女性が美人だとされていましたが、現代では間逆の二重で大きい目が良いとされています。目が一重か二重かというのは生物としては重要ではなくどちらでも良いので、単に社会的な評価基準です。異性を自分を飾るためのアクセサリーとして見ている、あるいは社会的に評価されている見た目の異性を連れて歩いて自慢したいという人は、相手の見た目の美しさにこだわってしまうかもしれません。しかし結婚して子供を作るパートナーを選ぶ時は、生物的に不必要なほど見た目にこだわるのは意味がありません。「イケメンの子供を産みたいから」と思って相手の見た目にこだわっても、子供が暮らす時代や社会では、美しさの基準が変わってしまっているかもしれないのです。

人間は自分に似た異性の顔を魅力的だと思う

さて異性の顔に関しては、左右の対称性よりも重要な要素があります。それは、相手の顔が自分と似ているかどうかです。人間は自分と似た異性の顔を魅力的と思い、実際に伴侶として選びやすいことが研究でわかっています。男女の被験者に様々な異性の顔を見せ、それぞれ自分のパートナーとしてどの位魅力的かを評価させる実験では、男女共に自分とは似ていないが多くの人が魅力的と評価する顔を最も高く評価するものの、世間的な評価が同じ顔の中では、自分と似ている顔をそうでない顔よりも魅力的と評価すると判明しています (3)。つまり、芸能人や地域で評判の美人やハンサムはどの異性から見ても魅力的に見え、そうでない普通の一般的な顔の人では、自分と似ているかどうかが評価のポイントになる、よって人それぞれ好みが異なるということです。ノルウェー人のカップルを対象にした研究では、パートナーの顔をコンピューターで加工し、より男性的にした顔や女性的にした顔などを作成して見せたところ、男女共に自分の顔を22%混ぜた顔が最も魅力的と評価したと判明しています (4)。左右をほぼ対称にした顔や、最も魅力的と評価される人の顔と合成したものより、「相手の顔78%+自分の顔22%=最も魅力的」と評価しています。自分と似ているから魅力的と感じるのはもちろん自分だけなので、他の人が誰も評価しなくても、自分にとっては好みの顔になります。

似ているから魅力的に見えるということは、相手から見ても自分の顔は魅力的に見えているということです。お互いに顔が好みで惹かれ合えば、自然にうまくいく可能性も高まります。つまり、「狙うなら自分と似た顔の異性にしろ」ということです。誰もが認める美男美女は確かに魅力的で狙いたくなりますが、あなたが普通の顔の場合、相手にとっては自分と似ていないので最も魅力的ではない顔に見えるのです。外見の印象では相手から最低の評価しかもらえないのに、そこから大逆転して心を奪うのは奇跡のようなものです。面食いのせいでいつも失敗している人は、まずその間違った戦略を見直す必要があるでしょう。

伴侶の選択にはDNAの距離感が重要

「似たもの夫婦」というのは、一緒に生活するうちにだんだん考えや嗜好が似ていくこともあるでしょうが、そもそも男女は外見が似ている者同士が惹かれ合って結婚することが多いのです。なぜ外見が似ていると惹かれるかというと、それは自分とDNAが似ているからです。人間を含めた動物は、自分と似たDNAを持つ異性を伴侶に選ぶと推測されていて、実際にアメリカの白人夫婦を調査した研究では、ランダムに選んだまったくの他人よりも、配偶者のDNAは自分のDNAによく似ていたと報告されています (5)。子供を作る伴侶を選ぶ時には、DNAの距離感が重要です。例えば、自分の実の兄弟や親など、自分とあまりにもDNAが似た異性は子供を作る相手には選びません。それは、遺伝的な異常を防ぐためです。遺伝子は誰でも2セット持っていて、ひとつは母親から、もうひとつを父親から受け継ぎます。しかしDNAは傷つきやすく、遺伝子が壊れてしまうことがあります。その時に例えば母親からもらった遺伝子が壊れていても、同じ遺伝子の父親からもらったものが正常ならば、子供に異常が起きないことが多いのです(起きることもあります)。父親と母親のDNAがあまりにも近い場合、壊れた遺伝子も共有していることが多く、生まれた子供の遺伝子は2セット両方壊れている、つまり何らかの病気や異常を持つ可能性が高くなります。

一方で、DNAがあまりにも離れた異性も伴侶には選びません。これは、環境に適応するためだと考えられています。ある環境に住む動物は、その環境に適応しています。同じ動物でも違う環境ならば、若干体質や性質が変わってきます。つまりDNAは離れています。あまりにもDNA的に離れた相手と子供を作ったら、その子供は親とは違う性質を持つ可能性が高く、そのために今いる環境に適応できないかもしれません。その環境に適応した者同士、似たDNAを持つ者同士で子供を作れば、子供は両親に共通する性質を持つので、そのまま環境に適応できるということです。よって生物学的には、自分とDNAが似ているけど似すぎていない、つまり肉親ではなく他人だけど顔が似ている異性が理想的、ということになります。

異人種間の組み合わせには偏りがある

しかし、ここである疑問が生じます。人間の住む社会は大自然の中にはなく、特に先進国の大都市では生活環境がどの国もあまり変わりません。民族が違えばDNAは大きく離れますが、東京に住む日本人と、ニューヨークに住む白人は、それぞれ似たような環境で生活しています。そして結婚して生まれたハーフの子供が、そのどちらの環境にもなじめないとは思えません。つまり、現代の人類にとっては「DNAの距離感」はそれほど重要ではないのではないか、ということです。実際に近年のアメリカやイギリスなど、移民が多く住む国では、異なる人種間の結婚が増えています。同じ人種同士の結婚の方がまだ多いものの、異なる人種間の結婚は年々増えています。人種が違うと顔はあまり似ていませんが、関係ありません。しかしここで別の疑問が生じるのですが、異人種間の結婚には偏りがあり、なぜか均等ではないことがわかっています。

