バーバレラ(68年アメリカ映画)


以下のテキストは2009年に書いたものです。

いやー、すげー映画です。何もかもぶっ飛んでます。うわさ以上に軌道を外れてました。もはや人類の存在意義さえもナンセンスです。このような作品が完成して日を見る事ができたのは、まさしく奇蹟と言えるでしょう。
映画『バーバレラ』はジェーンフォンダ主演のSF映画です。宇宙飛行士のジェーン演じるバーバレラは、行方不明になった科学者デュランデュランの捜索を依頼され、捜索に向かいますが‥…。
以下ネタバレでいきます。

冒頭から伝説的に語り継がれる無重力ストリップ、要するに宇宙服を脱いで着替えをするシーン、なんと宇宙服の下には何もつけてないスッポンポンってありえないでしょ。上映開始10秒ですでにこの無軌道ぶり、科学もリアルもクソもない。しかもこの撮影、いかにも無重力に見せるため、立体的に描いた宇宙船の内部の絵の上を、脱ぎながら転がってるだけなのがバレバレ。いや、特撮技術がなかった時代の映画ですから、それはいいとして、宇宙船の船内がまたアバンギャルドなわけで、絨毯が敷いてありまして、なぜか自由の女神神路のビーナスみたいな彫刻があるってどうなってんの? なんで宇宙船のなかに彫刻が必要なのか誰か教えてください。宇宙船の中というより、ラブホテルの中です。しかも、田舎の一昔前の。そんな超常現象のような船内で、転がりながら全部脱いじゃうバーバレラ、脱ぎ終わってからボタンを押すと、重力が戻って彼女は床にいかにも落ちたように演技するのですが、重力コントローラーがあるなら最初から使えよ。いみねーじゃん。
で、全裸のままのバーバレラ、緊急通信が入ります。この通信機がまた何だかよくわからない代物で、空調の室外機にスパンコールをつけたみたいな、一見してこれが通信機と判別できる人は脳みその構造が人類より遥かに進化してるんじゃないかと思えるくらいで、続いてお約束の秘密指令。行方不明になった科学者を捜せと地球国の大統領に言われます。テレビ電話なんですが、バーバレラは全裸なんで「何か着るものを」と言うのにたいして大統領「かまわん、公用だ」おっさん、公用と服を着るのとどう因果カンケーがあるんだよ。しかも、大統領の視線は絶対に彼女のおっぱいに釘付けになってて、視線を気にした彼女がスクリーンの反対にまわると、なぜが大統領もぐるっと回ってスクリーンの反対を見る事ができるという、なんちゅうサービス精神あふれるテレビ電話じゃ。
なんだかんだで、科学者デュランデュランを捜索に向かう事になったバーバレラ、目標到達時間は157時間ですと言われて、じゃあひと眠りするから着いたら起こしてね、って、アンタは飲み屋の帰りにタクシーで送ってもらってんじゃないんですから、宇宙飛行にもかかわらずリスクも緊張感もまるでなし。ラブホテル風の船内ですやすや寝てしまいました。で、157時間経過、ムード音楽で起こされた彼女は、長時間寝ていたので栄養補給してくださいと出てきたドリンクは異様に背の高いコップ。あのー、一応、宇宙空間なんですけど。そこらへんのマンガ喫茶じゃないんだから、せめてチューブ入りくらいにしてくれよ。ところが、磁気嵐が起こって、バーバレラの宇宙船は操作不能、不時着してしまいます。状況を見るために船外に出る彼女。エアロックはフツーにドア。物置じゃないんだから、もっと気密性のある扉にした方がいいと思います。外に出ると、氷の世界でした。ドリフも真っ青な素晴らしくチープなセット、そこに現れた子供に捕まって、彼女は子供たちのいる洞窟に連れて行かれます。そこでなぜか彼女は柱に縛り付けられ、鋼鉄製のキバのついた人形に襲われるいじめを受けるんですが、なんでいちいち人形に襲わせるのかわからん。人形のキバで服はボロボロ、見えそうで見えないのでたまりません。おお、人形がんばれ、などと応援していると、しかし、危機一髪で野人に助けられます。縄をほどかれながら何度もお礼を言うバーバレラ、しかし、言葉が通じないバーバレラ「英語わかる?」「フランス語は?」すいません、ここ宇宙なんですけど。「そうだわ、翻訳機があったわ」腕に付いた機会をチューニングすると、野人の話が分かるようになりましたって、ラジオかい! 野人に宇宙船を修理してもらった彼女は、服がボロボロなので新しい毛皮の服をもらって宇宙船に戻ります。なぜか服にしっぽがついていて、それがいちいち引っかかるのが笑える。
