SFCスピリッツの創造
SFCは今年で30周年の節目を迎えて「SFCスピリッツの創造」という特設科目が設置されました。これは、様々な分野で活躍されている11名のSFCの卒業生が私たち現役生に講義してくださるという授業です。その学びを皆さんに共有するべく今この文章で書いています。これを見てSFCに興味を持って頂けたら幸いです。
1人目の講師は、NPO法人カタリバ代表理事の今村久美さんです。
NPO法人カタリバとは「どんな環境に生まれても未来を作り出す力がある」というコンセプトをもと、学びの環境を世界中の小、中、高校生に提供しています。
カタリバ設立のきっかけは、今村さんが周りのSFC生とのギャップを感じたことです。田舎生まれの今村さんがSFC生と大学生活を送る中で、「生まれ育った環境や受けた教育で学ぶ意欲が変わる」「意欲的な人生を送ることが前提になっている人とそうでない人」がいるというギャップがコンプレックスとなり、この問題を解決したいと考えました。その時、教育の分野から働きかければ、この教育格差を改善できるのではないかと考え、SFC卒業後の2001年に友人と認定NPO法人カタリバを作られたそうです。
そんな、今村さんが私たちに伝えたいことは、自分から動くことが大事だと言うことです。設立当初、NPOは誰にも知られていない世の中であり、NPOで大丈夫かな、などと不安があったそうです。しかし、自分が気づいた社会問題を解決するための行動を選んだ結果、今活動を広げていくことができています。将来のことは誰にもわからないし、自由にできるのは、若者の特権だから、自分の好きなことをやって欲しい、わがままにやって欲しい。とメッセージを残してくださいました。
2人目の講師は、takramのContext Designer 渡邉康太郎さんです。
takramとは、東京とロンドンとニューヨークに拠点を持ち、デザイン・イノベーションをテーマとしながら、ビジネスや経営に貢献する様々な活動(月面走行機からマカロンまで)をしているデザインの会社です。渡邉さんはそこでContext Designerとして活動しています。そもそもContext Design(コンテクストデザイン)のContextとはなんでしょうか?
これは、con-共に texere-編むという意味を持ちます。渡邉さんが定義するコンテクストデザインとは一人一人からそれぞれの「ものがたり」が生まれるような「ものづくり」の取り組みや現象を指します。商品を売り手が作った一方的なものではなく、消費者が創作者になるように、消費者の手によって商品が完成するようなデザインを目指しているそうです。
そんな渡邉さんは、私たちに「新しい目」「名前のない時間」「深い読み」と言うキーワードを残してくださいました。この具体的な例は、視点を変える、偶然できた名前のない時間を愛しめることを意識的にする、本を読むということです。渡邉さんは学生時代、様々な視点から物事を考え、自分の関心を外に開き、関連していないことを自分で結びつけていったそうです。だから、私たちにもこのキーワードを意識して、自分で考える力を育んでほしいとメッセージを残してくださいました。
3人目の講師は、株式会社Zaim代表取締役の閑歳孝子さんです。
閑歳さんは周りを幸せにする社会貢献をしたいと考え、家計簿サービスアプリ「Zaim」を作りました。今では、850万以上ダウンロードをされている人気アプリになっています。
そんな閑歳さんは大学時代から「Zaim」を設立するまで、様々なことをされていました。大学生時代は学内で使えるSNSのようなものを作ったこと、マイクロソフトで1年間のインターンをしたこと、友達と起業をしたことなどです。そして卒業後は3度転職をし、その後に今のZaimという会社を立ち上げたそうです。
閑歳さんが私たちに伝えたいことは、「自分のテーマを見つけること」と「他者貢献」です。「自分のテーマを見つけること」のテーマとは、興味があるもののことです。閑歳さんは大学生時代の活動を通して、サービス作りに興味を持ち、それが今の職業に繋がっています。自分の軸を持つことは人生の助けになり一生の財産になります。だから、自分が夢中になれるようなことを大学で見つけて欲しい。もし今夢中になれることがないとしても、焦らないで、少し他の人より簡単にこなせる事、継続してやっていてもストレスがない事など自分の強みというものを見つけてほしいとおっしゃっていました。「他者貢献」とは社会のためになるようなことをして欲しいということです。今自分がいるのは家族や友人など周りの環境のおかげであるから、それを身近な人を含めて、社会に還元してほしいです。それ自体が、自分の幸福度にも繋がります。他者のために何かすることは社会貢献であり、自分の幸せでもあると言うことを常に考えてほしいです。このようにメッセージを残してくださいました。
