保険化に向くリスク、向かないリスク
保険リスクマネージャーのもとには日々様々な照会がグループ内からありますが、良くある質問として、「このリスクはグループ保険プログラムでカバーできるか?」というものと、「もし出来ないなら、個別に保険付保可能か?」というものです。
例えば、賠償責任保険はプログラム化されていますので、偶然な事故に伴う第三者に対する賠償責任は包括的にカバーされていますが、免責事項に含まれる引渡し後の製品サービスそのもののリスク(PL Itself)などがこれにあたります。
Itselfのリスクは瑕疵補償責任保険などで保険化する事自体は可能です。しかしながら、製品、サービスの品質リスクは裏を返せば当該企業の付加価値の源泉であり、ビジネスリスクそのものです。当然、リスクについても被保険者の方がよく分かっている事から、保険会社も伝統的な保険リスクである賠償責任リスクと比べれば引受には慎重姿勢となると思います。
このように、情報の非対称性やリスクの逆選択性のあるもの、ある製品、サービス固有のリスクであり分散効果の働きにくいものは保険化しても結局時間を通じた平準化の機能しかなく、類似リスクのポートフォリオの大きい保険会社へのヘッジを通じた外部資本活用効果を得られません。
再保険ブローカーのレポートによれば、自然災害の増加やソーシャルインフレーションによる保険マーケットハード化については、財物や賠償責任などの伝統的な保険リスクについては概ね対前年10%前後のレートアップに対して、ファイナンシャルライン、サイバーリスクや比較的Emergingなリスクに対しては30-40%のレートアップとなっています。
つまり、伝統的な保険リスクに比べて、比較的新しい保険リスクについては、ポートフォリオが十分大きくない、リスクの動的な変化量が大きい、リスクを測定するアンダーライティングノウハウが整っていない、等の理由により、保険化出来たとしても毎年の更改においては保険料や引受条件の変動を織り込まねばならない、という事になります。
グループ保険でカバーされていない保険化可能リスクに対する保険付保の意思決定は最終的には事業部門、グループ会社が実施する事になりますが、何故このリスクはグループ包括となっているのか、逆にこのリスクはなっていないのか、理解を深めてもらえるようにする事もリスクマネージャーの仕事だと思います。
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