再び出発した彼女は、なぜか地中を潜って目的地付近に出現します。そこでまたまた物置、じゃなかったエアロックを通って船外に出ると、あたりは岩がごろごろの世界でした。っていうか、なんで宇宙船が地下を潜って走れるんだよ。せめてドリルくらいつけといてくれたらまだ納得できるんですけど。彼女はそこで鳥人と出会い、探している科学者のことは教授が知ってるかもしれないと案内されます。教授は彼女を見て、妙なところにレンズをつけて観察し「地球人だ」と言います。あ、でも、みんな地球人に見えるんだけど。そして、ここは「死の迷路」で皇帝に逆らう者がここに入れられるのだと説明します。岩でできた狭い通路はそこら中に人がいっぱいいて、中には岩に同化しちゃってる人もいるんですが、その説明はなし。その説明の方が聞きたいんだけどさ。皇帝のいる城に行きたいとバーバレラは言いますが、それには宇宙船を修理しないと行けません。教授は彼女の宇宙船を直す事にしました。「どこが壊れたんだね」「安定装置が」教授、ポンポンと外壁を叩いて「中枢は壊れていない、なんとかなる」ちょっと待て、スイカじゃないんだから、ポンポン叩いてなんでわかるんだ? バーバレラ「よかった、どれくらいで直るの」おまえも疑問に思えよ。教授「何日か何週間か、それが天才だ」いや、いい加減なだけだと思います。そんなに待ってられないバーバレラは鳥人を口説いて城まで飛んでもらおうとします。鳥人「パトロールに見つかる」バーバレラ「ミサイルがあるから大丈夫」ミサイルで落としたらもっと問題になると思う。最初はいやがってた鳥人も、彼女と一晩過ごして気が変わりました。まあ、結局男ってのはそういう生き物なわけで。で、鳥人は彼女を連れて城まで飛んで行きます。パトロールは全部撃ち落として城に入ります。パトロールが6機も落とされたのに、城の中は全然フツーでした。
さて、科学者を捜さなければなりません。しかし、暴漢に襲われてしまいます。危機一髪を救ってくらたのは殺し屋風の女、一方、鳥人は群衆に囲まれていました。彼女は鳥人とともに逃げますが、奇妙なところに入り込んでしまいます。その部屋は「最終処理室」でした。このままでは処理されてしまいます。しかし、危機一髪で現れた皇帝の部下により救われました。そして、パーティ会場で皇帝と面会します。フーゼンが破裂して現れたのはなんと、さっきの女殺し屋でした。って、なんでフーセン破裂がいるんだ? お前は三浦カズか。実は皇帝は女殺し屋風の姿で町に出て情報収集してたのだ。じゃ、そこで見つけた時に捕まえりゃいいじゃん。意味が分からん。結局、バーバレラは皇帝に逆らい、パトロールの飛行艇を撃ち落とした罪で処刑される事になります。っていうか、処刑ならそのまま最終処理室でほっときゃいいじゃん。部下に連れられて入れられたのは巨大な鳥かご。しかし、バーバレラ文句も言わずに入っちゃいます。とっても素直なよいこです。で、鳥かごの中で凶暴な鳥がいっぱい彼女を襲う…はずんだけど、鳥と言ってもインコみたいな観賞用ペット鳥なんで、せいぜい、彼女の服をビリビリにする程度。またしても見えそうで見えん、がんばれインコ! 思わず応援。でも、よく見ると全然襲ってません。体の上に乗ってるだけです。やっぱ撮影用の手乗りインコだもんな。すると、突然床が割れて彼女は真っ逆さま。そこは反逆軍の地下基地でした。ものすごっくご都合主義的な展開です。
反逆軍は秘密の地下通路を城の中にいくつも造っているので、そのひとつを使って彼女を救ったのだ。彼女は司令官にお礼を言うと、皇帝を倒すための作戦を聞きます。それは皇帝が寝室にいる間は無防備なので、そこで襲うと言うもの。うわー、スケベな作戦です。しかも、その寝室は見えない壁で囲まれていて、見えない壁を開く鍵は見えない鍵、って何だそりゃ。実は合鍵を作ったんだと司令官は自慢げに言うんですが、見えない鍵をどうやって合鍵作るのかはまったく謎のまま。彼女はその鍵を持って皇帝の寝室に向かいます。しかし、秘密通路が故障して変なところに出てしまい、そこで皇帝の部下に見つかってしまった。部下は「逃げてたのか」おい、知らんかったんかい。「まあいい、今度は私が楽しませてもらう」というわけで、バーバレラ伝説の名シーン、オルガン拷問マシーンの登場です。しかし、バーバレラは拷問に耐え(耐えたと言う表現が正しいのかどうかは疑問だが)マシーンはオーバーヒートします。部下「なんということだ、この淫乱女め」こんな変態拷問マシーンを作ったアンタに言われたかねーよ。しかし、その時、バーバレラが大統領からもらった脳波探査器が反応しました。なんと、この部下がデュランデュラン本人だったのです。彼はこの星の生きている湖の影響で狂人になってしまっていたのでした。ん? なんかどっかで聞いたような話だな。彼の目的は皇帝を倒してその座につく事でした。バーバレラは寝室を襲うスケベな計画を話します。そして2人で皇帝の寝室に向かうのでした。しかし、デュランは皇帝をバーバレラを寝室に閉じ込めて鍵を捨ててしまいます。鍵がなければ寝室から出る事ができません。って、なんちゅう恐ろしい寝室だ。ありえねーだろ。その時、反逆軍が攻撃を開始しました。新皇帝になり損ねたディランは怒って秘密兵器を作動させます。それはすべての物質を4次元空間に送り出してしまう最終兵器でした。反逆軍は次々と倒されてしまいます。皇帝は遂に最後の決断を下します。生きている湖を解放し、この城もろともすべてを破壊することを! 解放された湖はデュランのいる城を巻き込んで溢れ出します。すべてを破壊し尽くした湖、バーバレラと皇帝は岩場に流れ着き、鳥人もそこに現れます。鳥人は2人を抱き上げて舞い上がります。
こうしてバーバレラの冒険は終わりを告げるのでした。
でもどうやって地球まで帰ったんだろう。