4人目の講師は、個人投資家/DRONE FUND 代表パートナーの千葉功太郎さんです。
実は、起業家であり投資家でもある方です。起業家としては、有名な企業のスタートアップに参加をされたり、投資家としては、45ファンドのベンチャーキャピタルに投資、63社のスタートアップに直接投資、また、「千葉道場ファンド」「DRONE FUND」という二つのベンチャーキャピタルを作り、スタートアップの投資をしています。
千葉さんは、「まだ見ぬ未来を想像し、世界の課題を解決する」ということを心から楽しんでいます。その上で、明確な目標を決めて、それをもとに「逆算思考」をし、行動に移してきたことが今の千葉さんの実績に繋がっていると感じました。
そんな千葉さんは私たちに「catch the star!」と言うキーワードを残してくださいました。自分が設定した目標によって、行き着くゴールが変わります。その目標が高ければ高いほど最終到達点は高くなります。だから、「catch the star!」のように不可能と思われるくらい高い目標を持ち、目標達成のためにたくさんの時間を投資してほしいです。また、このNew normalな世界で何が必要とされるのか。考えるだけではなく、細かいところまで妄想して解像度を高めていくことが大事だと教えてくださいました。
5人目の講師は、面白法人カヤック 代表取締役CEOの柳澤大輔さんです。
1998年に面白法人カヤックを友人と設立し、現在は会社の組織づくり、面白社内制度、クリエイティブディレクター、地域活性化などをしています。最近でいうと「うんこミュージアム」や「おじさんの森」などが大ヒットしたのが記憶に新しいと思います。また、話のネタが増えるから起業、給料をサイコロで決めるなど、面白いことが大好きな方です。
そんな柳澤さんが私たちに伝えたいことは、「面白がる体質になろう」と言うことです。これはカヤックの「企業理念」でもあります。自分が主体的に関わっているという実感が持てれば、誰でも面白がることができます。そこで、何事も自分化する方法論として、「ブレーンストーミング」を教えてくださいました。ルールは、①仲間のアイデアに乗っかる。②とにかくたくさんの数を出す。ということだけです。これをすることで、アイデア出す能力が上がり、自分ごと化することができます。それと同時に、他者と仲良くなることができるそうです。他者と一体化することができたら、他者のことも自分ごとと思えるようになり、自分と他者の価値観や信念が共有できるようになります。そうすると、他人の成功も自分の成功と思えるので、自分の自信に繋がり、みんなが幸せになれるそうです。「ブレーンストーミング」で、物事の見方を転換していき、何事も自分ごとに考えて面白がってほしい。ということが柳澤さんのメッセージでした。
6人目の講師は、内閣官房長官秘書官の門松貴さんです。
門松さんは大学卒業後、一度経産省に入り、そこから海外留学を繰り返して経産省に戻り、現在までの7年5ヶ月間秘書官をしています。秘書官の仕事は門松さんも含めて各省庁から来ている秘書官が6名、そのほかにも元々の菅衆議院議員の秘書が1名、計7人で協力して仕事を進めているそうです。また、直接官房長官と一緒に行動し、サポートしていて、平日に職場を離れること、数十分の時間もとることができないほどお忙しいそうです。 そんな門松さんのお話のテーマは「作るために壊す」ということでした。今まで、門松さんは「組織の壁」「古い規制やしがらみ」など様々なものを壊してきました。これらは、ただ壊してきたのではありません。政治や行政の課題を把握し、それに対して論理的に解決策を探る。その過程を経ることで初めて、新たなものを生み出すために壊す、すなわち「作るために壊す」にたどり着くのです。これが、新しい制度、社会を作るために重要だと門松さんはおっしゃっていました。門松さんが私たちに伝えたいことは、前向きに学び、遊び、楽しんで、未来を切り開くすべを身につけて欲しいということです。自主的に問題意識を持ち、論理的に学んでいけば、必ず将来しっかり結果を出していくことができるようになります。そして最後に「未来からの留学生」として自力で未来を切り開いて行ってくださいとメッセージを残してくださいました。
