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「BEACON」感想

 平沢進14枚目のアルバムの「BEACON」を聞いた一個人の感想です。ほんとは「BEACON」と既存の平P曲における価値観の考察を書く予定でした。無理でした。なので、発売日前に被弾した骨の感想を放流します。

1.「BEACON」 

 タイトルナンバー。ただひたすら明るい曲の中でも、しっかり違和感があるのヒラサワのすごいところ。イントロでの音の切り貼りが、今から物語の始まることを連想させる。24曼荼羅の時に予想した空耳の歌詞と全然違ってた。関係者感想でエンディングの名曲が誕生と言われてたけど、このアルバムエンディング曲が多い。個人的にはアディオスと同じで、離脱から始める物語ではこれしかオープニングになりえないのかな、とも感じた。ギターソロの「BEACONを」の後の「ンオゥ↑」みたいなとこすっごい好き。

2.「論理的同人の認知的別世界」

 現花秘とホロ男に続き、2曲目でいったん迷子にさせる曲。「Wah oh wah eh」の部分は、ダイジェストで聞いたとき「Space hook」みたいに翻訳不能とか書いてあるかと思ってた。語りの部分がわざとらしくて良い。曲の最初から最後までずっとギターが鳴ってて、ライブでやるときはSSHOが弾くんだろうなと妄想。歌詞は結構直接的な印象があって、核Pっぽさを感じた。

3.「消えるTOPIA」

 ダイジェストからだいぶ裏切られた曲。晴れやかなエンディングテーマの雰囲気、ディストピア三部作の中盤にあるような暗い絶望感の二つを行き来する変則的な構成。明確な二項対立が用意されていて、それに対する不安を物理的に拭われるような感触がある気持ち悪さのある曲。この曲単体で好きになることはないかもしれないけど、アルバムにこれがないとそれはそれで気持ち悪い、という自分でも咀嚼しきれていない感覚がある。言語化が難しい。

4.「転倒する男」

 音と譜割りが複雑でとにかくかっこいい。歌詞カードで「わっはー」と書いてあるのを見たとき「わっはー⁉」って言ってた。歌詞の中で繰り返しのない部分は少ないけど、そのどれもが秀逸。男に対して、少しアヴァター・アローンっぽさ、サビ(?)の管楽器にはQUITっぽさを感じた。

5.「燃える花の隊列」

 一番刺さった曲。イントロは流行りそうなの弾き語りかと思ったら、一瞬のうちに変則的なギターとコーラスに足をすくわれる。全体的に明るさを感じるけれど、遠くに小動物が見えて近づいたら捨てられたレジ袋だったとか、すごい曲を書くミュージシャンだと思ったら、アニメのキャラクターソングで作詞作曲が別人だったみたいな、わざわざ感情的になるほどでもない程度の「騙された」という感触があった。そこには目覚めた後の世界の景色は「そんなもんよ」という雰囲気を勝手ながら感じた。ドラムが結構意識されてる(気がする)しフジロックでやらないかな。

6.「LANDING」

 ヒラサワ高音好きに向けたフルコース。モノローグのように淡々と語りかけてくる解説をしっかり聞いていたら、ファルセットで叩き起こされてサビを聞かされる感覚。私は「LANDING」って単語を「洗脳≒催眠」に近しいマイナス寄りのものと思っていたけど、歌詞見てTwhz見直したら誤解な気がした。

7.「COLD SONG」

 まさかのカバー曲。関係者の感想と月締めからCOLD SONGだと思ってたけど歌詞とアレンジどうすんのと思ってた。歌詞は私を殺してくれって言ってるし、もともとオペラの曲だから劇伴曲風にしても意味ないしと。ところがどっこい、歌詞はアルバムに即して目覚めを促してて、アレンジはテクノとオペラの中間みたいになっててきれいに裏切ってきた。にしても「徒労」を短くすると外国語っぽくなるって発想すごい。

8.「幽霊列車」

 ストリングス主体の曲。完全な直観だけどライブ映えするし長いこと歌われそう。曲全体が、森の中に住んでる村一番の変人みたい。危害は加えてこないし、いろんな物があってお菓子を貰えるから子供たちは遊びに行くけど、何言ってるかわかんないってほとんどの子は一通り遊び終えたら帰ってく。けど一生懸命聞いてるやつがたまにいて、そいつも後々変人扱いされる。まるでヒラサワのTwhz。サビのメロディーに日本的なゴシック観の曲っぽさを感じた。その最たる例のアリプロ自体がヒラサワの影響受けてるから、今のヒラサワが昔の曲の歌い方をアレンジした結果なのかな。

9.「TIMELINEの終わり」

 傑作というか「平沢進の集大成」という感じ。凝った変化球は無しで、純粋な技量だけで作り上げられてるように感じた。今までのTHE・エンディング曲と違って、ギターソロが短めなのがまだ続く感じがして良い。「BEACON」と一緒で歌詞予想がだいぶ間違ってた。空耳無理。
 完全に余談で挫折した記事では、塔に関して考察してた。そのきっかけは、この曲の歌詞の「恐れた塔の風化を見よ」という部分。これは、メジャーレーベルから離脱した賢者のプロペラ以降Gipnoza以外で使われていた塔に終止符が打たれたのかなと思った。が、考察したことを言語化するのが難しいので諦めた。誰か代わりに書いて。

10.「ZCONITE」

 インスト曲。最後の悪あがきとか断末魔みたいなイメージを持った。この曲でもギターがあって、今回のアルバムのギター採用率の高さには驚かされる。

11.「記憶のBEACON」

 最終回みたいなエンディング曲。論理的同人の語りが流れたと思ったらバカコーラスとそれにかぶさるギター。「TIMELINEの終わり」が「平沢進の集大成」で、この曲は「今の平沢進の全力」に感じた。改訂期の未知に対する希望感や、「サトワン歴8869年」「白虎」「可視海」のディストピア三部作の少し距離の感じる終わりの曲のエッセンスを交えて、「Phonon Belt」「鉄切り歌」の笑えるくらいの明るさを表現した曲。一周目聞いたときにはTIMELINEの終わりを超えるのか不安だったけど、これ以外では終われないと思うくらいしっくり来た。

総感想

 見事に「回=回」の続きの話になったなぁと。「回=回」ではあった抜け出せない感じが一切ない。出発準備は済まされている、旅のしおりも用意した、あとは出発するだけ。そして、出発するかどうかはあなたの自由です、という感じ。こんな集大成みたいなアルバム作っておいて、引退しないんだからすごいや。そんで次のアルバムではこれ超えてくるんだから。

買ってね

聞いてね

ダイジェスト

7.COLD SONG

9.TIMELINEの終わり


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