*おことわり*
なるべく忠実に再現したつもりですが、記憶違いがあるかもしれませんので御了承ください。なお、野人との場面、反逆軍司令官との場面の一部についてはあえて記述しておりません。どういうところを記述してないかって? そんなのスケベな君ならすぐわかるだろ!

いろいろツッコミを入れましたが、これはこの作品を冒涜しているわけではなく、批判しているわけでもなく、貶しているわけでもなく馬鹿にしているわけでもありません。この作品は間違いなく傑作です。みんなのシネマレビューで言うところの10点満点で採点するなら80000点くらいの点が上げられると思います。素晴らしいです。脚本も、美術も、出演者の演技も、すべてB級SFとして最高の完成度だと思います。素晴らしいです。まるでカラヤンの交響曲のような、まったく修正する箇所がない映画です。
でも、一番、何がカンペキって、もうね、ジェーンフォンダですよ。ジェーンフォンダの存在がこの映画の奇蹟を生んだと言っても過言でないでしょう。この映画のリメイクはしてほしいけど、やったらタブン失敗しますね。ジェーンフォンダをしのぐ女優が現れたら可能かもしれないですけどね。(この場合、女優としての優劣より、バーバレラを演じるのにふさわしいかどうかという点で比較対照しての話です)とにかくですね、魔性ぶりが比にならないくらいです。エリザベスハーノイスも、エマニエルべアールも、確かに魔性の女ですが、この映画のジェーンフォンダに比べれば子供ですよ。あの無防備な表情、ちょっと焦点の定まってない大きな青い瞳、全ての男はイチコロです。

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