見出し画像

グループ経営における保険プログラム導入とその影響について

多くの企業はその事業推進にあたり、意思決定の迅速化や海外進出、他社との協業などの様々な理由から複数のグループ会社を持ち、国内外グループ会社を束ねてグループ経営を行っています。当社も子会社だけでも国内外に300を超える会社があり、保険プログラムはこれらの会社を包括して付保しています。

親会社の支配権のある子会社と言えども独立した一法人ですから、日々の業務運営の全てをコントロールする事は出来ず、まして他社資本の入る子会社となれば、尚更親会社意向のみで保険プログラム加入を強制する事は難しく、グループとしての全体最適だけでなく、当該子会社にとっても最適である必要があります。他のnoteでも触れていますが、グループ全体のスケールメリットを生かした有利な保険条件、リスクに見合った保険料配賦によって、皆のベネフィットに繋がるような設計が重要です。この点はプログラム導入時に多くの企業が直面する問題だと思います。

次にプログラム導入後ですが、ある程度内容がグループ内に浸透すると、導入期のような混乱は無くなりますが、関連業務に対する意識が薄れていくという事が起こり得ます。つまり、本来リスクマネジメントは最前線の被保険者自身がFirst Line Defenseとして機能する必要がありますが、グループプログラムで包括される事によって、「自分ごと」ではなくなってしまう、保険は本社が見ているから大丈夫という状況を作り出してしまいます。

多くの企業で導入されるグループ包括の保険プログラムは保険ヘッジ可能なリスクの一部、例えば財物利益のリスクや賠償責任のリスクなどをカバーするプログラムであり、そのカバー範囲に含まれないが保険ヘッジ可能な残余リスクを生じる事になり、本来は自律的にグループ会社がその必要性を検討し、自ら判断する事が必要なものの、前述の「保険は本社」という思考停止により、消極的な自家保有となってしまうケースもあります。

こうした状況に陥らないため、本社部門からのサポートやカバー拡充によるセーフティネットの創設といった対策が考えられますが、やはり現場第一線の「自分ごと」をスポイルしないよう、継続的な教育とコミュニケーションの実施が重要です。ちょうどサイバーリスク対策としてIT部門がセキュリティ強化をすると共に、ユーザーにも不審なメールを開かない等のトレーニングを実施する事と似ていると思います。

多くの企業において、本社と第一線にはお互いのKPIの違いからコンフリクトが生まれる事があります。これまでのキャリアの中でも双方を体験してきましたが、相互理解の重要性もさる事ながら、この点に関しては権限をもつ本社部門がより主体的に歩み寄り、必要に応じた制度改善を行っていく責任があるものと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?