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僕なりの、ピアノを弾く仕事って(3)

前回までで譜面の準備は終わったものとします。リスナーの方からは意外なほど下準備がある。。と、同業者はアルアル、と思ってくださってるかなと思います。

いよいよ演奏です、その前に

ここで僕の場合ですと、本番そもそもピアノはあるのか、リハーサルスタジオにはあるのか、などのチェックをして(僕はキーボードも弾くものですから、この辺、電子ピアノを持ち込んでくれと先方が考えている、でも伝えてくれてないケースが1〜2割ほどあります)、機材がある場合は駐車場事情の確認などしまして、
諸々クリアして、いよいよリハーサル日になったとします。

ピアノの前にいます

テンポ守って、弾くべきフレーズは全て譜面に書いてあり、行き方も分かっています。
そう、もう、こうなったら弾くだけで、ほぼ全てをクリアしていきます、、事前に問題点を可能な限り洗い出していたお陰です。演奏家が僕だけの場合は、だいたい上手くいって、一回で終わります。。。!

共演者が他にいた場合は、

改めて一度問題点のチェック

まず譜面の、まぁ言うならば不備の箇所を話し合います。
優秀なチームな場合は、皆も同じように問題点を洗い出してくれているので、ダブルチェック、トリプルチェック状態になり、非常に話が早いです。良いチームですと、本当にこのリハの日早く終われたりします。もしくは他の更なる詰めが出来ますね。。!

あとは演奏上の問題点、
例えば相手がギタリストならば、和音を弾く音域がかぶることが多いので、常にモニター環境を良好にしておき、チェック。
音量感を、あくまで2人で出した時に必要な和音の音量になるように気をつけています。2人で同じことをいつも通りにやった場合はおおよそ2倍の音量になりますからね。。

アンサンブルすると、他にも色んな価値観がぶつかり、音に現れてしまう事もあります。
その際は、おい、なんか違わないかい?とストレートに言うよりは、こちら側から、違うかもと思う相手の価値観に合わせてみることは出来ないか、やり方を水面下で探ったり、、この辺のやりとりも面白いですね。。

気をつけておく事、モニター、マイキング

生ピアノの際、、僕は、マイキングも厳しくチェック、把握して、音響面での問題点を出しておきたいです。
よく書いているのですが、今は、軽量かつ音質もよくハウリにくい、DPA4099を愛用しております。これを出来るだけ響板に近づけてセッティングすることで音量を稼いでいます。
ピアノの個体によって収音される音質はかなり異なるので、マイクを一つずつモニターに返してもらい確認する必要があります。本当に個体によって違います。
問題点があればエンジニアに提案して改善できそうなら、します。

チェックのためにモニターに返してもらいましたが、一旦それはゼロにして、他の共演者をモニターに適切な音量を返してもらいます。
ピアノの生音だけで足りなければ、少し足します。

モニターのシステムに頼り過ぎない、常に言い聞かせています。もし故障や不具合で音がひどいことになったとしても、生音ならば耳をすませば誰がどのくらいで演奏しているか分かるはずです。自分の出すべき音量は想像してタッチをコントロールすればいいんです。何も聞こえてなくても出来なきゃ、です。

DPAはこの時のタッチとスピーカーからの音量感の差異が少なく、色々あるマイクの中では、とても演奏し易いです。
よくあるピアノのフレームのホールに57だともっと押し出しの強い音でコモりますし、かと言って高級な定番コンデンサーですと他の楽器や表音からの被りが大きく、とても演奏しにくいです。

ピエゾの山彦だと、大きく出せちゃうものなので、今度は音量感がアコースティックと違う雰囲気になるので(弱いタッチでも支配力のある音色、音量になってしまう)、僕は今は使わないようにしたいなと思っています。

この辺、決定権がエンジニアにあるのが、今までは基本でした。

でも僕はスピーカーからの出音、演奏家にとって一番大事だと思ってます。
なので演奏家がもっと集音方式などを研究して、現場で指定するべきだと考えてます。

ギタリストなどはアコギのピックアップは自前ですよね?それと同じです。

もちろん機材投資もし、どこでもピアノのマイクのどれがどんな音質で、混ぜたらこうなって、表を出したらこうなって、などの研究データをとって、日々アップデートしなければと思っています。

タッチ、タイミング、ミックスバランス

僕はクラシック出ではないので、ここは自分のウィークポイントでもありますが、でもだからこそ、出来るエリアもあると信じています。

今気をつけていることは、各音の発音のタイミングをコントロールすること。まずは音量を揃えて、同時に鳴らすこと。
それからバリエーションとして、バラして柔らかさを出すこと。

リズミックに弾くために、音を切るタイミングもリズムに合わせること。リズムギターや、ハイハットをペダルで閉める際の音などをイメージしてました。
ドラムがいない場合などは自分のピアノの演奏を工夫し、ドラムが出しているビートをピアノから出るように。ベースが弾いているラインや音の長さを把握しておくこと。

そして、身体からドラムが聴こえてくるような、ペダルや、使ってない右足や呼吸なども、使えるものは全て使って、シーンを作っていく。

歌が始まったらその帯域を音量をグッと下げる(ミキシングやマスタリングしているかのように)。あるいは避ける。
男声ならこの辺、女声ならこの辺、、もちろん個人差、曲によっても違うけど、どの辺の帯域が歌と被るかは予め予測しておく。

テンポ、ムード、その先

基本的には、資料の音源のテンポをさらっておくけれども、最近はそこからもう一歩進めないかな、と考えています。

というのも、日本のレコーディング事情的にもほとんどがクリックで支配されているわけですが、
僕は古い音楽が好きなもので、過去の良いものをさらっていくと、やはりグルーヴの気持ち良さは、それを人力でやっていた時代のものが、一番優れているんではと感じてしまいます。
かと言って、自分がよれてしまうのを正当化するわけでは無く、あくまで、歌とメロディー、バンドのフィーリングを優先した結果、それぞれのシーンの適切なテンポというものがあり、シーンごとにそれを表現できるようになるのが、本来の姿だと思えてきたから。
とても正確なものの更に上にヒューマンなものが見えてきた気がしています。
中々評価されにくいこだわりポイントかと思います。
仕事ではほぼ必要とされないエリアの話なので。でもこの先に何かが見えてきてしまったので、僕はしばらくの間はこんなことを考えていると思います。
とは言えクリックに綺麗にあったアンサンブルの気持ち良さも理解しているつもりなので、それもいつでも提供できるようにしておきたいですね。

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