保険証券に免責規定が導入される理由
保険契約の内容を書面におとした保険証券は精密機械とも呼ばれており、保険契約の根幹でもあります。とにかく文字が多く、一般被保険者には読みにくいと不評ではありますが、様々な事象に幅広く、迅速に対応するために、どうしても長く分かりにくい構成となりがちです。
日々社会が変化するのと同じく、保険リスクも変化していきます。ロシアのウクライナ侵攻や911テロのように突然変化するものもあれば、気候変動による自然災害の増加のように徐々に変化するものもあります。こうした変化に対して、保険証券も変化していきます。
911直後には多くの保険証券に「テロ免責」が付帯されるようになり、ロシア侵攻の後には「ロシア免責」が付帯されるようになりました。被保険者からすれば、そういう不測の事態に備えて保険加入したのに、保険会社は危ないものを排除して不公平だ、自分たちの利益ばかり守っているとの声もあると思います。
しかしながら、保険システムが長期安定的にワークするためには、ポートフォリオのリスク均一性と類似性を維持していく必要があり、想定しているリスクプロファイルと異なるリスクは排除する、あるいは保険料や保険条件の調整が必要となります。
先に述べた911テロやロシアの侵攻は急激な変化であり、ポートフォリオ健全性維持のために調整では間に合わず、排除せざるを得ないとの判断で免責導入が決められたものと思います。一方で、徐々に変化する自然災害リスクには保険料の調整や、一部地域の引受調整などが行われています。
本来はこうした引受判断は保険会社個社が行うものですが、大抵の場合は横並びの判断となります。結局は引受するリスクが同じである以上、そのリスクプロファイル変化に対する対応は同じまたは類似のものになります。
ある意味では保険会社が自分の利益を守る行動が、ポートフォリオ全体すなわち加入者全体の利益を守る事に繋がっているとも理解できます。保険システムが相互扶助である以上、そのシステム維持のため、保険会社のアンダーライティングは日々努力をしており、異常値を検出し、対処する事が続けられています。
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