アメリカに滞在して感じるのは、「白人男性とアジア人女性の組み合わせはよく見るが、逆にアジア人男性と白人女性の組み合わせはあまり見ない」ということです。これは実際の統計からも明らかで、2006年のアメリカの国勢調査のデータでは、白人男性の夫とアジア人女性の妻という組み合わせの夫婦は、逆の組み合わせの夫婦よりも2.84倍多いことがわかっています (6)。そしてこの偏りは他の人種でも見られ、黒人男性と白人女性の組み合わせはその逆よりも2.38倍多く、黒人男性とアジア人女性の組み合わせはその逆より5.14倍多いことも判明しています。これはアメリカだけではなく、イギリスの国勢調査でも同様の結果です。また、この論文では被験者にフェイスブックから集めた白人、黒人、アジア人の異性の写真を見せ、どの位魅力的かを10段階で評価してもらうという実験をしています。その結果、平均するとアジア人男性が最も評価が低かったと判明しています(図1)。

図1. 各人種の顔の魅力評価平均値。論文(6)のTable3.のデータより作成。写真を見た異性に10段階で魅力を評価してもらい(1が最も魅力がない、10が最も魅力的)、その平均値と標準偏差を示した。アジア人女性が最も男性からの評価が高く、アジア人男性は女性からの評価が最も低い。

このデータを単純に解釈すると、「アジア人男性は最も不細工でモテない」ということです。評価値が4ポイントにも満たないのはアジア人男性だけで、突出して評価が低いことがわかります。ただし、評価した被験者は男女たった20人ずつで、このデータだけで結論づけられません。被験者の内訳も白人が中心(14、5人)で、黒人とアジア人はそれぞれ2、3人しかいません。よってこの論文だけでは何とも言えませんが、「白人男性とアジア人女性の組み合わせは多いのに、その逆は少ない」という現象を説明する仮説としては、「白人男性はアジア人女性を美しいと思っているが、白人女性はアジア人男性をかっこいいと思っていない」という推測は一応成り立ちます。しかしその理由はわかっていません。白人とアジア人を比べて、遺伝子的に優劣があるというデータはなく、アジア人女性が最も魅力的と評価されるのはなぜなのか、文化的なものなのか生物学的なものなのか、顔の対称性や自分の顔との類似性は一切関係なく他の要素があるのか、まだわかっていません。結局「顔の美しさ」とは、科学的にはよくわからないものなのです。

自分の顔に対する周りの評価は気にしてはいけない

さて、ここでタイトルの○○に入る二文字についてですが、白人男性から見て、アジア人女性は白人や黒人の女性よりも魅力的に見える、つまり「美人」なのです。私は冒頭の緑の服を着たアジア人女性を不細工と評価しましたが、それは私の狭い価値観のせいであり、世界的に見れば私が不細工で彼女が美人だったのです。日本は国土が狭く民族や文化に多様性がなく、価値観が狭いままになりがちです。ある特定の狭い範囲だけが評価され、それ以外はすべて否定されることはよくあります。しかしもしあなたが女性で、周りの男性から不細工だと差別的な評価を受けたとしても、気にしてはいけません。むしろ外の世界へ出て、別の価値観を持った人達と交流を持つべきです。あなたを美人だと評価する男性は世界のどこかに必ずいます。狭い世界にいるので出会っていないだけで、評価してくれる男性の方が実は多いのかもしれません。そのくらい異性の顔の好みは多種多様であり、主観的に美人だ不細工だと他人を評価することは、まったく意味のないことなのです。

もしあなたが男性ならば、日本で暮らしていることに感謝するべきです。なぜならあなたは白人や黒人の男性よりも評価されない顔なのに、周りには最も高い評価を受けるアジア人女性ばかりいるのです。しかも彼女たちは基本的に日本語しか話せないので、白人や黒人男性と女性を巡って争うということはあまりありません。ライバルは日本人男性のみです。これから将来移民が増えて白人や黒人とも争うとなると、外見でハンデを背負うあなたは不利になります。ですから今のうちに伴侶を見つけるべきです。日本に住んでいるのに「出会いがない」などと言う男性は、海外に住んでいて日本人女性を見かける機会すらなく、かといって白人や黒人の女性からは恋愛対象として見られている気さえしないという、私のような境遇に陥ってから言うべきでしょう。


参考文献

1.            Little, A. C., Paukner, A.,Woodward, R. A., and Suomi, S. J. (2012) BehavEcol Sociobiol 66, 1311-1318

2.            Gangestad,S. W., Merriman, L. A., and Thompson, M. E. (2010) Anim Behav 80, 1005-1013

3.            Kocsor,F., Rezneki, R., Juhasz, S., and Bereczkei, T. (2011) Arch Sex Behav 40,1263-1270

4.            Laeng,B., Vermeer, O., and Sulutvedt, U. (2013) PLoSOne 8, e68395

5.            Domingue,B. W., Fletcher, J., Conley, D., and Boardman, J. D. (2014) Proc Natl Acad Sci USA 111, 7996-8000

6.            Lewis,M. B. (2012) PLoS One 7, e31703

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ただ研究が好きなだけ。
コメント (1)
凄いですね。興味深い記事をありがとうございました。
美醜の価値観は個人や社会や時代によって違うということがよく分かりました。
ファンになりました。これからもkeiさんの興味深い研究レポートを読みたいです。
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