パスワードをめぐる駆け引き
家宅捜索から1時間半ほど経った頃。
犯罪に使われたであろう証拠も押収でき、捜査員も一様にほっとした様子。
ここからはどうせ自白するのではないかと思っているのか、場の空気が和みはじめます。
ある捜査員の一人がサラッと聞いてきた。
「携帯のパスワード教えてくれない?」
自身が所持しているスマートフォンは合計3台。
うち、2台は仕事用で1台は会社からの支給品。ところがこの支給品の調子が悪く、自身が所有する昔のスマホ1台を業務用に使用。残りの1台はプライベート用です。このパスワードを教えろと言ってきているのであります。
私がこの事件の犯人でもなければ、まだ身柄拘束(逮捕)されていない任意で立ち会っている状況でしたので
「今は教えません。」
弁護人もついていない状況の中、当然の対応だったと今でも思っております。
しかし、ここから、また室内の空気が一変します。
協力を拒む”不良”重要参考人なので、無理もありません。
「ははーん、見られたくないものが入っているんだな。女の子のいかがわしい画像とかか?」
「この変態野郎が。」
名誉毀損も甚だしいところです。これが市民の味方といわれる警察官が発する言葉かと思うと、呆れて怒る気にもなれません。
この問答はしばらく続くわけですが、後から考えると私の怒りに火をつけることでパスワードを言わせる作戦だったのかもと思ったりしています。
個人のプライバシーを開示して欲しいのなら、もっと別の言い方があるのではないかと思いましたが、そんなことを言っても無駄だということはその場の雰囲気で明白でありました。
数十分の問答の末、
「どうせ、事件に関する証拠でも入っているんだろ。」
しかし、どう見ても諦めていない様子。その後も、このパスワードに関する尋問は何度となく続きました。
それにしても、今の警察の捜査力ってどうなんだろう?と思います。
昔、アップル社とFBIがこのパスワードで保護されたiPhoneのロック解除で争ったというニュースもありましたが、結局は所有者の口を割らせないとロック解除は難しいのか。それとも、強制的にロック解除されても証拠として扱えないのか・・・。
のべ大勢の捜査員と多額の捜査費(=税金)を投入して、ここまで辿りついた捜査機関が簡単に諦めるわけにはいかないのは理解できます。
ただ、こういった捜査の末、有力な直接証拠が出てこなかった場合、捜査機関は一体どうするのでしょうか?
これが違法捜査の入口であることとは夢にも思っていませんでした。
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