7人目の講師は、株式会社17(ジュウナナ)クリエイティブディクターの松尾卓哉さんです。
松尾さんはSFC卒業後、電通に入り、そこから世界最大手WPPグループのOgilvy 、Ogilvy アジアパシフィックと転職していき、その後の2010年に株式会社17(ジュウナナ)を設立して、現在、広告の企画制作をしています。
そんな松尾さんの大学生時代はとても忙しい日々でした。裕福な家庭ではなかったため、大学から奨学金をもらい、バイトでお金を稼いで学生生活を送っていました。(ちなみに4年間で12個のバイトを経験されたそうです。)その状況がどんなに辛くても、人に笑われても必死に働き、自分を奮い立たせて努力し続けてきた結果が今の松尾さんに繋がっていると感じました。
苦労人の松尾さんが私たちに伝えたいことは、「自分を信じる」ということです。これは自信に持つことに繋がります。花が咲く(自分の努力が身を結ぶ)タイミングは、人それぞれです。過去を遡ると、早くに成功する人もいれば、遅くに成功する人もいました。松尾さんがそうだったように、努力し続ければ、いつかは花が咲きます。だから、周りが早く成功したとしても焦らず、いつでも花が咲けるように畑を耕しておいて欲しいです。この準備過程で、辛いことや苦しいこともあると思います。それでも、自分を信じ、全て経験を学びに変えて花が咲くまで待ち続けてくださいとメッセージを残してくださいました。
8人目の講師は、産業技術総合研究所/主任研究員/メディアアーティストの江渡浩一郎さんです。
江渡さんは、大学生時代に研究会を立ち上げること、任天堂・電通ゲームセミナーに参加し、ゲーム制作を行うこと、SFCのホームページを作るなどのWebの普及を行うことなど様々な活動をし、活躍されてきました。この活動の原点となったのが小学生時代にパソコンと出会ったことで、そこからどんどんインターネットにハマっていったそうです。そして、この時はまだインターネットが普及していない時代でしたが、江渡さんはネットワーク上の情報共有が今後大きく発展すると確信していたそうです。
そんな江渡さんは現在、共創プラットホーム研究、共創型イノベーションを作るお仕事をしています。共創型イノベーションとはユーザーをイノベーション創出に巻き込むための共創の場を提供するもの、新しいアイデアを持った人に環境を与えるというものです。そして「共創」とは、利益を分け合う「協業」とは違い、共通の目的に向かって、それぞれが活動し、異質な才能を結集させるという意味です。今はこの環境をどう作れば良いか考えているそうです。
江渡さんが私たちにやって欲しいことは、「常識も非常識も疑い続けて、自分なりのテーマを見つける」ということです。そのための方法として、まずは何か興味を持ったことを調べ尽くしてみる。それを頭の中に一本の木として想像をする。木は、枝分かれしていき、葉っぱが広がっていく。調べ尽くしていれば、枝と枝の間に何もない空間に気づくことができる。この枝が生えていない領域を探すことが自分なりのテーマを見つけるポイントだとおっしゃっていました。
9人目の講師は、株式会社じげん/代表取締役 社長執行役員CEOの平尾丈さんです。
2006年に株式会社じげんを設立し、機会平等、社会の問題を事業で解決するという活動をしていて、2013年に東証マザーズに上場しました。
大学生時代には2社起業をしていて(ちなみに起業したのは19歳で、半生起業家だそうです!)若くして活躍されていました。そんな平尾さんの成功の秘訣はズバリ、早くデビューしたこと、沢山のアクションを起こしたことだそうです。起業を早くしたことで経験をたくさん積むことができ、それが大きなアドバンテージになりました。また、移動時間でのインプット、営業でのアウトプットを毎日長時間繰り返したり、有名な方々からお話を聞くため、多くの人に連絡を送ったり、駅のホームで社長と叫んで話しかけたこともあったそうです。このように積極的に動いたことが成功へと導きました。
