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Community over Competition: ヤシーン・ベイが語るショウビズ論


ブラックスターが四半世紀ぶりの新作『No Fear of Time』をリリースした「Luminary」(サブスク・ポッドキャスト・ネットワーク)で、デイヴ・シャベル、ヤシーン・ベイ、タリブ・クウェリが出演する番組『The Midnight Miracle』を久々に聴いていたら、ヤシーンの人となりが際立つエピソードがあったので、一部を訳してみました。

気心の知れた仲間同士のディープな会話から生まれる、ヘルシーな意見の違いが新鮮でおもしろい。

ちなみにこの日の(も?)ヤっさんは、フレッシュに遅刻し、番組の半ば過ぎに登場。




デイヴ・シャペルが、パンデミック中に制作したというドキュメンタリー映画『Dave Chappelle: This Time This Place』は、なかなか人に興味を持ってもらえず、仲間に挑戦を挑んだことについて語っていると…

ヤシーン「総じて競争的な側面には、いまいち納得がいかない。事実、文化的な条件付けみたいなものだと思うんだよね。そういう風にお互いに競争し合うことに慣れちゃってるところがね。なかでも黒人にはそれが顕著だ。この業界で、お互いに協力し合わずに、競争し合う人たちを散々見てきた。

ニプシー・ハッスルがインタビューで言ってたんだ、『創造性と競争心は実際、互いを打ち消してしまう』ってね。正直、俺たちのジャンルにおけるそういう競争的な側面は、コミュニティが生まれる可能性をつぶしてしまう」

デイヴ「コミュニケーションという言葉のルーツは、コミュニティ、共に同じコミューン(生活共同体、親しく語り合う)を作ることにあるんだよね」

タリブ「君が言ったように、俺たちはこの『ライズ&グラインド』(日々の成功や進歩に向かって常に必死で頑張ること)のシステム、常に商品を作らなければならないというアイディアを批判する。流れ作業でハンバーガーのような(簡単に作れる量産商品の例え)音楽が作られ始めるとね。競争心がそういう状況を作ってしまうからだ」

ヤシーン「君が『流れ作業』って言ったのは興味深いね。その原理は、特にアメリカ社会のあらゆる側面に当てはまる。すべては個人同士、グループ同士の競争だ。うんざりだね。有益だとは思えない。目先だけのことを考えれば、おもしろいかもしれないけどね。それが俺たちの社会にあるまた別の病的な状況だし、エンターテイメントへの中毒だと思うよ」

デイヴ「俺はフェアな中毒だと思うね」

ヤシーン「俺はいいことだとは思わないね。だってそれじゃ俺たちは、何もかもエンターテイナーに頼らなければならなくなるだろ。

そのいい例が、俺、2日前にデンヴァーにいて『Forensic Files』(科学捜査が犯罪事件を解決していくドキュメンタリーTV番組)を観てたんだけどさ、あの番組の中心人物の声の50%は吹き替えだってことに気づいたんだよ。あの男の声がさ。彼の声は素晴らしいよ!心地いいし、クセになるし、非の打ちどころがない!アイツはマジで素晴らしいよ。でも心の片隅で、『アメリカって、いったい何人殺さるんだ!?』という疑問が持ち上がってさ。ワンシーズンずーっとだぜ!?」

~中略~

デイヴ「君は典型的なショウビジネス人間だよ」

ヤシーン「俺はショウビジネス人間だとは思わないね!」

デイヴ「アリーナで何千人もの前でパフォーマンスをするのって何だと思う? ショウビジネスって言うんだよ」

タリブ「君、エディ・マーフィーと一緒に『SHOWTIME』に出演したじゃないか(笑)」

ヤシーン「だからって、俺がショウビジネスってことにはならない!ショウビジネスっていうのは、ひねくれていて、残酷で、ドープゲームより酷いと思うね。最も洗練された形式の人身売買装置さ」

デイヴ「おいおい」

ヤシーン「あー・・・」(観客笑い)

デイヴ「この後、仕事に行くのがキツくなるぜ!考えなくちゃな!」

ヤシーン「あー・・・俺はショウビジネスを辞めざるを得なかった。俺がアートを創りたいと感じるのは、ショウビジネスとは何の関係もない。ジミ・ヘンドリックスの『Band of Gypsys(バンド・オブ・ジプシーズ)』を聴いたとき、ジョン・コルトレーンの『A Love Supreme(至上の愛)』を聴いたとき、俺は14歳で、時空の中を旅している気分になった。

ジョン・コルトレーンの『A Love Supreme(至上の愛)』を1回聴いただけで、自信と誇りを持てる今日の自分になれた。自分の人間性が違ったタイプの人間に成長していくのを感じたし、あれを聴いた後はもう同じように世界を見ることができなくなったんだ」

デイヴ「俺にとってそれは、『ハングオーバー!!! 最後の反省会』を観たときに起こったね」

ヤシーン「(笑)」


わたしもおそらく人生で最も多く聴いているアルバム。

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