被保険利益の存在と保険カバーについて
保険会社社員や損保代理店の募集であれば最初に学ぶであろう「被保険利益」とそれに対応する「保険商品」について、最近改めて一般の方には中々理解が難しいものであるという事を実感しています。当社は保険プログラムで財物と賠責をグループ全体でカバーしていますが、被保険利益の存在を理解してもらわねば、正しく保険活用が出来ないと思います。
製造業であれば、自社で原材料を仕入れ、加工し、輸送して顧客に納入する、といういわゆる財物の被保険利益と、納入後に製品の瑕疵による事故発生、つまり製造物責任に備えた賠責の被保険利益は比較的理解されやすいと思います。
一方で、メーカーが顧客に納入済みの製品を修理やメンテナンスで預かる場合、顧客はオーナーとしての財物被保険利益、メーカーは受託者としての賠責被保険利益が独立に存在しますが、どちらか一方で十分、両方付けると重複保険と考える方がいるようです。
この点、非常にトラブルになりやすく、特に受託者の過失ではなく受託財物が損傷したケース、例えば地震や水災などの天災、不可抗力で受託者に賠償責任が生じないケースでは賠責は発動できませんし、仮に過失ありで賠責が発動するケースでも、時価額賠償となりますので、オーナーは再調達額との差額は残余リスクがあります。よって、自分の被保険利益は自分の保険でカバーする、相手の保険には期待しない、が基本だと思います。
例外的なケースとして、多数の関係者が協働するプロジェクト案件があります。この場合は、オーナーやメインコントラクターが財物、賠責を一括付保する事があります。これは複数の事業者の被保険利益が複雑に絡む可能性があること、特に賠責事案では複数の被保険者で共同防御の必要性を生ずる事、一括付保によるスケールメリットを享受する事などにあります。
この場合においても、「他人が手配した保険への求償」は、約款に対する理解、自社が必要と考えるカバーとのギャップ、保険会社との関係などを背景に苦労するケースが多いと思います。よって、自社の被保険利益のみをカバーするDIC(条件差保険)や、裏保険(Contingency)などの特殊保険がアレンジされる事もあります。
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