そんな平尾さんが私たちに伝えたいことは、「夢を持とう、そして一歩踏み出そう。」ということです。平尾さんの場合、夢がなく、持っていた目標もすぐ達成してしまった為、自分を見失った時期があったそうです。だから、私たちには、夢を持って欲しい。夢がない場合はロールモデルを見つけて欲しい。自分の理想がわかれば自分を見失うことがなくなり、夢や目標に向かって一直線に行動ができる。特に大学生は、取り組む人と取り組まない人で大きな差が出てくるから、とにかく行動し、自分をどんどんアップデートしていこう。と言うメッセージを残してくださいました。
10人目の講師は、楽天株式会社創業メンバー、Chief Well-Being Officerの小林正忠さんです。
小林さんは楽天の創業メンバー6人のうちの1人です。(6人中3人がSFC)1997年に会社を立ち上げ、3年で株式上場し、14年で1兆円の売り上げを達成しました。ネットビジネス、金融事業、プロ野球のスポンサーなど誰もが成功しないと思われたこと全てを成功させています。 このような挑戦から小林さんが私たちに伝えたいことは「不可能はない」ということ、「やるしかない」ということです。小林さんは今まで「そんなことはできない。」とたくさんの批判を受けてきました。しかし、それに構わず挑戦し続けた結果、やってきたこと全てを成功に変えていきました。この経験からできないことはない、「不可能はない」と気づいたそうです。それと同時に批判の大半は挑戦していない人の声であるから、気にする必要はない。問題はやるかやらないかなんだ。そして、結果として「やるしかない」のだと気づいたそうです。
何事もできない、やっている人がいない、など「ない」「いない」で言い訳するのではなく、それを全て挑戦に変えてしまう。誰もやったことがないからこそ、自分が始める。自分が作った新しい道が振り返ると、それが歴史になっている。人生の主人公はいつも自分自身であるのだ!だから、とにかくやろうとメッセージを残してくださいました。
最後である11人目の講師は、フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんです。
駒崎さんは「病児保育の社会問題」を解決するために2004年にNPO法人フローレンスを設立し、日本初の訪問型、共済型の病児保育を自立ビジネスモデルとして確立させました。また、保育園の運営方法を変えること、法律を変えることなど様々なことに挑戦してきました。駒崎さんのこのような経験から私たちに伝えたいことは、「自分のやりたいことを問い続ける」「やってみる」と言うことです。
まず、「自分のやりたいことを問い続ける」についてです。
駒崎さんは大学生時代に色々活動する中で、「これは自分が本当にやりたいことなのか?」「これは誰の課題を解決しているのだろう?」と自分に問い続け、試行錯誤してきたそうです。その結果、自分が解決したい社会問題を見つけることができました。パッと手に入る問題意識はすぐに消えてしまいます。不安になったり、これかと高揚感を持ったり、色々と模索していく過程がとても重要であるので、自分のやりたいことを問い続けてほしい。とおっしゃっていました。
次に「やってみること」についてです。
自分が未知なこと挑戦しようとするとき、周りの人は絶対にやめた方がいいと否定的な意見を言います。しかし、それを言う人は、そのことに挑戦していません。だから、自分のやりたいことが世の中のためになるのかを自分の身をもって確かめることがとても大事です。それが社会問題の解決策モデルになり、政治や行政と共に制度化されることで広がっていき何年後かに、それが「当たり前」と言われるようになります。だからやってみよう。とおっしゃっていました。
最後に
今まで11人の講師の生き方学び方を紹介してきました。生まれも育ちも、きっかけも問題意識もその人それぞれでした。しかし、11人全員に共通していることが一つだけあります。それは自分から動き続けていることです。1人1人の講師が今も未来に向かって挑戦し続けています。この姿勢こそが「SFCスピリッツ」なのだと感じました。
最後に田中先生をはじめとした、11人の講師の皆さん、土肥さん、SAの皆さん、本当に素晴らしい授業をありがとうございました。これからは私たちが、「未来の留学生」として「NewNormal」一期生として、新しいSFC、新しい世界を自らの手で作っていきます。
もし、この記事を見てSFCに興味を持ってくれた人がいたら、ぜひSFCに来てください。一緒に未来を作りましょう!
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